「風がページを・・・・」 池沢夏樹

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文藝春秋 ★★★

 

kazega.jpg週刊文春に連載していたもののようです。読書日記。

池沢夏樹の本を読むといつも感じるのですが、どうもうまくいかない。抑制のきいた文体は好きだし、見方もいいです。興味の方向も広範。じっくり読むと「うん、いいなー」と感じるのですが、でも読み通すことができない。不思議です。美人で人柄もよくて賢くて、なんにも難点がない女性なのに、でも結婚する気になれない・・というような不思議さでしょうか。

今回もしばらく放置しておいて、さすがにもったいないのでパラパラとアトランダム拾い読みしました。たぶん全体の7~8割は目を通したと思います。そこまで到達したところで返却期限がきた。

文芸、科学、社会、歴史、いろんな範疇に関心を持っている人ですね。たぶん、非常にきっちりした人なんだろうなぁ。取り上げた本の中で、たとえばアン・パチェットの「ベル・カント」に対しては甘すぎる!と厳しかったです。人物の設定がご都合主義で甘々、だから結末も破綻しているとご批判。まったく指摘の通りだと私も思いますが、でもわたしはその本、けっこう好きでした。

そうそう。読み終えてからふと、サン・テクジェペリの「星の王子様」の結末の部分が気になりました。王子様が「もう思い残すことはない」と言ったというけど、実は原文は「なにもいうことはない」だったはず、という一文。訳の内藤濯さんがそんな誤訳(意図的なんだろうな)をするだろうか・・・と不審で、該当ページをもう一度探したけど発見できない。サンテックスのことは書いてあるけど、女房はそんなに悪妻でもなかったというようなことだけ。どこに書いてあったんだっけか。

トシヨリの勘違いでした。たまたま今日の朝日新聞(土曜特集)に星の王子様が取り上げられていて、この話が乗っていた。「なにもいうことはない」ってのは、どこかの少年がそう記憶して手紙に書いたというようなストーリーで、「原文」というのは出版の日本語文、という趣旨みたい。最近の新聞のこのテの文芸ものは、とにかく文章が悪く凝っていて、意味がなかなか読みきれない。おまけに私がボケかかってるから、新聞と書評本の記述がゴッチャになってシナプスに残ってしまった。

困ったもんです。自分の記憶が信用できなくなると、けっこう悲惨です。