「十字軍物語」3 塩野七生

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★★★ 新潮社

jujigun3.jpg第3次遠征から、テンプル騎士団の滅亡まで。

塩野さん、そうだろうとは思いましたがリチャード(獅子心王)に惚れてしまったんですね。ま、確かに惚れる要素は多大でしょうが、ここまで手放しで称賛されると、読む方が恥ずかしくなる。でも一応は公平であろうとしてか、最後のあたりでナントカいう歴史家の評も載せています。「子として最悪・夫として最悪・王として最悪・兵士としては優秀」だったかな。そんなふうな趣旨の言葉でした。

実際、リチャードとしては「オレ、ほんとは王なんかじゃなくて騎士の子供で生まれたかったんだ」かと思っていそう。単なる騎士じゃ制約やら不自由がいろいろあったはずですが、そこまでは深く考えないタイプ。とにかく好き勝手やって、とにかく男らしく戦うのが大好きで、みんなに愛されて、大迷惑かけてコロッと死ぬ。母ちゃんのエレアノール(ダキテーヌ)、がっかりしたでしょうね。

確かに魅力はありますわな。困りもののガキんちょ坊主。ロビンフッドの友達。

塩野さんには好かれなかったようですが、むしろフランス王のフィリップ(オーギュスト)が面白かったです。得にもならない十字軍なんてまっぴら。アホな連中をけしかけて聖地に行ってもらい、その隙にせっせっと領地拡大。非常に現実的です。戦争は下手でも、知恵は実にまわる。結局、この人がいまのフランスの版図を確定した。「オーギュスト」の称号を得たのももっともです。

塩野さん、シチリア生まれの神聖ローマ皇帝フリードリッヒIIも好きみたいです。たしかに時代から抜け出した合理性の帝王。教皇の破門なんててんで気にしないで、やりたいことをやり通した。教皇とは最後までケンカを続けたんですね。死んだときは教皇庁が大喜びしたらしい。

で、もう一人、ルイ聖王ですか。内政面でも非常に優秀だったようですが、戦争はおそろしく下手。わけのわからない大がかりな十字軍を2回もやって、2回とも大失敗してアフリカで死ぬ。かなり堅物でコチンコチンの信仰者。これは塩野さん好みとは対極の人物です。でも見方によってはかなり魅力的な王様ですね。

というふうな連中が勝手な思惑で遠征して、中近東をひっかきまわして大量の血を流した。なんとも壮大な愚挙、無駄遣いですね。結果としてイタリア海洋都市の興隆、マムルーク朝エジプト誕生、法王庁の衰退、西欧の中央集権化。そうそう、小さいですがチュートン騎士団の帰国なんてのもあります。その後は強大なドイツ東進の先兵となってくれた。さんざん中世ポーランドを苛めたのも、この騎士団の子孫でしょう、たぶん。

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