「砂漠の狐を狩れ」スティーヴン・プレスフィールド

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★★★ 新潮文庫
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著者は「炎の門」を書いた人です。「炎の門」はペルシャ戦争がテーマ。古代スパルタの社会体制や文化、ファランクスの原理や運営方法がかなり精密に描かれていて、面白い本でした。

これ一冊かと思っていたら、他にもあった。砂漠の狐は、もちろんロンメルです。原題も「Killing Rommel」。英国の士官がニュージーランド兵たちといっしょになって長距離砂漠挺身隊として活動。任務は砂漠をはるか南に迂回して敵将ロンメルを殺すこと。もちろん実際にはロンメルは死んでいません。したがって任務は失敗。

しかし冒険小説じゃないので、任務そのものの成否はどうでもいいです。当時のボロ車(デザート・シボレーという車らしい。砂漠仕様のシボレートラック)が車列をつくって酷暑極寒のサハラを延々と走る。ちょっと走るとエンジンはガタつくしサスペンションは折れるしタイヤはパンクするし。

叙述は戦記に近いです。坦々と書かれている。血湧き肉踊るような出来事はほとんどない。ドイツ軍に包囲されれば降伏も考えるけど、でも我慢してボロボロになってまた走り続ける。

そうそう。戦車と戦車が雄々しく戦うなんてことはまず皆無らしい。地平線に最初にあらわれるのは敵のオートバイ兵。それがウロウロしてからナントカ車両があらわれて、それから何があって何が来て、ようやく対戦車砲が据えられて、こっちはガンガン叩かれて、それから最後にワーッと戦車隊が出てくる。実感があります。この時点ではもう味方は総崩れになっている。

戦車というのは、非常に壊れやすい車なんですね。走行距離も短いし、ガソリンも食うし、キャタピラ(履帯)はすぐ外れるし。そんなに簡単に先頭きって突進なんかしない。(もっとも初期の西部戦線、ロンメルの機甲師団はかなり突進したらしいけど)

ま、いろいろ楽しい本でした。パブリックスクールで育ったエリートの英国士官というのは、やはりちょっと独特な連中です。決して合理的でも勇敢でもないけど、実にしぶとい。そうそう、このアフリカ戦線あたりでは、まだ英独どちらも騎士道的な雰囲気があったんですね。殺し合うけれども、ほんのちょっとスポーツ感覚が残っている。戦車から脱出しようとする敵兵は撃たないとか。

ストーリーと関係ないですが、最後の方ではアメリカ軍の機甲師団も投入されています。ただし連中はアマチュア軍団あつかい。装備はいいし兵は意気盛んだけど、しょせんは素人。ロンメルにいいように扱われたらしい。なんかおかしいです。



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