「楽しい終末」 池澤夏樹

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★★★ 文春文庫

tanoshiii.jpg池澤夏樹がたぶん1990年ごろに書いた(連載した)もの。もちろん読み直しです。

池澤夏樹、好きなんですが、小説の場合はどうも読みづらい。素直に読んだのは「マシアス・ギリの失脚」くらいでしょうか。他は何回も借り出しているものの、どうしても最後までたどりつけない。「マシアス・ギリの失脚」、南洋の島の人々のささやきと気ままに走りまわる日本慰霊団バスはよかったです。これはたぶん傑作。

で、楽しい終末。小説じゃないので、素直に面白く読めました。池澤さんの論証というか論述、進め方は非常に論理的かつ明晰ですね。騙しの要素が少ないとでも言うべきか。内容は人類の終末論で、恐竜の絶滅、核問題やらレトロウィルスやら南北問題やら。個々の問題を論ずるだけでなく、17世紀あたりから主流となって誰も疑わない「進歩の概念」についても触れています。

人類は進歩するものなのか進歩すべきものなのか。少なくとも10紀や15紀あたりの人々は、あんまり進歩という感覚を持っていなかったんじゃないのか。むしろ退化したり。末法思想ですね。

なんか高校生の頃、初めて岩波の高級そうな本(えらく高かった記憶あり)で「民主主義はごく最近に出現した新思想」みたいな解説を読んで眼からウロコが落ちたことを思い出しました。ぼんやりと、ギリシャの昔からデモクラシーという概念は西欧で続いていたような錯覚があったんで、田舎の高校生は愕然とした。ちょうど大学受験の頃です。気持ちの忙しい時こそ、こんな用もない本に手を出して、読んでショックを受ける。

ま、楽しい終末、毎日少しずつ読むには最適の本でした。1990年の当時から、原発は危ないなあ・・と言ってたんですね。

そうそう。ここで紹介されていたマリオ バルガス・リョサの「世界終末戦争。新潮・現代世界の文学に入っているようなので、そのうち借り出してみようと思います。知りませんでしたが、去年ノーベル文学賞をもらったようですね。

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