「動物翻訳家」片野ゆか

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★★★ 集英社
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いったい何の話だと思いましたが、ま、ようするに動物園の飼育係のお話。動物の心を翻訳するのが飼育係の役目だ・・という理屈です。

昔の動物園、子供心に嫌いではなかったけど心にひっかかる部分がいつもありました。ひたすら寝そべっているライオン。イライラしている虎。神経症のようにクルクル回っているレッサーパンダ。狭いプールの中に沈んでいる巨大なカバ。立ちつくしている象。

あんまり幸せそうには見えませんでした。狭いオリの中の囚人ですからね。じゃ、どうすればいいんだ。

20年ほど前ですか、旭山動物園について(テレビ番組で)知ったときは、非常に感動しました。ペンギンに自由に歩かせる。鳥のように水の中を飛翔させる。アザラシがガラス越しに人間を観察する。

形態展示」から「行動展示」への転身。その動物本来の暮らし方を可能な限り再現する。動物に幸せになってもらう。「環境エンリッチメント」というんだそうです。

ということで、この本では4例。氷を模した白いコンクリートの上ではなく緑の丘で営巣するペンギン。新入りを群に入れて融和を図った(当然、アツレキも生じる)チンパンジー、自由に空を飛ぶアフリカハゲコウ(たまには失踪するけど)、旧舎から新舎への引越しを本人に決断させたキリン(なかなか引越ししてくれない)。

なかなか興味深かったです。特にキリンが非常に神経質だというのは面白かった。新舎へのたった7メートルの通路をキリンは通ることができない。新しい環境は彼らにとって恐怖なんです。強制するとストレスが残る。この例でも、最終的には好物で釣って背後を締め切って引越しさせたんですが、そのキリン、釣りに使われた餌を以後は食べなくなったらしい。恨みの餌。

痩せていたキリンに新鮮な好物の葉を与えると喜んでせっせっと食べます。それまでは簡単に手に入るイモとかリンゴとか食べさせていたわけです。たしかに本来の棲息地の植物に似た葉っぱなら喜んで食べるし栄養価も低くて健康にもいい。でもそうした食物を手に入れるにはべらぼうな費用がかかる。大変です。

エンリッチメントは理想です。しかしお金がかかる。しかも動物のことだけ考えてたら商売にならないし、来園した客が喜んでくれないといけない。下手すると閉園になる。大変です。


ちなみに、本当いうとキリンという動物、あまり好きではありません。長い黒い舌をベローッと出されると気味がわるい。頭の悪そうな動物だと思っています。



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