「炎と怒り」マイケル・ウォルフ

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早川書房★★★
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例のFIRE AND FURYの訳本です。訳書刊行が2018年2月。

なんとか最後までたどりつきましたが、読みにくい本ですね。訳文のせいも多少はあるでしょうが、内容はかなり品がないです。言葉が汚い。なにしろ暴露本です。おまけに登場する多数の人物群、富豪とかジャーナリストなんかでしょうが、日本人には馴染みのない名前がズラズラ出てきて閉口します。あくまで本来「米国人が米国人のために書いた本」です。

著者はフリーのジャーナリストらしく、ワイワイやっている選挙運動のさなかに雇われた。ホワイトハウス西棟に入ってからも、なんせプロ不在の素人集団なので、きちんとした取材ルールがない。何を取材してもいいとか、何は口外するなとか、決めようとする人もいなかった。

だれも注意しないので著者はこれ幸い、ホワイトハウスを自由に歩き回ってはいろいろ面白い話を聞く。当然、自由放任はせいぜい数カ月と思っていたら、いつまでたっても制止がかからない。誰も気がつかなかったんでしょうね。それでずーっとホワイトハウスをほっつきまわることができた。とくに不満をためていた中心人物のバノンは悪口、中傷、たっぷりしゃべってくれたらしい。

ザックリ言うと、トランプは尻めつれつの困ったオヤジです。確固たる自分の考えなんてゼロ。強烈な好き嫌いはあるけど知恵はない。活字は読まない。人の話も聞かない。すべて自分で決めたがる。女に関しては自制できない。特技は「忘却」で、自分の言ったことをすぐ忘れることができる。

フラフラ目移りするトランプをなだめたりすかしたりして引っ張っているのが、この集団で唯一戦略をもっている雄弁のバノンです。しかしそのバノンの天敵がイヴァンカとクシュナー。知りませんでしたが、基本的にイヴァンカ&クシュナー=ジャーヴァンカはリベラルなんだそうです。だから右翼バリバリのバノンと一緒に行動なんて無理なんですが、父親のトランプが大統領になった以上、そうも言っていられない。なんとかトランプの軌道を修正し、結果的にトランプファミリーに益をもたらす必要がある。はい。リベラルも大事ですが、いちばん大切なのは「ファミリーの利害」です。

というわけで、プロ不在の大混乱集団なのに権力だけはたっぷりある。ハイエナやキツネの群が利権を狙ってすりよってくる。混沌の中で主導権争いをしているのはバノンとジャーヴァンカ。どっちも汚い手を使うことに躊躇がなく、メディアに情報リークしたり中傷しまくったり。肝心のトランプ(影響されやすい)はそのたびに右をむいたり左をむいたり。

で、苦労しっぱなしなのが広報担当です。何か事件がおきる(というかトランプがまき起こす)たびに責任を問われて(あいつのせいだ。無能だ! FIRE!)首になる。したがって歴代の広報担当を列挙するとすごい数になるはずです。

この暴露本はモラー捜査官の任命、バノン失脚あたりで終わりになっています。しかし現実はこの後がもっとすごくて、更にどんどん首を切られたり辞任したり。外交面でもなにがなんだやら、右往左往。後書きにもありましたが、こんな暴露本を出版されても、トランプを支える岩盤支持層は微動だにしないでしょう。なにしろ彼らは本を読まない。反トランプのテレビニュースもみない。世の中、さして変化はないようです。


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