天邪鬼と鬼と二郎真君

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天邪鬼の話なんか書いたせいか、子供の頃を思い出しました。

子供はオトナの言うことを聞きません。逆らいたくなる。イヤダ!と駄々をこねる。

「アマンジャク」と祖母はよく言いました。天邪鬼。「あまのじゃく」ではなくアマンジャクと撥音になったような気がする。醜くて小さな子鬼のような奴ですね。たいてい四天王とか仁王さんとか筋骨隆々に踏みつけられている。悪さをしなければいいのに、衝動を抑えきれないんだろうな。ちょっと悪事をすると、すぐ正義の味方の神将(だろうな、きっと)にとっ捕まって折檻される。可哀相に。

神将といえば、先日読んだ「神なるオオカ」の中に二郎という半分オオカミみたいな犬が登場します。二郎真君の二郎。二郎真君は、たしか孫悟空と秘術をつくして戦う凛々しい神将で、調べたらいつも神犬を連れているんだそうです。名前が覚えやすいので、なんとなく記憶していました。中国でも有名な部類の神将らしいです。川に関係する神様。誰かの次男だったんでしょうね。

話がそれた。駄々こねとは違いますが、なんせ昔の子供なんで、そもそもが汚い。爪が伸びると祖母の目がひかる。「オニのような爪」が口癖でした。鬼は虎の皮の褌しめて鉄の棒もって爪が長いんですね、きっと。天邪鬼も黒くて長い爪だったらしい。悪いやつはみんな爪が長い。きちんと爪を手入れした悪人じゃイメージがわかないからでしょう。ついでに腕は毛むくじゃら。

伸びた爪は小さな握り鋏で切ります。力が入れにくくて、パチンパチンと爪が飛ぶ。紙を敷いた記憶もないから、縁側で切っていたのかな。

子供はみんな丸坊主が普通でした。ちょっと伸びると「浮浪児みたいだ」と難詰されます。浮浪児ってのは、上野あたりに群れていた戦災孤児集団ですね。戦後まだ日が浅い。まだ伸びてないもん、と抵抗したって無駄です。母親にしろ祖母にしろ、女性は子供の髪が短いのを好む。なぜでしょうかね。で、浮浪児のなりかかりは硬貨を握らされて、仕方なく表通りの床屋へいく。

バリカンで可能な限り短く刈る。可能な限りといっても、たぶん五厘刈り。子供としてはオトナっぽく二分刈りとかなんかにしたい気分なんですが、絶対に許してはもらえないです。必ず五厘刈り。刈ったあとはツルツルと頭が青光りします。それをみると女性連中は満足げに笑う。

だからどう、という話でもありませんが、ふと思い出しました。いつ頃までだろう、祖母の隣に布団を敷いて、背中越しにしなびた乳房をまさぐっていたような記憶もある。婆さまはたいていお地蔵さんのように静かに寝ていました。