「中国の歴史 第7巻 隋唐の興亡」 陳舜臣

| コメント(0) | トラックバック(0)
★★ 平凡社

chuugokunorekishi.jpgこのシリーズを手にとるのは初めてです。他の版は知りませんが、平凡社版は口絵がついていて、建築物やら仏像やらの写真がたくさんあります。あまり綺麗な写真ではないですが、でも親切な構成ですね。

内容はもちろん中国史の初心者でも読めるし、かなりのめり込んだ人でも楽しめるカッチリした内容の通史です。上質な歴史教科書とでもいうべきでしょうか。

15巻くらいはあるので、とりあえず最近興味のある隋あたりから始めました。考えてみると隋とか唐とか、なーんにも知らんです。

・隋には煬帝というのがいたはず。たしか運河を造った。短い王朝だった気がする。

・隋を滅ぼして成立したのが唐。たしか貞観の治とかいう言葉もあった。若い頃の玄宗の治世だったか。

・楊貴妃のあたりはいろいろ小説にもなってるんで、多少は知ってる。でも安禄山の最後のあたりはモヤモヤして詳細不明。

・唐代は強国で、西域なんかに大幅出兵して版図を広げたはず。

この程度ですかね。なんとも貧しい知識だ。

えーと、まず貞観の治は玄宗じゃないです。玄宗の前半は「開元の治」。貞観は唐の二代目である李世民の世でした。李世民ってのが親父の代を次いで唐の基盤を造ったらしい。

ただし李世民、優秀かつ冷徹な人間だったらしく、しっかり皇太子である兄貴を殺したんですね。で、死にかけの親父に無理強いして皇位をついだ。後の歴史書はもちろん全面的に李世民ヨイショですが、陳さんによると兄貴ってのも実はけっこう能力はあったんじゃないか。でもま、殺されてしまったらオシマイです。

そうそう。ついつい無視されがちだけど、長い混乱の世を統一した隋。もっと歴史的に評価されてもいい。いわば現在の統一中国の大本を造ったのが隋ですから。混乱をまとめて、大きな構想を描いた段階でつぶれたのが隋。その基盤の上にカッチリした帝国を築いたのが唐。

でまた唐に戻りますが、特筆すべきは武則天。二代目太宗(李世民)の後宮にいた女性ですが、芽が出なかったのが結果的に三代目に好かれて皇后。漢代の美女はみんな触れなば壊れんみたいな繊細な女性ですが、唐代の美女はみんなグラマー。ただし武則天はキリッとした、江角マキコみたいな女だったようで、二代目太宗の好みじゃなかったらしい。女の好みばっかりはどうしようもないですね。

武則天、後世からは徹底的に悪女ということになってます。でも本当にそうだろうか。都合の悪い肉親や逆らった子供、孫などあっさり殺したのは事実みたいだけど、国家ぜんたいとしては意外に平穏かつ隆盛。しかも身分にかかわらず新しい人材をどんどん使いこなして政治をリフレッシュした。

宮廷の上層部では超評判が悪かったけど、もし庶民に聞いたら「え? 立派な女皇帝じゃないか。不満はないよ」ということです。稀代の悪女かもしれないけど、非常に政治的な感覚のある積極的な女性。アホな男どもにまかしておけるもんですか。いまだに評価には賛否両論あるようです。

で、この武則天に見いだされて、そうそうたる人材が育ちます。武則天、自分に逆らう子や孫は簡単に殺しますが、あえて諫言する有能な部下には案外甘いところもあったらしい。こうした人材が結果的に玄宗(武則天の孫)の時代を盛り上げた。玄宗が偉いというより、お婆様の残した財産を使い果たしたのが玄宗だったともいえる。

ふーん、ですね。

こういう新しい観点、非常に面白いです。次は巻8「宋とその周辺」にとりかかる予定。


トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.min6.com/mt/mt-tb.cgi/1046

コメントする

アーカイブ