「潮の音、空の青、海の詩」熊谷達也

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★★ NHK出版
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マタギものの熊谷達也ですが、現代小説。どんな具合に書いてるんだろうと借り出してみました。

テーマはちょっと重い。3.11です。そういえば熊谷達也ってのは仙台かなんか在住だったような。実際に体験した作家が正面から向き合って書いた本なんでしょう。

で、小説の前半は仙台の予備校に勤務する若者が遭遇した地震と津波。臨場感があります。うん、そんな感じだったんだろうな。災害の中心にいる人間は、いちばん情報から遠い。海から離れていれば、津波のことなんて想像もできないし、知ることもできない。日常の市街をクルマで走っていくと、突然、周囲は狂気の様相に変貌する。

しかしドキュメンタリーじゃないので、実体験だけを書くわけにもいかないです。後半は50年後(たぶん)の海辺の町に移動します。その近未来都市に住む利発な少年が主人公。海の景色をへだてる高い高い防潮堤の上で謎の爺さんと出会い、いろいろ話をする。この町の過去について学んでいく。

なんか似ているなあ・・と感じたのは池澤夏樹でした。この人も、ちょっとユートピア調というか童話のようなタッチで書くことがあります。少年がいろいろ勉強したり、疑問を持ったり。ナマの形で主張することを避けるために、そうした設定を作る。ただし登場するオトナたちに血が通っていない。情報を提供するだけの役目をもったキャラクター。テレビの子供番組に出てくる「物知りロボット」ですね。

そういうわけで、これもちょっと分裂した小説になってしまった。要するに、オブラートに包んでいるけど作者の「言いたいこと」がナマすぎるんでしょうね。小説としてはあまり成功していないような気がします。


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