「クローンの祭壇」 ピーター・ゴールズワージー

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文藝春秋 ★★★


clone.jpg珍しくオーストラリアもののクローン小説。主テーマは聖遺物からとったキリストの細胞を使ってクローンなんとか・・というごく陳腐なものだけど、登場人物のキャラが非常に新鮮。

40代後半、閉経間際、この世のどんな場所より無機質な手術室が落ち着けるという未婚(かつ処女)の不妊治療医。相棒はデブデブ太ったゴシップ命の、しかし有能な胎生技術者。そして少年のように身勝手かつ自由な天才遺伝学者。

このクールな女医が天才遺伝学者と一夜を過ごして、彼の寝ている間に汚いシャツ(だったかな)をつい洗濯してあげてしまう。普段はつっぱっていて、容貌にもスタイルにもまったく自信もなく無視。何を着ても似合わない。でも密かに肌の美しさだ小さな誇りを抱いている女性です。そして、たかが洗濯なのに、なぜかそのときだけは素晴らしく充実してしまう。

人間の複雑さ、面白さを感じされる一冊です。あっ、最終結末はちょっと・・という感もありますが。