「ブラックアウト」 コニー・ウィリス

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blackout.jpg★★★ 早川書房

オックスフォード歴研シリーズ3作目。主人公は史学生のメロピー、ポリー、マイクルのようです。今回は1940年から1945年にかけて、戦時下のロンドンが主な舞台です。ただし人名や場所、時代が錯綜しているので、ちょっと整理しておかないといけない。続編(というより、ぶった切った後半部)は来年4月まで出ないそうです。絶対に忘れてしまう。

メロピーアイリーンという時代名で中部イングランドのお屋敷の女中になり、手のかかる疎開児童の世話をしている。例によってイライラ・ゴタゴタ・バタバタがあって現代へ戻ることができず、結局ロンドンまでたどり着く。

ポリーはロンドンでデパートの店員。これも空襲やら何やらで疲労困憊。おまけにデパートの制服規定は清く正しく「白ブラウスと黒スカート」なのに中世史科装備係の怠慢で濃紺スカートしか持ってこなかったので主任に睨まれてるし、おまけに現代に戻る「回収地点」に問題が生じていて帰還できない。

マイクルは米国人記者マイクになってダンケルク撤退を(安全な)ドーバー側から見物するはずが、なぜか撤退作戦まっただなかにまきこまれ、意に反して英雄になってしまう。ひょっとしたら過去を書き換えてしまったんじゃないか・・と不安だらけ。

で、結局3人が3人とも自分の「回収地点」を失ってしまい、それぞれ「回収地点を使わせてもらおう」という意図でロンドンに集合。1940年、ロンドン大空襲のまっただなかです。

主要人物は3人だけのはずなんですが、なぜか不明の人物も出てくる。1944年時点、東南部のケント州でゴム戦車をふくらませているアーネスト。ノルマンディ進攻作戦を隠匿するために偽装をしているんだろうと思います。

同じく1944年時点、応急看護部隊で仕事を始めたメアリ・ケント。まだ誰かは不明のまま。

そして1945年の終戦日(VEデー)、ロンドンにいたダグラス。これはたぶんポリーだと思うんだけど、なんか問題があったような雰囲気。VEデーってのはVictory in Europe Dayだそうです。
(ただアイリーンもVEデーを予定していた。このへんがあとで問題になるかな。)

もっとわからないのが1940年、他の3人がゴタゴタしている時代のセントポール駅に出現した謎の男。最初はちょっと勉強不足ふうなので、みんなに嫌われているフィップスかと思ったけど、たぶん違いますね。可能性としてはポリーを救出しようと密航してきたコリン。

そうなんです。ドゥームズデイ・ブックのガキんちょコリンが17歳の高校生になっている。おまけに年上のポリーに恋している気配。そのポリーがロンドン置き去りとなれば、英雄コリンが救いに行かないわけがない。

そういえば、あの浮浪児みたいな疎開の悪ガキ姉弟。ロンドンの地下鉄でかっぱらいやってるのも同じ姉弟でしょうね、きっと。出番が多いので、あとで何か重要な役割をになうのかしらん。ウィリスの描く悪ガキたち、ほんと心の底から神経逆撫ででイラつきます。

ところでこの新☆ハヤカワ・SF・シリーズという代物。ひどいです。見かけは安っぽいペーパーバックで似合わない天金装丁。ただし手に持つとずっしり重いです。上下2段組ですが紙質がいいのでなんとか読める範囲。うーん、なんかコニー・ウィリス本のイメージとは違うなあ。あえてこんなシリーズに入れる必要があったんだろうか。

おまけに超長いのをわざわざ半分でぶった切ってしまった。米国でも分冊で、おまけに発行日を別にしてたってんですが(ウィリスは怒ってる雰囲気)、なんで日本でもそんな悪例に倣ったのか。翻訳の都合やらなんやらあったのかもしれませんが、困ったもんだ。

いい本だけに読者の欲求不満がたまる。これがせめて1カ月後の発行ならともかく、予定は来年の4月だとか。前半部と後半部が10カ月の中断。もしジラシ作戦としたら大間違いと思います。

最近のハヤカワの傾向ですが、なんか読者想定を読み違えているような気がしますね。あの「氷と炎の歌シリーズ」(単行本)の表紙が変なコミックタッチのファンタジーだったり()、文庫版「ドゥームズデイ・ブック」が夢見る少女マンガ調だったり、本屋のカウンターに置くのが恥ずかしいレベル。本の内容と表紙カバーがあまりにも乖離しています。

ま、太宰の人間失格とか、古い本の装丁を作り直したら急に売れたとかいう話もありました。それと同じ商法なんでしょうかね。表紙に釣られて手にとる若い読者は増えるかもしれませんが、逆に見ただけで敬遠する読者もいる。「そんなトシヨリ読者は見放してます」ということなら仕方ないけど悲しい。

「氷と炎の歌シリーズ」=「A Song of Ice and Fire」では、想を得た世界の意欲的なイラストレーターによる作品がネットに上がっています。すばらしい絵がたくさんありますね。人気のあるものは画集になって販売までされているようです。カレンダーもアマゾンでは売られています。

「氷と炎の歌シリーズ」でもちょっと落ち着いたタッチの文庫版の方はまだ我慢可能。せめてこの程度のイラストならギャーギャー文句いいません。(単行本のイラストレータは多少は本の内容を知ってて書いてるんですかね。たぶん編集者の責任です)

ふんと、トシヨリはなにかと狭量でうるさいことじゃ。買った本でもないのに文句たれて(たぶん買わないけどね)。蒙御免

追記
単行本「氷の炎の歌シリーズ」は買わないで図書館、大騒ぎの末の改訳新版はもちろん読んでません。「A Song of Ice and Fire」は買った。単行本「ドゥームズデイ・ブック」は図書館。文庫版「ドゥームズデイ・ブック」は買った。

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コメント(2)

こんにちは。メアリ・ケントってポリー? と気になり検索していたらたどり着きました。

「氷の炎の歌」シリーズのカバー画のこと、全く同感です!
あれじゃ書店で手に取れない。
あのカバーが嫌いで読みたくないという知人がいますよ。
本当に残念。

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このページは、kazが2012年11月26日 14:09に書いたブログ記事です。

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