「日本はなぜ基地と原発を止められないのか」矢部宏治

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★★★★ 集英社
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著者は学者やジャーナリストではなく、たぶん出版人。したがって「専門家」ではないようです。戦後日本では居心地のいい中道リベラルの感覚を持って暮らしてきた個人が、ふと疑問をもっていろいろ調べてみた。ま、そういう体裁をとっています。

内容はタイトルの通り。書かれていることの半分くらいは、断片的に既知の事柄でしたが、あとの半分くらいは意外や意外の事実。平易な口調で、事実を整理して並べていくと、今の日本の意志決定構造が見えてくる。なるほどねぇ。

細かいことは実際に読んでもらうしかないですが、骨子としては「安保法体系」なるものが戦後の日本を支配してきた。ことある毎に米国とか米軍が露骨に口出ししてくるというわけではありません。しかし実際には日米安保とか地位協定とか密約とか、細かいことを決める日米合同委員会とか、巧妙に糸を張りめぐらして、結果的にこうした「体系」に反するような動きは不可能になっている。

すべてが米国の押しつけではありません。日本から要請したものもある。少なくとも日米が同意したことは事実。

こう書くとまるでトンデモ本、陰謀論のようですが、そうではない。きちんと法律や密約(実質的には条約と同じです)で決められてる。もし市民から訴訟が起きても決して負けない。負けないことが分かっているから役人は強気で行ける(役人は必ず負けない側に立ちます)。おまけに司法は最終的に必ず味方をしてくれる。高度に政治的な事柄に司法は関与しないとい最高裁判決が出ている。

(あの鳩山が基地移転問題で、外務省、防衛省、内閣府だったかな、6人の役人を集めて極秘会議。内容は秘密厳守でこれから頑張ろうな・・と言ったその翌日、さっそく新聞にリークされてしまった。役人が鳩山に従うわけがない。可哀相にというか、アホか、というか)

そうそう。敵対国条項なるもの、いまだに残っているんだそうですね。戦後作り上げられた国連、訳し方にゴマカシがあって、実は国連も連合国も同じ「United Nations」です。戦争に勝った連合国がそのまま国連。したがって敗戦国であるドイツと日本を戦争のできない国にするという使命がある。ドイツ、日本がまた戦争を始めそうなら、全員ですぐ叩く。

戦後70年もたってまだ敵対国か・・という感じですが、なんせ条項が生き残っているんだから仕方ない。米軍が日本を守ってくれるというのは大きな錯覚で、米国は米国の利益のために日本に基地を置く。米軍は100%作戦行動の自由を持つ。日本が不穏な動きを見せたら、すぐさま叩き潰す。そう思っているというより、そうした行動が可能な「オプション」「選択の可能性」を決して捨ててはいないという考え方が正しいのでしょう。

東京の上空に米軍設定の飛行禁止エリアがあることは知っていましたが、実際には日本の上空はすべて米軍の空だそうです。どこでも自由に飛ぶ権利を持つ。要するに日本は現在も実質的占領地。飛行を禁止しようとするとたぶん訴訟になって、日本は負ける。そういう法体系になってるんだから仕方ない。

ずいぶん昔、テレビで故・ハマコウが「アメリカ様に逆らっちゃいかん」という言葉を発したときは驚愕しました。こんな正直な発言を初めて聞いた。でもたぶん自民党の政治家や司法省・外務省の幹部にとっては常識なんでしょうね。

いい本でした。


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