「ポール・セローの大地中海旅行」ポール・セロー

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daichichukai.jpg★★ NTT出版

読んだ人の数が多すぎたのか紙質のせいか、扱いにくい本でした。紙にコシがないのかな。所々ページがくっついてめくりにくい。

ジブラルタル、ヘラクレスの柱から出発して海伝いに右回りの旅でスペイン、フランス。ここからコルシカ、サルディニア、シチリアと島を巡ってイタリアへ。その先の旧ユーゴはけっこう不穏です。苦心して乗ったり降りたりフェリーを使ったり。しかし途中であきらめて(疲れて)いったんは脱出。

少し休んでからは招待キップをもらって(なぜか)豪華クルーズの旅です。楽な旅をして悪いか。クルーズですから地中海の観光地を飛び石伝いにしてギリシャからトルコ。しかしイスタンブールで船を降りてからは、また汚い船や列車でシリア、イスラエル、エジプト、チュニジア・・・。

スムーズに海岸線を列車で通過というわけにはいきません。地中海の東部は危険地帯だらけなんで、あっちに避難したりここは船を使ったり、また元に戻って旅を続けたりグチャグチャ。おまけにリビアやアルジェリアは危険すぎてスキップです。

1990年代のたぶん初頭ですか。まだ貧しい国が多いです。コルシカ、サルディニア、シチリアなど島々の貧しさは、ま、予想通りですが、ギリシャはうるさくて品のないギスギスした国だし、トルコ人は比較的おとなしいけど所詮はトルコだし。シリアは恐怖政治の真っ只中。先代アサド(いま内戦報道でよく見る首が長くて頭の細長いアサドの父親)がシリアに君臨独裁していました。イスラエルだけは清潔で文化的だけどみんな神経症でピリピリしている。兵士が疲れ切っている。楽しいところではない。

読み終わってみると、なんか苦いものが残ります。シベリア鉄道とインドと東南アジア、中国の旅のようなカタルシスがない。というか、シベリア鉄道だって東南アジアだって悲惨なんですが、まだしも小さな希望のようなものが感じられる。きっと少しずつ良くなるはず・・・という微かな雰囲気。

それがこの地中海国家には感じられないんですね。あと30年たってもコルシカやシチリアが楽園になるような気はしないし、旧ユーゴ地域にも解決の展望がなさそうだし、レバント国家群は下手するともっと酷くなっているかもしれない。すぐ近くの西欧諸国が(比較すれば)豊かになっているから、いっそうその悲惨さが目立つ。

そういう意味では楽しい本ではありませんでした。

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