令和元年版 怪談牡丹灯籠

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ちょっと前、NHKのBSでやっていた「令和元年版 怪談牡丹灯籠」、ようやくビデオを見終えました。4週もの。なかなかよかったです。

牡丹灯籠といえば日本では三遊亭円朝ですが、このNHKドラマはかなり忠実になぞっている様子でした。もっとも当方、円朝の速記本の中身なんてほどんど覚えていない。ただただ人が死ぬだけ。因果因縁ですね。おぼろですが、代表作といわれる真景累ヶ淵なんか、もううんざりするくらい死ぬ。読みおえると反吐はきたくなる

それはともかく。怪談牡丹灯籠の萩原新三郎は七之助。悪くはないけど、素顔のドラマやると七之助って、決して美男子ではない。ちょっと馬顔で、マヌケな浪人にしかみえない。こんなこと書くと危ないかな。怖い々々。

で、お露は上白石姉妹のどっちか。けっこう愛嬌顔なんで、うーん、正直、あんまり怖くない。新三郎を裏切ってお札を剥がす役の伴蔵はよかったですね。達者だなあと思ってましたが、とちゅうで段田安則だと気がついて納得。

で、気になったのが一本気な若侍(徒士? 近習?)が婚約者からプレゼントされた刀の下緒(さげお)。下緒ってのは鞘に巻いたけっこう長い紐で、このての武家ものにはよく登場する小道具ですが、そもそもこれは何に使うものなのか。若侍は決闘で刀を抜く際、まずゆるゆると下緒を解いていましたが・・・。

調べてみると、いろいろ便利に使ったもののようです。特に実際的な戦国期、かなり長い尺がふつうで、鞘を固定したりタスキにも使ったり、場合によっては単なる紐としても使ったのかな。泰平の世では、ほとんど意味はなく、もっぱら装飾だったらしいです。

もうひとつ。ドラマの最後の最後あたり。柄本佑の放蕩侍が決闘の際「オレは居合が得意なんだ」と称して、例の居合の構えをする。左足だか右足だか、片方をずいぶん前に踏み出して構えていました。居合ではなく立合ですね。あれが正式がどうか知りませんが、いろいろ流儀はあるんでしょうから、ま、そうなんでしょう。このドラマ、なんせ原作が円朝だし、細かい部分はおそらく間違っていないはず。

で、意外だったのは、初撃を外された柄本佑、悪びれず、抜いたばかりの刀をそろそろそろッとまた鞘に収めた。もとに戻った。しかも何回も何回もやった。あれは不思議だったです。

ものの本には、居合というのは初撃に威力がある。いったん抜かせたらあとは屁みたいなの・・とか、よく書かれています。その理屈からすると、初撃を外された柄本佑はもう終わりなんですが、なぜか相手の若侍は柄本佑が鞘におさめるのを黙って眺めている。あれはなんだったんだなろ。

知らないことが多くて勉強になりました。

こういう良質ドラマをつくれるNHKが、なんで大河はあんな悲惨なことになってしまうのか。ひょっとして担当が違うのかな。ドラマ部門とは別に「大河チーム」なんてのがあって、日頃から役立たずがブイブイえばってるとか。

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  「(たぶんなんかのドラマか映画で)帯留を下緒として使っていた!」という書き込みを見た記憶あり。たしかに似てます。明治の廃刀令のあとは、実際に下緒の紐を帯留に転用した例もあるらしい。