「イリアム」 ダン・シモンズ

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★★★ 早川書房

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再読です。地球や火星を舞台にした疑似トロイ戦争ですか。ま、ダン・シモンズですから馬鹿馬鹿しく風呂敷を拡げた設定で、大活劇です。

で、お決まり、シェイクスピア愛とかプルースト愛があって、代表作(かな)のハイペリオン・シリーズではキーツ愛でしたね。さらにフランク・ロイド・ライト(建築家)にも愛をそそいでいた。

余計なことですが、そのハイペリオン・シリーズでは、超光速旅行のアイディアは秀逸だった。船の乗客はものすごいGに耐えられず潰れて必ず死んでしまうんですが、その細胞片から目的地でまた再生される。超光速の旅=死の苦しみと再生。何回もやっていると、精神的におかしくなる。すごいこと思いついたもんです。

で、戻ると、なぜ「イリアム」を再読したか。実はオリュンポスの神々のサイズを確認したかった。ちょっと前に書きましたが、ホメーロスの描く神々はいろんなサイズに相を変えたらしい。大きくなったケースとしては傷ついた超巨大な軍神アレースがどてーーーーーんと倒れたり。しかし通常の場合は8フィート程度とダン・シモンズは描写していました。2メートル半か。ときどきは12フィート程度にもなる。

ちなみに(前にも書きましたが)土井晩翆訳のイーリアスでは「武のアレースの、頸打ち四肢を弛ましむ。七ペレトラの地をおほひ・・・」というような訳になっています。新しい呉茂一訳のイーリアスでは「三町」。一町は60間、だいたい110メートル程度でしょう。面積単位では3000坪だそうです。実際に300メートル超の神が倒れたら、そりゃみんな迷惑します。倒れかかってから横になるまでもスローモーションみたいで、けっこう時間がかかるんでしょうね。大地震。

厚さ4センチを読み終えて、かなりウンザリしてますが、年末年始、たぶん時間もあるので続編の「オリュンポス」(こっちは上下巻) にも手をだす予定です。

話は違いますが、昔、時々上映されていた古代もののイタリア映画に登場の神々はみんなチープでした。洞窟かなんかの中で彩色の霧がかかってそこから重々しく登場する。ただし俳優はみんな現代人なんで、どうみても好色アントーニオとか粋がりカルロにしか見えない。女神ならモニカとかソフィアとか。

たいていはストーリーも下手くそで、面白くない映画がほとんどでしたね。蛇の足。