2010年11月アーカイブ

★★★★    朝日新聞社

saigo.jpg全9巻のうち、ようやく6巻まで読了。長いです。

海音寺さん(なぜか「さん」を付ける)のものはたいてい面白いですが、この「西郷隆盛」は史伝なので、フィクション要素はゼロ。雰囲気は少し異なるものの、大佛次郎の「天皇の世紀」と同じですね。

どちらも、読むときは背筋を正さないといけない。実際には、正さないといけないなあ・・と思いながらダラけて読んでます。あっ、ダラけてと言っても、横になって読むのはさすがに無理です。内容も重量も重すぎる。せいぜい、足を組んだり椅子に寄り掛かったり、ストーブに足を乗っけたり程度が限度。

こういう立派な本の内容をあれこれ論評するのも気がひけますが、素朴な感想としては「当時の志士ってのは大変なんだなあ」ということ。京大阪から江戸やら水戸やらまで、ひたすらテクテク歩くのも大変だし、毎日々々手紙をかいたり控えをコピーしたり、毎日のようにだれかの屋敷まで会いに行ったり(もちろん徒歩)、アポがいいかげんだから相手の来るのを待ち続けたり。その挙げ句に必死に説得したり、叱られたり恨みをかって切られたり、切腹させられたり。

航海遠略策の長井雅楽なんて、可哀相なもんです。どこといって悪いわけでもないのに会社に変な責任とらされて切腹。責めたてたのは血気にはやる松陰一派ですか。

他にもいましたよね。切り込みかけられたときにいったん逃げて(刀をとりにいった?)、それで士道不覚ってんで結局酷い目にあった学者。もう名前を忘れてしまった。どんなに弁舌知識があっても「無駄死の覚悟」がないとやっぱりダメらしい。えーと、横井小楠ですね。これで評判おとして、せっかくのチャンスを生かせなかったし、明治になってからはわけわからないトラブルで暗殺ですか。

不条理な時代です。自分なんかだったら、まず脱藩する勇気がたぶんない。仮に脱藩してもすぐ食い詰めて、そのうち「優柔不断! 士道不覚悟」とかソーカツされて非難されて切られてしまうんでしょうね。

まったく関係ないですが、桂小五郎、やっはり上手に逃げてたんじゃないかな・・と勝手に思っています。義理や激情で死ぬにはちょっと怜悧すぎる。

★★ 白水社

h_kaisou.jpg名作という評は知ってましたが、なかなか手にとる勇気がなかった。ん十年目にして、ようやくページを開きました。白水社の本なんて、ほんとうに久しぶりです。

うーん。たしかに悪くない。ハドリアヌス帝っていえばスコットランドとの国境に塀をつくってしまった人ですね。息子に送る手紙という形式ですが、小説というより詩、一種の香気。読むと面白いんだけど、行をたんねんに追うのがけっこう疲れる。

結局、半分ほど読んだとこで挫折。借り出し期間のある図書館本では無理ですね。1冊読むのに数カ月かけてちょうどいいような本なんでしょう。

ついでに「沈黙/アビシニアン」 古川日出男。この人の本は「アラビアの夜の種族」で初めて出会って、びっくらこいた記憶があります。わけわからんけど、迫力あるなあ。

chinmoku2.jpgそれから「13」とか、タイトル忘れたけど小笠原あたりの山羊の島で少年少女が生きのびる話とか。「サウンドトラック」だったかな。

で、今回の「沈黙/アビシニアン」。これも情景がいいです。ストーリーにはまったく感動しないけど、文体とそこで描き出される映像がいい。ちなみに私は「音」とか「音楽」には感動がありません。どっちかというと映像タイプの人間。それが原因で没入できないんでしょうか。

で、結局は途中で挫折。古川日出男を読み切るにはエネルギーが必要で、例によって貸し出し期限が来てしまいました。とうぶん読み直す気力はわかないと思います。

ベランダから見える大きな桜の木が、黄色くなり、昨日あたりから全体にオレンジ色になってきました。ハラハラと枯葉が落ちているらしく、木の根元が赤く染まっています。朝方、竹ホーキでゆっくり掃いている人がいます。こういう人の動き、遠景で見ていると何故か心がゆったりなごみます。

