「黒い豚の毛、白い豚の毛: 自選短篇集」閻連科

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河出書房新社 ★★★
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閻連科(えんれんか)は「炸裂志」「父を想う」「愉楽」などを既読。この「黒い豚の毛・・・」はかなり早期から最近までの短篇を収録したものです。

表題の短篇「黒い豚の毛、白い豚の毛」とは、クジをひかせるために用意した毛です。黒い毛ならアタリで白ならハズレ、だったかな。景品はなにかというと、自動車事故で人を轢いてしまった鎮長さんの身代わりになる権利。「鎮」というのは、県より少し小さい都市だったかな。たぶん人口1万とか2万程度の町長です。

中国、タテマエとしては公正な法国家ですが、だからといって権力者の町長さんを監獄にぶちこむわけにはいかない。誰かが身代わりになって、ま、(楽観的には)半月とか数カ月お勤めをしなければいけないわけです。で、その身代わり、出獄の暁にはたぶん出世が待っている、はず。

そういうわけで、村のうだつのあがらない貧乏で気弱な男が身代わりにに応募する。30歳近くなってまだ嫁がこないというのは、非常に肩身がせまいわけです。けんめいに嫁を募集するけど「あんな奴!」と若い娘には愛想つかされている。

で、同じような連中が何人かいて、みんなで豚の毛のクジをひく。なんで豚の毛かというと、身代わり話を鎮長から受けてもってきたのが(村では権力者の)肉屋。いましも何頭もの豚を処理している最中で、面倒だからこの毛を使え!と白黒の毛を提供した。この肉屋にとって、こんな話はどうでもいい些細なテーマなんですね。

で、想像されたことですが結末はかなり哀しいことになります。

同じように気弱な村人テーマでは「きぬた三発」という短編もあった。ぶいぶい言ってるジャイアンみたいな大男を、みんなにバカにされている寝取られ男が「きぬた」でぶんなぐるという話です。ちなみに寝取っているのはそのジャイアン男。これも哀しい。

短編集のテーマは大きく三つで、村の生活、軍の生活、ついでに信仰かな。閻連科という作家は貧困農民の立場に視点をおいた人で、けっこう珍しい書き手です。要するに、インテリではない。インテリでない・・・の点では莫言も似ていますが、もうちょっと洗練されているというか、神経がデリケート。莫言はガルガンチュア的なところがありますからね。

なかなかいい本でした。読み終えて、ちょっとしんみりする。


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