「海を渡った人類の遥かな歴史」ブライアン・フェイガン

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★★ 河出書房新社
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副題は「名もなき古代の海洋民はいかに航海したのか」。たまにこういう本も読みたくなります。

要するに古代の人々はどのようにして海を渡ったのか。なぜ未知の水平線の彼方へ漕ぎだそうとしたのか。視認できる島なら納得できますが、そうとは限らない。何百キロという航海もしています。

大昔、たぶんミッチェナーの「ハワイ」を原作とした映画を見た記憶があります。ポリネシアの連中が遠大な旅をしようと決める。北へ北へ、茫漠たる大洋を航海していると、やがて神の使いの神聖な鮫があらわれて彼らを導いてくれる。こうして人々は常春のハワイにたどりついた・・・。この冒頭のシーン、けっこう感動的でした。

たぶん実際には、まず東南アジアに住み着いた人々がニューギニアとかオセアニア北部へ航海したらしい。大昔は海が低くて、渡るべき距離が少なかったらしいので、ま、一応は納得できます。船出にはいろいろ事情があったんでしょう。食えないとか、ケンカしたとか、女にフラれたとか

しかしある時点から、単なる冒険旅行ではなく、本格的なポリネシアへの計画移住が始まる。ラピタ人という連中。たぶんアウトリガーのけっこう大きな舟に女も子供も豚も乗せ、有用植物の苗も乗せて完全に引越しです。すごい冒険と思いがちですが、著者によるとあんがい危険は少ないんだそうです。モンスーン地帯では、だいたい定期的に風向きが逆転する。とりあえず東に延々と航海しても、数カ月待てば逆風を利用して帰還することも可能。もちろん星や太陽を見て、一定の航路を維持する必要はあるけど。航海に必要なのは知識と我慢、自制、忍耐。けっしてギャンブル心ではない。

著者は子供の頃から沿岸で小舟に乗ってウロウロした経験があるらしい。幼いころから海に暮らした人間にとって、島影を見分けたり潮の流れを測ったり鳥の飛び方を見たり星を見ることは決して至難の技ではない。猟師が森の中で迷わないのと同じレベルなんでしょうね。

ということで、動機があって頑丈な舟を作る技術があれば、海に乗り出すことはできる。その海域によって必要な舟の作り方は異なりますが、少しずつ改良をくわえて立派な船になった。

メラネシアからポリネシア、東地中海、北海、インド洋、アリューシャン。世界の海について記述していきます。エッセイのようでもあり、各地の舟の構造紹介でもあり、古代人のお話でもあり、なんともジャンルの明確ではない一冊です。

題名から想像するようなロマンチックな内容じゃないです。学術書ではないけどわりあい単調で退屈。でも読んでよかったと感じられる本と思います。


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