「イチョウ 奇跡の2億年史」 ピーター・クレイン

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★★★ 河出書房新社
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最近の刊行です。なんでこんな地味な本を借り出したか自分でもわからない。

内容はタイトルのままで、イチョウの2億年の物語。こんなに古い植物は他にないらしいです。シーラカンスの植物版、生きた化石。1億年2億年前には世界中に栄えていたイチョウの仲間ですが、たぶん氷河期の寒冷化で絶滅しかかった。あるいはイチョウの実を食べて運んでくれる特定の動物が消えて、その影響を受けたのかもしれない。

ということで、イチョウはほぼ絶滅しかかったものの、唯一、中国南西部の小さな谷間にしがみついて生き延びていた群生があった。そしてどうやら人間がこの木を気に入って、あちこちに植えてくれることでテリトリーを拡げたらしい。動物の代わりに人間が助けてくれたわけです。

したがって現在のイチョウは「裸子植物門イチョウ綱イチョウ目イチョウ科イチョウ属」。これだけで、他に仲間はまったくいません。天涯孤独な植物です。

中国の寺院の境内とか人家の近くに植えられ、だんだん広まって朝鮮半島、そして日本列島。日本に入ってきたのは800年くらい前ではないか。すると疑問になるのは例の鶴岡八幡宮の隠れ銀杏ですね。えーと、源実朝暗殺が1219年ですから、この頃の八幡宮に巨大なイチョウがあったとするのはちょっと怪しい。実際、吾妻鏡にもイチョウの記述はないそうです。公暁は単純に階段の端に隠れていた。

イチョウのエピソードが書かれたのはかなり後年になってからで、信憑性は限りなく薄い。たぶん、完全なガセネタでしょう。

それはともかく。長崎の出島に滞在したオランダ人が日本のイチョウに注目し、こんな不思議な木があるのかとびっくり。これを持ち帰ってヨーロッパにも広まった。そしてなんやかんやの末に泰斗リンネの元にも届き、リンネ爺さんが厳かに命名。Ginkgo biloba。bilobaは葉っぱが割れていることの意味だそうです。届いたイチョウは若木で、若いと葉っぱが割れてることが多いんだとか。Ginkgoはたぶん「Ginkjo」の誤り。ギンキョウ(銀杏)ですね。

こうやって世界中にイチョウは繁殖した。増えやすく、非常に生命力の旺盛な木だそうです。公害にも強いので街路樹にぴったりだし、黄色く色づくのも面白い。雌雄があるのも珍しい。もちろん実(というか胚珠)は食べられる。中毒の危険があるので、食べ過ぎには注意。

本筋に関係ないですが、実朝を殺した公暁、すぐ逮捕されたかと思っていましたが、実際には首を取っての逃走に成功し、有力御家人に謀叛を呼びかけたとか。結果的に反乱は成功しなかったわけですが、100%無謀な企てでもなかった気配がある。上手に根回ししていれば、ひょっとしたらクーデタ成功ということもありえたのかもしれない。知らんかった。

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