「図説 戦国時代 武器・防具・戦術百科」トマス.D.コンラン

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sengoku_buki.jpg★★ 原書房

米国の(たぶん)若手の研究者による戦国武器変遷史です。時代的にはだいたい鎌倉末期から南北朝、室町、江戸初期まで。図解が非常に多く、ところどころオリジナルの武装イラストも挿入されていて、それなりに面白い本となっています。

こうして長いスパンで俯瞰した武器・防具・戦術史ってのは寡聞にして知りません。その意味では価値がありますね。ただしこの著者がどれだけ広く深く戦国時代を研究したのか、ちょっと「?」な感も残りました。あきらかな「?」は少ないんですが、どうも数少ない特定の資料だけにずいぶん拘ってしまった印象がある。

若い学者が一応は研究して、なるほど!と断定・発表。もちろん聞くべき部分もあるけど、なんか思い込み先走りの感じがめだつ。せっかくの豊富な図版も、本文記述とは無関係なものが多いです。たまたま手に入れた図版を(もったいないから)むやみに掲載したかのような雰囲気。

英語で書いた本を自身で翻訳したようですね。そのためか、こなれていない日本語です。できの悪い史学生が書いた卒論みたいな感じですね。

文句はともかく、通読してわかったこと。要するに鉄砲によって戦術が変わったというより、実は槍兵の集団戦法が誕生したことのほうが重大だった。それまでバラバラで勝手に戦っていたのが、規律ある槍部隊の誕生で一変した。馬に乗った武将の個の強さが通用しなくなった。

戦法が変化するということの背景には、統率する戦国大名の作った政治システムや収税システム、兵団編成などのソフトウェア革命があった。うん、なるほど。この点は十分に納得です。

ついでに、サムライの刀についてもクソミソにけなしています。「刀こそ武士の魂」なんてのは、平和な徳川期になってアイデンティティを失った武士階級が必死になって言い出したこと。刀が戦闘で役に立たなかったことは、いろんな軍忠状を調べてみるとわかる。将兵が負った傷のほとんどは矢傷でした。その後は槍傷。そして時代が下がると銃創。ま、そうでしょうね。

いろいろ不満は残るものの、けっこう楽しめる本でした。ところで「胴丸」と「腹巻」、どっちがどうだったっけ。著者によると、この両者は時代によった混同されたり取り違えられたりしてるんだそうです。読んだばっかりなのに、もう違いがわからない。

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