「血を売る男」余華

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★★★ 河出書房新社
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兄弟」で名前を覚えた中国作家です。

これも良い本でした。タイトルはなんか悲惨な内容のようですが、実はそれほどでもない。貧しい農民が、危機に瀕したタイミングで血を売る。ネガティブな打ち出の小槌。

ま、売血なんて日本でもちょっと前までよくある話でした。貧しい労働者や学生など、あんまり気はのらないが、いざという時は売血。常習者による「黄色い血」とかいって不良血清が社会問題にもなった。いつの頃からか献血運動の高まりによって一掃されてしまいました。

日本以上に、中国文化では親からもらった血を売るという行為はおぞましいもののようです。だから金になると知っていても、通常はやらない。大躍進の前の時代、400cc売ると貧農の収入の半年分になったと、この小説では書かれています。

で、お馴染み、頑固頑迷で健康、典型的な庶民が嫁さんもらって子供を三人つくる。本人は工場の運搬係、奥さんは油条(揚げパンですね)の販売員。ところが長男はどうも違う男の子供らしいというので主人公は悩みます。ん、悩むというよりプライドを傷つけられるという感じでしょうか。このへんの男の反応とか、奥さんの反応(ケンカをするとすぐ戸口に座り込んで、近所隣に大声で訴える。しゃべりちらす。陽性です)がいかにも。

そうそう。血を売る前には川の水を8杯飲む。同じ量を売るなら血を薄くしたほうがトクだからです。売った後は回復のため食堂でレバ炒めを食べて紹興酒を一杯飲む。これが必須。

大躍進とか文革とか、後半、ちょっと悲惨になるかなあ・・・という方向でしたが、そこをうまく交わしてまずまずのパッピーエンド。読後感もまずまずです。

血が減るから水を飲むのではありません。どうせ売る血なら、水で薄めておこうという算段です。
ついでですが、女房が他人の種で産んだ子供に飯を喰わせ続けたから自分は損をした。損をしたマヌケと見られるのはメンツにかかわる。だから怒る。そういう理屈。


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