2013年7月アーカイブ

★★★★ 中央公論新社

kyokuhoku.jpg村上春樹訳。春樹は旅行作家ポール・セローと親交があるらしいですが(「ゴースト・トレインは東の星へ」の東京編には春樹が登場。面白い本です)、そのポール・セローの息子がマーセル・セロー。「あいつ、やっていけるんだろうか」という親爺の心配をよそに、息子は傑作を世に出しました。

はい。秀作と思います。

内容はあんまり書けません。ま、SFということになるんでしょうかね。てっきり北極探検の話かと思ったら違いました。近未来、荒涼としたシベリア北東部で孤独かつタフに生きていく話です。

ストーリーはいろいろドンデン返しの連続ですが、そうした表面の話とは別に、大きな流れとして「文明の利便のない社会で人間はどう生きていけるか。また孤独で生きていけるか」というようなテーマがあるんだと思います。極北の激しい気候、飢え、暴力、血、裏切り、ちょっとした希望

主人公の述懐スタイルで進んでいくので、すべて読者がすぐ理解できるように書かれているとは限りません。省略もけっこうあります。読み進んでいってから「ああ、そういうことだったのか」と知る事実もあります。

結局、救いがあるような、ないような。でも読後には何か爽やかなものが残ります。

★★ 文藝春秋

tengukozou.jpg神隠しの子供が平田篤胤の拾われたが、実は異能の持ち主。天狗小僧です。その能力というのは時代を下って旅することができるというもので、ときどき幽霊みたいに未来をさまよってきては篤胤にご報告する。

要するに江戸後期の知識と感覚で20世紀、21世紀を見たらどうなるか・・ということのようです。

薄い本の前半はなかなか面白かったです。後半はなんか思い入れが加わってきて興ざめな部分もあり。そうそう。カタカナをいっさい使わずに現代社会を描写するのがどんなに大変かという点は面白かったです。たとえばソーラーハウスを何と表現したらいいか。自動車をどう描くか。そのへんは面白かったです。




「鬼に喰われた女 今昔千年物語」坂東真砂子
★★ 集英社

oninikuwareta.jpgこれも薄い本。平安の怪奇妖怪を描いた短編集ですね。

ま、悪くはなかったですが傑作かと言われるとはて。

メモ代わりに。

yubatake.jpg子供の休みにあわせて先月は草津へ。梅雨の真っ盛りなので覚悟していましたが、夕食前に湯畑まで見物にいこうとしたら雨。すぐ戻りました。そうそう。泊まった宿の仲居さん、珍しく人柄の良さそうな人でよかったです。

翌日は草軽交通のバスで軽井沢へ南下。完全に山の中のバス道ですが、ときどき木々の間からのぞく景観があんがいよかった。正解でした。

軽井沢はお決まりパターンで旧軽銀座をうろうして、一応はショー礼拝堂も見て、ミカドでコーヒー飲んで(久しぶりの美味しいコーヒーでした)、万平ホテルまでフラフラ歩いて昼食。時間外れだったためかホテルのダイニングはがらすきでしたが、ウェイターがきさくで上質。最近のレストラン、どこもやけに気取ったアホなウェイターが多くて閉口ですよね。

kariuzawast.jpgなぜかジャムとパンを買って帰りました。久しぶりに見る軽井沢駅、ずいぶんモダンになっていました。びっくりです。南口なんてまったく昔の面影なし。(この前行ったのって何年前なんだ・・)


別件。

BS放送を録画するために番組表を出そうとしたら、いやー、出ない出ない。虫食い状態の番組表がノロノロノロと出てきて、そのまま凍りついた。予約できない。ふんとに。

ガチャガチャやってると「BSデジタル放送の設置確認・・」とかいうメッセージがペロっと出てきて、そのまま消えない。邪魔だなあ。ずいぶん前に契約してるんだけど。

デジタル放送のB-CASカード関係、ほんとうざったいです。テレビ会社とNHKと著作権保護、わけのわからない結託している。しかも堂々と結託するんならまだしも「いえいえ、無理押しではありませんので・・」と遠慮したふりをして猫かぶり。B-CASカードを登録しないと実質的に受信できない。ユーザの登録情報はもちろん許可がない限りNHKには教えません。それは自由だけど今後、いろいろ不都合があるかもよ、どうします?・・。


それはともかく。調べてみるとどうもDVDデッキのほうのB-CASカード番号を登録しなおさないといけないらしい。テレビ本体のB-CASカードは問題ないみたいです。ふんとに。

文句言ってても仕方ないんで、WEBから登録申請しました。申請して数分で邪魔なメッセージは消えました。お年寄りなんかで急にこんなメッセージが出たら困るんだろうなあ。やっぱ、近所の電気屋さんを呼ぶんだろうか。

★★ 中央公論新社

41pou.jpg日時の制約もあって以前に一度挫折した本です。読み直し。

「四十一炮」とは、41の砲撃でもあり、41の大ボラでもあるとか。いまは僧侶志望となった肉フェチのクソガキがひたすらホラというか誇大妄想というか、事実と虚構の境目のあいまいな41の告白を繰り返します。

この告白されるストーリーの筋とは別に、クソガキの周囲ではこれもまた事実か幻影かさだかではない食欲と肉欲のお芝居が展開され、正直、事実なんてどうでもいいわ。ストーリーは無意味ですね。

