「中国の歴史 第8巻 宋とその周辺」 陳舜臣

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chuugokunorekishi.jpg★★ 平凡社

唐末から五代十国の混乱。宋の誕生と金の侵攻、南宋。

昔から中国通史を読むといつも感じることなんですが、毎回々々皇帝、皇后一派、宰相、武将、官吏と宦官・・・それぞれが疑りあい、讒言があり、で、すぐ殺す。殺し続けているうちに弱体化して、北方から攻められる。亡国の混乱があって、蜂起があって、つぶし合いのうちに誰かがリーダーシップをとる。

ひたすらこの繰り返しですね。頭の芯が痛くなってきます。人間、こうも同じことを繰り返すのか。

唐の滅びの原因は節度使が力を持ちすぎたことのようです。ほとんど独立政権のような性格をもった強大な「軍閥」ですね。もちろん朝廷はいろいろ対策をこうじたんですが、軍事力を握った連中に言うことをきかせようとしても難しい。あんまり強いことを言うと反撃してくる。

この反省から宋ではシビリアンコントロールを基盤にすえる。科挙に受かった秀才たち、貴族階級ではなく、多くはアッパーミドル階級の師弟だと思いますが、これが政治も軍事も仕切る。国の経済力は向上します。唐の長安は夜になると木戸が閉まって真っ暗でしたが、宋の都は夜でも灯がともっていた。たぶん庶民が酒くらって騒いでいたんでしょう。そういうことができる時代になった。

経済力がついて文化が栄えてたいへんけっこうな話のようですが、頭でっかちの官僚が増えすぎるし、反面として軍事力の弱体化ですね。戦えばたいてい負けるんで、興隆してきた北方の新国家・遼に対しては多量の貢ぎ物を約束して頭を下げるしかない。

で、質実剛健の遊牧民国家に大量のマネーが流れこむとどうなるのか。貧しかった遼もぜいたくにすぐ慣れてしまいます。何もしないで金が入るんなら、戦争するより効率がいいじゃないか・・・と弛緩をまねいて結果的には衰退。ですから、見方によっては決して悪い外交ではないんですが、かなりみっともないことは事実です。

遼の後に台頭してきた東北の金に対してもまったく同じです。低姿勢に徹してなんとか許してもらうのが基本外交。ただし宋朝廷にも「軟弱外交反対!」という国粋派がいる。「胸を張れる国家にしましょう」という声が大きくなると、ついその気になって軍事行動。もちろんすぐ叩かれる。

新法・旧法の抗争なんてのも同じパターンです。国家が貧乏になったんで現実的になって農民に比較的低金利の金を貸し出して、中間層(みたいなもんでしょう)を作り出そうという政策と、貧乏人相手に国家が金貸しをするなんて恥辱だという政策。現実論と理想論。対農民政策だけでなくいろいろあり、どっちも一応の理屈はあるんですが、抗争が激しくなると泥仕合になる。泥仕合やってるうちに低レベルの戦いになり、皇帝が代替わりをして片方が権力を握ると徹底的に政敵を追放する。また振り子が揺れるとオセロゲームのようにひっくり返る。その繰り返し。

ま、困ったもんです。そんなこんなでガタガタ大騒ぎしてるうちに「正義は勝つ!」という主戦派主導になって、金に敵対しようとチョッカイ出してもちろん失敗。怒った金が本気になって南下。朝廷はあたふた遁走です。こうして亡命政権・南宋の誕生。漢文化の南方拡散。

かなり大雑把ですが、こんな感じでしょうか。

ただし、北半分を占有した金も、文化に対して免疫がなかったんであっというまに漢化してしまい、ようするに軟弱国家になったらしい。国内には漢人のほうが多かったはずだし、そういう意味では「金」も立派な中原の国家といっていいんでしょうね。ただ漢民族至上の観点からは、あくまで正統は南宋。金はあくまで一時的な「占領国家」という扱いのほうが抵抗がないようですが。

そもそもを言いだすと、漢民族って何だ?という大きなテーマにもぶちあたります。おそらく大昔の殷とか周のあたりの連中が「漢民族」の核なんでしょう。それが周辺に広がり、あるいは周辺が求心して、三国志のあたりになると範囲がかなり広くなる。唐代には更に拡大する。

結局「中国語」を話すのが漢民族ってことでいいんでしょうか。でも北京語と広東語じゃほとんど別言語ともいいます。そうすると「漢字」の通じるのが漢民族か。でも金には女真文字があったはずなので、はて・・・。誰かの言葉に「とっさに自分は漢民族だと思うのが漢民族」という趣旨がありました。このへんが落とし所かな。


※ 宋の方針として特筆すべきものに創始者の「遺訓」があります。その内容は「言論を理由として臣を殺すな」 (石刻遺訓:不得殺士大夫及上書言事人)というものだったとか。すごいです。自由に発言できる。首を切られない。ただ、これがあったんで宋の士大夫たちは安心して勝手なことを言いまくったきらいもある。その結果が政治の混乱。難しいもんですね。

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