2019年5月アーカイブ

先日の新聞。「象の群に蜂の大群が遭遇しました」という例文が載っていた。何かの子供むけ教材の話で、たぶん「象」と「大群」という単語を覚えさせようという趣旨だったと思う。

それにしても奇妙なテキストを使ったものです。「象の群蜂の大群遭遇しました」ならスッキリしているし「象の群に蜜蜂マーヤは遭遇しました」でもいい。「象の群」に「蜂の大群」が遭遇するという言葉の意味がわからない。

こうしたイミフの文章、最近は非常に多いです。民放はもちろんNHKも安心できません。新聞でも時折みかけます。こういうことを書くと「だから昭和のジジイは・・・」とか言われるんだろうなあ。

そうそう。ここ数年のテレビ。訳のわからないインチキ敬語の氾濫、かんにんしてほしい。アナウンサーでもまったく安心できない。「犯人の方が歩いて来られました」程度で驚いてはいられない最近です。

話は違うけど、金融庁が「老後は自助努力で」みたいなことを言ってたようですね。年金だけじゃ生きていけない。投資を考えろ。正直です。

虚構新聞がさっそく「自助で寿命取り崩しを。国が『人生70年』指針案」という記事をあげていました。年金制度の限界を認めたうえで、国民に対して「政府に頼らない自助」を呼びかけたという内容です。はい。資金が底をつく70代のうちに人生に幕をおろす=自助 ですね。

虚構新聞については勝手にGoogleで調べてください。昔から存在するかなり質の高いウソ新聞です。

大昔、まだ子供が幼かったころ、上野の東京国立博物館に行ったことがあります。どこかの大きな部屋には四天王の立像が飾られていた。中心にも誰か座っていたのかもしれませんが、やはり見どころは迫力のある四天王。素晴らしいですね。

そしたら何かの拍子に子供が「四天王って誰と誰?」と聞く。えーと、正確には誰だったっけ。たしか毘沙門天と、増長天と、それから・・・とモゴモゴ言っていたら、展示室の薄暗闇の向こうからスルスルッと紳士が駆け寄ってきた。で、子供の前にサッとしゃがんで片膝ついて「お嬢ちゃん、四天王は持増広多。「じぞうこうた」って覚えるといいよ」

で、またサッと小走りに去って行った。根拠はないですがたとえば富山県氷見市、秋田県大曲市でもいいんだけど、市立七中の地歴教師で、趣味は郷土史。ま、そんな印象です。そんなに大きくは違っていないんじゃないかな。たぶん親が不正確なことをいうのに耐えきれなかった。つい差し出がましく・・・。

でもこれでしっかり覚えました。地蔵買うた。持国天、増長天、広目天、多聞天。最後の多聞天が別名毘沙門天です。ついでですが、毘沙門天の奥さんが吉祥天だそうな。確定ではないけど(妹という説もある)、ま、そんな感じ。

追記。さらに続きがあって、吉祥天は鬼子母神の娘だそうです。ひぇー。

河出書房新社★★★
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河出の「大岡昇平」にて。短い「俘虜記」なんかを先に読んでしまって、そもそもの目的である「武蔵野夫人」はじっくりとりかかりました。正直、途中で止めようかと思ったけどようやく読了。

なるほど。そういう小説でしたか。なんといいますか、よろめき小説・姦通小説ともいえるし、心理小説でもある。作家が神の立場で、二組の夫婦と若い復員兵の心の動きをことこまかに説明するスタイル。いちおう悲劇的な結末ではあるんですが、あんまり深刻感はないです。

なんといっても大岡昇平ですから、武蔵野の「はけ」の地形描写が細かい。こっちが中心みたいな印象ですね。中央線の武蔵小金井から国分寺のあたり、線路の南側に野川という細かな流れがあって、その北と南ではガクンと標高がかわる。崖の連続です。いわゆる国分寺崖線。斜面からは所々で清冽な水が湧き出る。こういうところに広い敷地の家があり、主人公たちが住んでいる。

なかなか面白い小説でした。でもこういう本が当時のベストセラーになったというのは「はてな?」ですね。姦通ものではあるけど、まったく生々しくはない。抑制されていて品がある。ただし現代の感覚からすると、かなり七面倒くさい小説です。