永遠に続くかと思われた酷暑の夏でしたが、「秋の気配」とか「夏の終わり」という微妙なシーズンがスッ飛ばされて、あっというまに晩秋の冷気に移ったようです。室内で靴下をはかないでいると、しんしんと裸の足が冷えます。冷えますが、そう嫌いな冷えでもありません。

子供の頃の冬、ふだん使わない座敷へ行くと、踏んだ裸足が痛いほど畳が冷えきっていました。思い出の中の情景としては、そう悪いものでもありません。なぜか冷たさ=清潔さ、という図式があるようですね。

そうそう。先日は内幸町のホテルで恒例の食事会。長老方、みんな元気でした。ただし名門ホテルも、サービスはだんだん劣化してきたなあ。ベテランが引き抜きにあってるんだろうか。食事内容も少しずつ落ちてきたような。

★★★ 角川書店

最初に「お行儀の悪い神々」(マリー・フィリップス 早川書房)に出会って、これがけっこう面白かったわけです。忘れられかけたオリュンポスの神々がロンドンの古屋で暮らしていたらどんな具合だろう・・というストーリー。

ame_goods.jpgま、全体としてはかなり酷かったんですけどね。でも部分々々が悪くない。力を失った見勝手な神々はアルバイトで犬のトレーナーをやったり(狩猟の女神アルテミス)、もうろくして寝たっきりになったり(ゼウス)、やけに忙しかったり(通信と経済のヘルメス)・・・。

で、ネットを見たら「アメリカン・ゴッズ」の英国版じゃないかというような書き込みがあって、そこでニール・ゲイマンという書き手を初めて知った。

で、(で、ばっかし)ニール・ゲイマンの「アメリカン・ゴッズ」を通読し、これも悪くないので「アナンシの血脈」「グッド・オーメンズ」と進んだ。すべて角川書店です。

ゲイマンって、ストーリーは30点、キャラクターや情景の切り取り方は90点というような、不思議な作家ですね。才能がありすぎて空回りしているような作風。3作の中では移民といっしょにアメリカに渡った北欧神話のオーディンが主役の「アメリカンゴッズ」が比較的まっとうですが、光る部分はむしろドタバタ駄作の「グッド・オーメンズ」なんかのほうが多い。

ananshi.jpggood_omen.jpg二級天使と下級悪魔とか、オートバイに乗った黙示録の4騎士とか、かなり魅力があります。
あちこちに点在する挿話も非常に雰囲気がある。こんな作家がきっちりした長編を書いてくれたら楽しめるだろうなあ。

★★★ ソフトバンククリエイティブ

daiseido2.jpgけっこう厚い文庫で3冊。「大聖堂」はもちろん読んでますが、ストーリーは忘れてしまいました。なんか才能あふれる建築職人が巨大な聖堂をたてる話だったような。

で、その続編だそうです。フォレットの本ならある程度面白いはずなので借り出し。舞台は14世紀のイングランドのどこかの街。14世紀というとペスト流行ですから、コニー・ウィリスの「ドゥームズデーブック」と同時代ですね。

スラスラと読了しましたが、うーん、傑作と言うには少し躊躇します。知恵がまわって大工の才能のある兄、スポーツ系(闘争系)の弟、非合理的なことが許せない積極少女、貧しくて生命力のある少女。4人で始まる導入は雰囲気いいですが、ま、そこからがお決まりパターンで・・・。

どうも悪人vs善玉の構図がはっきりし過ぎてるのが物足りないですね。悪人といっても、根っからのワルではなく、それなりの背景はあるんですが、でも常に対立構造でストーリーが進んで行く。才能ある主人公は常に成功するとか、キャラの描き方とか、社会の構図とか、「ドゥームズデーブック」と比較すると辛いものがあります。

とかなんとか言ってますが、一気に3巻を読んでしまったんだから文句言っちゃバチが当たる。はい。面白い本でした。

アーカイブ

最近のコメント

このアーカイブについて

このページには、2010年11月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2010年10月です。

次のアーカイブは2010年12月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

OpenID対応しています OpenIDについて