「神々の消えた土地」北杜夫

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★★★ 新潮社
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本棚にあったのを発見して、ふと一読。

都会の(麻布・肉体派)中学生が松本高校へ入り、山に感動し、前から知り合っていた女学生(東洋英和)と結ばれ、そして空襲で彼女を失う・・・というお話。現代版、ダフニスとクロエーです。ただし背景は戦争末期であり、空襲であり、空腹であり、バンカラな旧制高校の寮です。

北杜夫がごく若い頃に書いたもののようです。「幽霊」が処女作ということになっていますが、それよりも前。本人も「若書き」と記していますが、確かにかなり粗い。恥ずかしくなるような粗さです。

ただ数十年後、北杜夫はその原稿を読み直して、捨てるに忍びなくて後半を書き足した。したがって前半と後半、微妙にタッチが違うものの、ま、「若書き」の雰囲気を可能な限り残したという感じです。

なかなかに読後感のいい本でした。そもそも北杜夫ってのは、こういう小説を書く人なんですよね。