「FEAR 恐怖の男」ボブ・ウッドワード

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日本経済新聞出版社★★★

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夏の暑さのせいか、トシと老眼のせいか、とにかく本が読めない。今回も3週間かけてようやく最後のページまでたどりついた次第。他にも2冊借りてはいたけど、まったく手つかず。ダメですね。

さて、定番のトランプ本です。

少し前に読んだ「炎と怒り」が、善悪はともかく強烈なリダーシップのバノン(首席戦略官)の失脚あたりで終わっていたのに対し、こちらはもう少しあとのモラー特別検察官登場あたりまで。トランプ側の弁護士がモラーに探りをいろいろ入れたり、国務長官がこのところ意見の食い違いが目立っていたティラーソンからポンペオにかわったり。

書き手はボブ・ウッドワードなので、さすがに読みやすいです。きちんと頭に入る。(ちなみに「炎と怒り」のマイケル・ウォルフはまるでトップ屋ふうの文章でした。品がない。とっちらかっている)

で、内容は、そうですね。想像通り。トランプという男がいかにどうしようもないかということがわかる。幹部・側近の仕事の大部分は、大統領が軽率にバカをしないように気をくばり続けることです。政治や外交での失敗は、単に損するだけではすまない。それを大統領は理解していない。大変だ。

朝、執務室のテーブルに米韓自由貿易協定を破棄の大統領令が置いてある。こんなのにサインされたら大変々々と、側近はそーっと書類を盗みだします。通常なら大問題なのですが、トランプは書類がないことに気がつかない。完全に忘れる。で、数カ月たつとふと思い出して、大統領令を出すぞ!書類を用意しろ!とまたわめく。また誰かがその危険書類を捨てる。トランプは忘れる。

貿易赤字に対する固定観念はもう病気みたいです。赤字はいかん。赤字を避けるには関税を高くすればいい。非常にシンプル。閣僚や補佐官が、関税障壁はむしろ有害で国内企業が傷つくとどんなに説明しても理解できない。、

在韓米軍駐留がなぜ必要なのかも、ほんとうにわからない。韓国との関係とか地域安定がどう役に立つのかなんて考えない。とにかく金がかかるから引き上げろ!と言い出す。

金正恩とロケットマンうんぬんで口げんかのころには、駐留米軍の家族に退避を指示しようとした。正式命令ではなく、ツイッターでです。もし本当に家族引き上げ指示ツイッターが発信されたら、かなりの確率で金正恩は「次は直接攻撃か」と怯えたはずです。けっこうな確率で、やけっぱちの先制攻撃もありえた。

誰だったかな。幹部の一人のナントカ補佐官がガマンしきれず辞任を申し出る。わかった、仕方ない。で、後任は誰がいいと思う? うん、そうだなトムか。私もいいと思う。「この発表は金曜にと思うのですがいかがでしょう」 うん、そうだな。金曜に発表しよう。

で、そのナントカ補佐官が家に帰るころ、トランプがもうツイートしている。ジョンは辞任した。すばらしい男だった。次はトムになる。こっちはすごい奴だ。いい仕事ができるだろう。

ただしトランプには裏切ったという意識は皆無。金曜うんぬんなんて覚えていない。新任のトムにまだ話を通していないことも忘れている。トムも驚きますね。とにかく「自分が最初に発表」なんです。非常にいい気分。そういう人のようです。

そういう男が大統領の地位にいる。移民と関税障壁なしの貿易が大嫌い。会議とか枠組みも大嫌い。そして何回かゴルフをしてその「友人」と自称しているお人好しもいる。ん? お人好しではなく、百も承知なのかな。今回も売れ残りのトーモロコシ買って帰りましたが。