ちなみに41発の砲撃は、旧日本軍の捨て去った迫撃砲を使ったものです。迫撃砲とは、おそろしく仰角の高い小型砲ですね。子供の頃のニュース映画で見た朝鮮動乱の人民解放軍はこれをポンポン楽しそうに撃っていました。いまは「朝鮮戦争」というのかな。時代とともに名称が変化するんで自信ありませんが。

舞台となる村は、村をあげて「水注入肉」で繁栄しています。誰ももう農作なんて儲からないことはしない。ひたすら牛 馬 犬 ロバ ダチョウ ラクダなどなど屠殺精肉で商売している。ただし注入も水だけでは腐りやすいので賢い奴はホルマリンも入れるし、色素もたっぷり使って誤魔化す。

肉だけじゃありません。村の廃品回収の貧乏オバはんまで破れダンボールに水をぶっかけては重量を水増し(言葉の通り)して稼いでる。ほんま、何もかも水増し。小説のどこかに「水を注入できないのは水だけ」というセリフもありました。ま、そういう村です。ただしこれが本の主題の一部なのかどうか、そのへんは判然としません。

とかなんとか。★★か★★★か迷うところですが、莫言にしてはあんまり楽しめなかったかな・・・という本でした。

★★ 平凡社

kamshiyomu2.jpg第2巻は南北朝時代の謝霊運から始まって盛唐へ。李白と杜甫も登場します。(第1巻は未読)

なんせ「漢詩」の本なので、たくさんの詩が紹介されます。ほとんどが未知。名前を知ってる詩人はほとんどいない。なんでこんな本を借り出したんだろ。

結論。

こうやってまとめて読んでもたいして感動はないもんですね。たとえばちょっと古いですが曹操だったら有名な歩出夏門行とか、なんかの拍子に一編だけ読んだほうが実は味がある。詩とか歌とか、一時にたくさん読むのはあんまりよくないようです。

もう一つ。本題とは外れますが、この頃の詩人は当然ながら知識階級です。天下国家の経営に野心を持っている。勉強一筋で試験を受けて、うまくいけば高官宰相。みんなお金持ちの育ちです。

したがって世をすねて旅してる詩人とか、実は派手な大名旅行であることも珍しくない。豊かな人なら、たぶん50人100人のお供を連れての遊山です。そういう権力者崩れが木々を愛でたり魚を釣ったりして、夜は芸妓をよんで大騒ぎしながら詩作を紹介する。そんなケースが多々らしい。

なるほどね。もちろん貧乏な詩人もいたでしょうけど、そもそも貧乏な知識階級という存在が希少価値。ふうつは豊かです。ただ、思ったようには出世できない・・という失望感だけは抱いている。その失望感が詩作の原動力になる。食うや喰わずじゃ詩は作れません。

★★★ 文藝春秋

edowamoete.jpg「幕末気分」の野口武彦さんの本。なんで「さん」なのか判然としないが、なんとなく付けたくなる作家っているものです。

わりあい真面目に書かれています。真面目という表現も変かな。力を入れて書いてるというべきかも。

とりあげた人物は7人。清河八郎、伴林光平、孝明天皇、山内容堂、相楽総三、小栗上野介、勝海舟。だいたい何をした人かわかるんですが、伴林光平は初見。

伴林光平。天誅組に加わった国学者・歌人らしいです。いい歳こいてから吉野へ駆け参じて、なんせ根が詩人なもんで人がよくて動き方が不器用で、つい逃げ遅れて処刑された。

このときさっさと上手に逃げた連中の中には明治の世で出世した奴もいます。世の中、要領ですね

あと相楽総三。三田薩摩藩邸の浪士連中が暴れたときの首領株で、そのあとは赤報隊。いわば官軍東征の先鋒です。中山道を下っているうちに偽軍ということで処刑された。真相は不明ですが、年貢半減とか免除とか、(上層部の指令ではあったんですが)あんまり宣伝しすぎたんで、怖くなった新政府に責任とらされて殺された。その程度しか知らなかったので、なかなか面白かったです。

誰だったかな、海音寺潮五郎じゃなくてもっと古い作家、えーと確か江戸っ子で、お祖父さんかなんかが彰義隊だった人。当然、江戸びいきです。その作家の短編の中で、清水次郎長の敵役として有名な黒駒勝蔵(たぶん)のエピソードがあったと思います。

問題おこして暫く姿をくらましてたと思ったら、いつの間にか要領よく官軍に潜り込んで、それが赤報隊。沿道から威風堂々と行進してくるのを見上げたら、あれ、あの偉そうなのは黒駒のじゃねえか、なんであいつが・・と驚愕したという話。実際、この赤報隊、やくざもんがたくさん加わってたらしいです。それが官軍の威を借りてけっこう悪いこともした。それも相楽総三処刑の理由のひとつ。

海音寺潮五郎じゃなし、池波正太郎も違う、小島政二郎も雰囲気が異なるし、村上元三でもないような気が・・・・・・・うーん、そうか、子母澤寛だった、ようやく思い出した。

別件ですが、こうした侠客の評判の善し悪しはかなり恣意的ですよね。天保水滸伝では笹川繁蔵が良いもんで、平手造酒は悲劇の人。比してライバルの飯岡助五郎は大悪人です。でも助五郎の地元である千葉県の飯岡町へあたりでは、地元の発展につくした英雄でした。観光案内にもしっかり明記されてます。もちろん笹川繁蔵の評判はクソミソ。ははは。

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