そうそう。後半に二人が村山貯水池へ行き、台風にあってホテルに泊まるシーンがある。たぶん下の写真のことだと思うのですが、丸い屋根の取水塔の話があります。嬉しくなったので掲載します。

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河出書房新社★★★
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池澤夏樹個人編集の全集の一冊。

そもそも「武蔵野夫人」を読むために借りたんですが、比較的長いそっちはまだ時間がかかりそうなので、とりあえず手軽な後半部分だけ。後半は「俘虜記」「一寸法師後日譚」「黒髪」などです。

「俘虜記」というのは、いわば合本で「捉まるまで」「サンホセ野戦病院」「労働」などなど一連の短編の総称らしいです。知らんかった。フィリピン・ミンドロ島で俘虜になり、レイテ島に運ばれて収容所で暮らす。たしか「野火」というのもあって、こっちは昔に読んだような記憶あり。

で、その「俘虜記」。やはりいいですね。マラリアで死にかけている落後兵の前に、ひょこっとあらわれた若い米兵。撃つかどうか。右手は無意識に撃鉄を上げて()いたけど、だからといって殺す強い意志もない。撃ってもいいし、撃たなくてもいいし。ただしこの短編も大昔に読んだような気がする。何十年前ですか。完全に忘れています。

野戦病院とか収容所の記録もなかなかいいですね。ただしこれらをつい「実記」と思いたくなりますが、そうとは限りません。いかにも記録ふうの小説なのかもしれない。大岡昇平というのは、かなりクセの強い人の印象で、一筋縄ではいかない。ただしレイテ戦記」だけはさすがに小説とはいえないだろうなあ。

一寸法師後日譚」はそこそここ気の利いたおとぎ話。太宰の「御伽草子」にも似ていますね。「黒髪」は流れ流れる女の半生記。花柳小説とかいう分類らしいですが、それには少し違和感。坦々と書かれているようなのに余韻のある小編です。

(注) 撃鉄だったか遊底だったか、上げたか引いたか、このへんの記述は記憶が不正確。どうだったっけ。銃のことはよく知らない。

確認。「銃の安全装置をはずす」という表記でした。



新潮社★★★
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結果的に2巻をスキップして3巻に行ってしまった。はい、1巻はギリシャ民主政のはじまり。2巻はペリクレスのアテネとペロポネソス戦争かな。てっきり読んだような気がしてたんですが・・。

で、3巻は当然のことながらアレクサンドロスです。

スパルタってのはアテネに勝ったものの基本的に外交が素人感覚(毎年クジで5人の首脳を決めて合議)。ぐずぐずやってるうちに力をつけてきたテーベが巧妙な戦術でスパルタを破り、でも基礎体力不足(とくに人口)の小規模ポリスのためギリシャをまとめきる力がない。そしてはるか北の僻地から勃興したのがマケドニア。べらぼうに長い長槍をかかげた新陣形で勝ちまくる。ファランクスってのはマケドニアの言い方だったんですね。他のポリスでは「ホプリーテス」と称していた。

ファランクスの槍はあまりに長すぎて、そのままの形では持ち運びが無理。ふだんは2本に分けて運び、使用の際は中央をジョイントでつないだ。当然ながら重量もすごいので片腕では持てない。楯に通した左腕と自由な右手の2本で支えたらしい。へぇ・・・という新知識です。

そしてマケドニアは若い国王フィリッポスの指導の下、南下してギリシャのポリス連合軍を撃破するんんですが、その初陣から大活躍したのが息子のアレクサンドロス。18歳で最左翼の騎兵(予備)をまかされて「勝手に動くな」と厳命されていたのに、勝手に動いた。しかも勝手に動いて大成功してしまった。このアレクサンドロス、いつも勝手に動くんです。大人の言うことをきかない。叱ると気心しれた仲間をつれてプイッと家出してしまう。何回も。

やがてフィリッポスは暗殺される。この暗殺に息子のアレクサンドロスは関与していなかったようで、たぶん無実。しかし没後に膨大な借金が判明したりして、あとをついだアレクサンドロスも内情はなかなか大変だったらしい。

