「あの頃 - 単行本未収録エッセイ集」武田百合子

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anokoro.jpg 中央公論新社 ★★★★

けっこう数多く書いてる印象だったけど、落ち穂拾いみたいなこの「収録エッセイ集」も100本くらいはあるだろうか。なかなか分厚い本です。

一人娘の武田花さん編。死後に本は出すなという約束を破っての出版らしい。いけないんだろうけど、読者としてはやはり有り難い。武田泰淳の死後、本人的には「未亡人になって」から亡くなるまでが約16年ほど。その間にあちこちから頼まれて書いた雑文を花さんが選んだんでしょう。

楽しみながら読んでいたら、あっというまに期限がきてしまった。最近はこればっかり。結局、500ページ余りのうち半分しか読めませんでした。もったいない。

知らなかったこと。武田泰淳は肝臓に転移しての死だったらしい。富士日記だけではそのへんがモヤヤしていて、なんか急に亭主が原因不明、霞みたいに軽くなって消えたような印象しか残っていない。

書かれたものはみんな面白かったけど、戦後できた「世代」という同人誌と、その編集長をつとめた遠藤麟一朗という秀才については初聞。エンリン、よほどダンディな人だったらしい。腐ったようなパンプス履いて(たぶん)ドタドタ歩いていた百合子(神保町ランボオの貧乏ウェイトレス)を見るに耐えかねて、高い靴を買ってくれた話。美意識的にガマンできなかったんじゃないか、と本人は分析している。自分の給料の二カ月分と書いてあった。

原民喜だったか誰だったか。純粋そうな人に、たまに会うと「あんたはダメになった・・」と小さな声で叱られる。叱られると、確かにね、と本人も納得している気配で、このあたりの空気がなんとも楽しい。吉行淳之介たちの悪グループに誘われて百合子が逃げる話もいい。「毒牙にかかりたくないから」といわれた吉行はどんな顔をしたんだろう。

花さんによると「とにかく派手な女」だったそうです。また機会がきたら借り出しますか。


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