「昭和天皇実録の謎を解く」半藤一利/保阪正康ほか

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文藝春秋 ★★★
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昭和天皇実録」というのは、宮内庁が24年かけて編纂、全60巻を平成26年から刊行開始して天皇皇后に奉呈というものらしい。いわば前天皇に関する公式史ですね。

で、半藤一利、御厨貴、磯田道史、保阪正康らが対談鼎談の形で、この出たばかりの「昭和天皇実録」について語る。今回の中身は昭和天皇の幼少期から開戦、終戦のあたりまで。

「実録」だからといって書かれたことをそのまま真っ正直に受け取るわけにはいかない。たぶん嘘は書いてないんだろうけど、問題は「書かれなかったこと」にある。あるいは「妙にページを使って」詳細を語っている部分。意図がある。

推測によると、非常に賢くセンスのいい書き手が、渾身の配慮の記述をしているもよう。嘘は書かない。でも真実も書かない。ただ他の多くの資料を参照し、行間を必死に読んでいくと、真実らしいものの断片が見えてくる。そういう性質のものらしいです。

ザーッと読み流しただけですが、天皇ってストレスの固まりだったんだなあ。母親には期待されず、弟からは突き上げられ、重臣も軍部もちっとも言うことを聞いてくれない

ただし「平和を祈念しながらも抵抗できず流されていって・・」という悲劇の人ともまた違う雰囲気。平和主義の天皇であり、同時に大日本帝国陸海軍の大元帥でもあり、そして皇祖皇宗の末の大神官としての立場もある。ややこしいんです、たぶん。

少なくとも「天皇になりたい・・」とは絶対に思わなくなる。