「熱砂とまぼろし シルクロード列伝」陳舜臣

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★★ たちばな出版
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西域ものです。登場するのは4世紀の僧 法顕、6世紀の宋雲、前漢の張騫、そしてヘディン、19世紀のヤクブ・ベクという地方反乱の首謀者。

このうちなんとなく知識があったのは張騫とヘディンくらいですね。法顕は名前に聞き覚えがある程度。宋雲はよう知らん。ヤクブ・ベク? なんじゃそれは。

知っているといってもヘディンは例のさまよえる湖ロプノールだけです。誰の本だったか。井上靖かな。豪腕の探検家という印象でしたが、実際には探検している時間より中国の官憲と折衝したり金を集めたりしている時間のほうが長かった。ま、そういうものでしょう。張騫も匈奴の捕虜になってダラダラ暮らしている時間のほうが長かったようだし、みんな信じられないくらい辛抱強い。

西域といえば求法の僧たちですが、それにしてもなぜ彼らはいつも西回りで何年もかけて行ったんでしょう。これは少年時代からの疑問でした。南回りとか、船に乗ればもっと近いんじゃないだろうか。

たとえば西遊記の一行、苦労して魔物たちと戦いながらついに天竺へ到達したわけですが、いざ到達してしまうとあとがイージーすぎる。えーと、孫悟空たちはたしか膨大な教典をプレゼントしてもらって、観音様の雲にのってヒューッと帰国。しかしこの本によると法顕は南回りの船で帰っている(ちなみに玄奘三蔵はまた陸路で帰国したようです)。

もうひとつ。求法僧たちは道中たいてい酷い目にあって、必死の思いでインドに入ります。どう考えても多量の金銀を持っていたとは思えない。それなのにインドに入ってから苦労したという話を聞かない。たいてい歓迎されて、多量の教典得てスムーズに帰国している。不思議だなあ。ヨレヨレになった汚い外国人一行がインド北部あたりの村にたどりついて、そこから簡単に有名寺院に迎え入れられたり王に会えたというのがわからない。

不思議です。