「呉漢 上下」宮城谷昌光

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中央公論新社★★★
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同じ作家の「草原の風」というのを読んだことがあり、これは後漢の光武帝の半生を描いた小説。光武帝(劉秀)は湖北の豪族の次男で、一応は劉一族の末裔。若いころに呟いた「仕官当作執金吾 娶妻当得陰麗華」(官につくなら執金吾、妻を娶らば陰麗華)のセリフで後世にも名を残した。ちなみに金吾()は京の警備隊長みたいな地位ですね。衣装が派手でカッコよかったらしい。陰麗華は付近で評判の美女。

で、「草原の風」、なかなか面白かったんですが、でも物足りない。仕方ないんですね。劉秀というのは性格穏やかで、あんまり残酷なことはしない。しかも軍事の天才で体も丈夫。地元で評判の美人と約束守って添い遂げる。その陰麗華もかなり完璧女性。要するにエピソードやスキャンダルがあまりないという困った連中です。だから小説にならない。たとえ書いても面白くならない。

とういことで、劉秀を違う面から描いてみようという試みなんでしょうね。信頼の大司馬(武将トップです)だった呉漢という人を中心に新しい小説を書いた。

呉漢、もちろんまったく知らなかったキャラですが、どうやら朴訥で堅実な人物だったらしい。地面をみつめて黙々と耕作するしがない農民だったけど、なぜか隠れた能力を見いだす人たちが次々とあらわれる。自然にレールをひいてくれる。

軍事面に能力を発揮し、皇帝に尽くした。悪目立ちして殺されもせず、寿命をまっとうした。光武帝、部下をあんまり処分しない人だったらしい。中国の皇帝にしては非常に珍しいです。ついでですが、皇后になった陰麗華も賢い人で、自分の実家にあまり勝手をさせなかった。これも珍しいです。

だから後漢がすばらしい時代だったかというと、それはまた別。後漢200年、なぜか語る人の少ない時代です() 。代々の皇帝が長生きせず、みんな幼くして即位。結果的に外戚と宦官で衰弱したとWikiにありました。この後漢の次が三国志の時代です。


そういえば関ヶ原の小早川秀秋が「金吾」でした。中国のこうした官名をカッコいいから流用して使ったんでしょう。

漢委奴国王(かんのわのなのこくおう)の金印。この光武帝に朝貢して授けられたということになっています。ほんと、大昔ですね。


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