「炸裂志」閻連科

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★★★ 河出書房新社

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この作家で読んだのは「父を想う」「愉楽」の2冊だけだったかな。「父を想う」はけっこうストレートな感動ものでした。「愉楽」のほうはなんというか難しい。

その難しいほうの系譜を本人は「神実主義」と称しているようです。荒唐無稽のようだけど、中国ならなんでも起きる。すべてが真実。「市長に任命す」というめでたい証書を振りかざせば天地が言祝ぎ、枯木に花が咲く。芳しい風が吹き、緑がぐんぐん成長する。

改革開放と期を同じくして放免された老父が帰宅して4人の子どもに命令。四つ辻からそれぞれ4つの方向に歩き、最初に出会ったものを大切にせよ。で、長男はチョークを拾って教師になり、次男は印鑑を拾って政治家に、三男は行軍に出会って軍人に、4男はなぜか猫。そして一家のライバルである家の娘は、仇敵一家のその次男に出会ってしまう。

次男は万元戸になり、村長に選出。そして村長が鎮長に出世するとなぜか役所の秘書嬢は上着のボタンを外す。スカートを脱いでソファに横たわる。花瓶の枯れ花が匂いだす。市長命令を出せば天も感じて雪も降る。勲章かざした軍隊が堂々と行進すれば、進軍の後には見事な滑走路ができあがる。

ま、要するに河南省の小さな村がどんどん大きくなり、四人兄弟の次男である野心に燃えた若い村長はぐんぐん出世し、鎮は県になり、市になり、上海や広州のような特別市にまで発展する。果てしない欲望と野望のストーリー。誰も幸せにならない。ま、そういうことです。

傑作とは思いませんが、行間のエネルギーはすごい。中国作家ってのは、そもそもの覚悟が違うんだなあ・・と心の底から思います。