「マオ 誰も知らなかった毛沢東」ユン・チアン

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★★★★ 講談社
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毛沢東に対する嫌悪に満ちたです。例の「ワイルド・スワン」の著者。つい先日は「西太后秘録」を読みました。

書かれていることはかなり衝撃的です。決めつけがきついなあと思える部分も多々ですが、でも(たんなるカン)8割から9割くらいは真実じゃないかな。もちろん異論をとなえる人はたくさんいるようです。

高校時代、社会の教師は時間が余ると毛沢東を礼賛していました。偉大なる長征とか、国共合作でいかに国民党が卑怯だったとか、共産党兵士は農民から針一本、糸一筋も盗まないとか、理想郷の延安時代とか。いくらアホな高校生でも「ほんとかな」とかなり疑問に思うレベル。

この本で描かれているの毛沢東は野心に満ち、恥を知らない男です。同情とか共感能力が根本から欠如している。恐喝と策略でのしあがり、仲間うちでは巧みな弁舌(というより屁理屈)でライバルを蹴落とす。すべてウソだらけ。スターリンよりすごい。天才ですね。しかも悪運に恵まれた。

延安以降の毛沢東についてはぼんやり知識がありましたが、それ以前のもろもろは初めて知ることが多いです。なるほど、初期の共産党設立期にそうやって目立ったのか。例の長征、ボロボロになって逃げたんだろうとは承知していたものの、それどころではなかった。権謀術数の固まりです。コミンテルンの権威と組織の命令系統を実に上手に利用し、ライバルや兵士を意図的にひたすら殺して地位を築いた

文中、やたら「誰それはスパイだった・・」式の記述が多いのは少し閉口しますが、ま、 西安事件の詳細とか、なぜ強かったはずの国民党軍が簡単に崩れたのかとか、なかなか面白かったです。要するに蒋介石という人間、ちょっと古いタイプで情を大切にした。冷酷果断になれなかった。思い切りが悪い。ナアナア感覚で政府を運営していたから酷い汚職政治がはびこり、支持を失った。

で多くは共産主義の理想に憧れて国民党を見放した。ただしこの時代、党に走った連中はみんな酷い目にあったらしいけど。赤軍派とかISですね。外から見ると、なんか理想的でかっこよく見える。宣伝力。なんせ共産党の根拠地は田舎なので、実情がよくわからないし、で、中に入ってしまったらもう抜けられない。地獄。かなりの連中が抹殺されたらしい。

主席となってからは、なんとか中国を軍事大国にするため腐心した。国民のためにではありません、自分のプライドを満足させるためです。ソ連からせっせと武器を輸入し、軍艦、戦車、あげくは核施設やミサイル。しかし極端な貧乏国なので、代価として農産物を貢いだ

例の大躍進、餓死が蔓延している時代にも、せっせと食料を提供していた。ま、人民がどうなろうと関心なかったので(それなりには合理的な政治思想です)、人民なんて、たとえ半分になっても大問題ではない。放置していればまた増えるだろ、きっと。人が死ぬのはいいことだ。土地が肥える。

そうそう、なんとなく人気のある周恩来も、超有能だけど完全に毛沢東の犬になりさがった哀れな男(何回か抵抗しようとしたが挫折)という評価です。他にも何人か反抗しようとした部下や政治家はいたけど、ことごとく抹殺されている。毛沢東は病的に用心深かった。

不思議な男ですね。ファションとか贅沢に関心はゼロ。風呂はきらい。家族や家庭には無関心。歯は磨かない。全国に専用別荘を作りまくったけど、みんな防御に特化した無粋なコンクート造りで、外観や快適さは無視。自分は京劇が好きだったけど、人民には禁止した。寝ころがって本を読むのが大好きだったけど、人民の本は取り上げた。ダンスと水泳だけは好きで、ただしダンスは夜伽の女を選ぶのに好都合だったから。後年はダンス場の横に連れこみ専用寝室まで用意させた。

正直、読み終えて気分の悪い本でした。それにしても、周恩来、もう1年生かしておきたかった。実質的には毛沢東に殺された(ガンの手術をさせてもらえなかった)と書かれています。


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