「父を見送る」龍應台

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★★★★ 白水社
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著者は台湾のベストセラー作家のようです。単なる小説家ではなく、政府に招致されて事仕事をしたり大学で教えたり、文化評論家的な面も強いのかな(かんぜんな想像です)。そんな成功した有名作家が、市井の一個人として自分の父や母を語り、子どもたちを語る。台湾でもよく売れた本のようです。

内容は「家族を見つめる」「香港から見た風」「父を見送る」。両親は中国本土から台湾へ逃げてきたいわゆる外省人。台中あたりで苦労して暮しをたて、兄弟はそれぞれ医師になり、商人になり、著者は作家となってドイツ人と結婚して息子を二人得る。台北近くの桃園に家を構え、時に応じてドイツへ行ったり、香港で暮らしたり。

そして、オシャレ好きで元気だった母がどんどん老いる。背筋をしゃんと伸ばした誇り高い父が老い、力をなくして幼児のように衰えていく。最後は本土の故郷に埋葬される。

なんというか、非常に良質のエッセーとでもいうべきでしょうか。一語々々が暖かいです。こうした親との関係、その裏返しである子どもたちとの関係は、洋の東西を問わない。日本の家族の話といってもまったく違和感がない。たのしく読めた一冊でした。