「ケイレブ」ジェラルディン・ブルックス

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平凡社★★★
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初期のハーバードにはネイティブアメリカンが学んでいた。これは初耳というか、驚きました。なるほど、まだアメリカ独立前の話なんですね。王女ポカホンタスなんかが大活躍(もちろん嘘八百ですが)した少し後です。

英国人たちが入植した、いわゆるニューイングランド。最初のうち地元のワンパノアグ族とはそれなりに友好路線だったようですが、なんせ入植連中は頭コチコチのピューリタンです。蒙昧なインディアンを改宗させようとか、悪魔を滅ぼせとか、ろくなことを考えない。厳格なキリスト教徒の中でもとりわけ融通のきかない連中。

そうした一種の「同化策」としてインディアン少年のハーバード入学もあった。ちなみにハーバードの創設は1636年。マサチューセッツ州ケンブリッジ。ボストンの近郊です。ここにたぶんワンパノアグ族の少年たちが入学し、1665年に卒業したという事実があるらしい。当時のハーバードの勉強なんてラテン語とかギリシャ語とか、いやはや。ご苦労としか言いようがありませんが、ま、非常に優秀だったんでしょうね。

おそらくそれだけの事実を元にして、女性作家が少年と少女のお話を書いた。17世紀のニューイングランドですから、甘いストーリーなんて無理。なかなかに厳しい。そしてインディアン少年も部族と英国、土着信仰とキリスト教の間に引き裂かれ、苦しみ、壊れていく。まもなくこの地ではフィリップ王戦争が勃発。英国人と地元部族との壮絶な戦争ですね。戦争というより、一種の民族浄化。インディアン退治ですか。

ま、そういう哀しいお話しです。

分離派ピューリタンというらしいです。ピューリタンの中でもケッペキ派。英国国教会から分離しようとした。