「遠くから来た大リーガー」ジョージ・プリンプトン

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★★★ 文春文庫
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電車の中で読もうと、本棚から適当に抜き出した文庫本。超速球の投手がチベットかブータンから大リーグにやってくる話だったような。副題は「シド・フィンチの奇妙な事件」。

大筋は合ってましたが、雰囲気はかなり違ってました。野球ファンの書いた痛快野球小説のような設定なんですが、実際にはベトナム帰りで後遺症に苦しむライターと、実生活になじめない女の子、求道者として精神生活に生きようとする不器用な英国人青年。3人が凸凹おりあって奇妙で居心地のいい共同生活をする。ま、そんな小説です。

チベットの僧院にたどり着いた青年は、敷地に侵入してくる雪豹を追い払うために小石を投げる術を学びます。精神を統一することでなんと時速270キロ。もちろん針の穴を通すようなコントロール。で、野球場のデザインが曼陀羅を連想させることから、青年修行僧は投手という存在にちょっと興味を持つ。なんなら大リーグに入ってもいいですよ。

時速270キロの速球投手が加わったら、野球というゲームはどうなるか。投げる必要のあるのは9イニング27球。もちろん完全試合です。バッターはボールの軌跡さえ見えません。投げた。ほとんど同時にミットの衝撃音。後方にふっとんだキャッチャーは痛みに苦しみもだえている。審判は確信もないままストライクを宣言するしかない。なにしろ見えないんだから

凄いといえば凄いですが、しらけるでしょうね。興奮する要素がまったくない。ピッチャーはただマウンドに歩いていって、ウォームアップもなしでいきなり投げる。スドーン。また投げる。ズドーン。坦々とそれの連続。

ま、そういう具合で新星シド・フィンチは球界に衝撃を与え、そして去ります。修行僧フィンチは人間生活へ復帰しそうだし、女の子も自分の場所を発見できそうだし、中年ライターはようやくタイプライターで文字を打てるようになる。たぶん。

けっこう楽しい読後感でした。ちなみに腰巻きの「野茂・・・」はほとんど内容と無縁です。そういう小説ではありません。


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