ま、それやこれや、父フィリッポスの方針を引き継いで対ペルシャ戦争開始。天才だったんでしょうね。騎兵を実に上手に運用した。おまけに運もべらぼうに良くて、大きな会戦を次々と大勝利。勝因の半分くらいはペルシャ王ダリウス(ダレイオス3世)がだらしなさすぎた気配もある。ダレイオス、まだ完全に負けたわけでもないのにすぐ逃げる癖があったらしい。王様が逃げると他の兵士も将軍もいっせいに逃げる。逃げると追い打ちくらうし、踏みつぶしやら将棋倒しやら。

大学の運動部のノリ」という趣旨のことを塩野さんも書いています。若いアレクサンドロスとその仲間たち。いけいけドンドン、常識外れのスピード重視で戦って連覇。しかしインダス川のほとりでついに部下たちが「もう帰ろう」と言い出す。このへんが限度だった。

アレクサンドロスが病に倒れてからは、なんとなく主立った将軍たちがそれぞれ独立したと思っていましたが、そうでもなかったようですね。後継者戦争(ディアドコイ戦争)は実に40年ほど続いた。最終的に残ったのがエジプト(プトレマイオス朝)とシリア(セレウコス朝)かな。塩野さんによるとこれはアレクサンドロス王国の「分裂」ではなく「分割」だそうで、それに共通するギリシャ・アジア混合文化が「ヘレニズム」。後の世に大きな影響を及ぼした。

ようするにアレクサンドロスって、あんまり資料がないようです。塩野さんはアレクサンドロスを愛しているようだし、これが最後の歴史長編として力もいれたようですが、その割りには与える感動が薄い印象。アレクサンドロスにあまり人間の匂いがしない。はい。これまでアレクサンドロスをテーマにした本、いろいろ読んできましたが、正直「これは良かった」というものにあったことがない。難しいんだろうな。

あとさきになってしまいましたが、次は巻2を探さないといけない。民主制の仮面をかぶった独裁によって大成功したアテネの話です。けっこう面白そう。


10連休の、わざわざ雨の日を選んで(そんなつもりじゃなかった・・・結果論)東京あきる野市の「黒茶屋」へ。築250年の古い庄屋屋敷とかで、眼下に秋川。これ「あきかわ」と思っていましたが「あきがわ」が正しいらしい。正しいというより、こういう修正例、最近はあちこちで見かけます。

炭火を使った料理がメインのようでした。魚や肉もいいですが、山菜のたぐいがおいしいです。山里料理。地酒(喜正)は、ちょっと甘め。また秋にでも再訪したい場所でした。は5つあげたい。

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光文社★★★
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荻原浩にしては珍しく主人公は破壊力抜群の暴力団員。組がどんどん合理化・会社化・スマート化していくなかで、本人は旧タイプの粗暴派でおまけに酒浸り。衝動を抑えきれず、ついつい暴力をふるってしまう(しかも常にやりすぎ)。

読むにつれ時代背景もあきらかになってきます。どうやら二度目の原発事故があったらしい。テロリストに乗っ取られた航空機が原発に激突。日本はダメになりかかっている。よせばいいのに海外派遣の自衛隊はまた「武力衝突」してしまったらしい。暗い。

で若頭の指令で病院へ通う。タテマエはアルコール依存症治療なんだけど、はて、謎がある。実際には・・・・というのがストーリーです。

医師の診断では、主人公はどうやら「反社会性パーソナリティ障害」というものらしい。他人の気持ちがわからない。罪悪感がない。とりわけ「恐怖」という感覚がない。だから徹底的な暴力を躊躇なくふるえる。何をやっても怖くない。

病院で妙に明るい幼い少女とも知り合います。こっちはウィリアムズ症候群。主人公のちょうど正反対なのかな。楽観的すぎる。相手を信頼しすぎる。ようするにすごく「いい子」なんでしょうね。ただし心だけでなく肉体的にもいろいろ障害が出てくる。

こうして主人公は(治療のすえ)だんだん症状が緩和。人間らしくなってくる。相手の気持ちがわかってくる。そして生まれた幼い少女との新しい関係。そして・・・。

最終的にあきらかになる「巨大な陰謀」とかは、あまり面白くないですが、話がすすむにつれて、困ったタイプの暴力団員なのにだんだん共感が生まれてくる。このへんが不思議ですね。

そうそう。海馬はもちろん「かいば」と読みます。脳の奥深く、タツノオトシゴみたいな部分ですね。


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