「小説集 黒田官兵衛」 末国善己編

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★★ 作品社

kurodakanbei.jpg新しい本のようです。来年の大河ドラマを意識した出版なのかな。

中身は官兵衛を扱った中編・短編を集めたもの。作者は菊池寛、鷲尾雨工、坂口安吾、海音寺潮五郎、武者小路実篤、池波正太郎。他にもいたかもしれません。

鷲尾雨工は知りませんでしたが、戦後すぐまで活躍した人で直木賞作家みたいです。この人の黒田官兵衛がいちばんボリュームあって、ただし要するに講談本。昔は講談本ってのがあったんです。猿飛佐助とか後藤又兵衛とか、人気ありそうな英雄豪傑を扱った俗本。半分落語ですね。子供にも読みやすいので、小学生のころはせっせと貸本屋から借り出して読んでました。

海音寺潮五郎のは官兵衛(如水)が国内の反抗勢力である城井鎮房を謀殺した事件。ただし、内容は史実とは別でかなり面白おかしく書かれている。だいたい海音寺さんってのは、かなり嘘八百を平気で書いた。もっともらしいけど、あの人の小説を史実と思ってはいけないらしいです。

中では坂口安吾の「二流の人」がやはりいちばん楽しかったですね。官兵衛をしょせんは二流の英雄と断じるもので、半分評論みたいな感じです。とにかく好き勝手に評価して、縦横無尽に書いている。その断定する文章に勢いがある。不思議な魅力です。