NHKスペシャル「食の起源」

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小学生のころによんだジャングルブック。あとになってラドヤード・キプリングというまっとうな(らしい)作家が書いたと知りましたが、なんせ無知な田舎の子供です、なんか変な本だなあというのが当時の実感でした。

まず、ライオンが登場しない。これはすごく変です。クリを使わないモンブランか、砂糖を入れない羊羹みたい。キリンもいない。カバもいなかった、たぶん。この本を書いた人、アフリカをよく知らないのかなあ・・と案じたものです。

ま、それはともかく。主人公のモーグリ(だったかな)がこっそり人間の村へいくと、連中は奇妙な棒を武器にしている。すこぶる軽いのに、硬い。殴るとすごい衝撃。つまり、竹ですね。ん? アフリカに竹があったのか。ついでに、これが真の記憶かどうか自信ないんですが、モーグリは村人たちの食い物を試す。ゲゲゲッ、なんという味だ。塩がきつすぎる。このニンゲンたちは酷い味のものを食べてるんだなあ。

ほんとうにジャングルブックだったかなあ。でも他に思い当たらない。

ま、要するにジャングルで暮らしているモーグリたちは塩なんて必要ない。十分おいしく果物食べたり肉を食べたり。ん? 肉食べたっけか。肉とすると、誰の肉だろう。モーグリは弱小動物を殺して食べたのか。

ふと思い出しましたが、少年ケニヤというのもあった。山川惣治だったか南洋一郎だったか。たしか名前はワタル。ジャングルで親とはぐれた日本の少年。なぜか菊一文字の短刀を持っている。これが大蛇と友人になったりマサイ族の長槍を武器にしたり。このワタルが塩なしの食事をしていたのかもしれないけど、うーん、違うような・・・。

前置きが長すぎますね。あっ、モーグリの件は、もちろん舞台がインドだからです。キプリングは英国人だけどボンベイ生まれでした。いまのムンバイ。だから悪役に巨大なトラが出てくる。たぶんベンガル虎。

で、まあ何が言いたいかかというと、先日のNHKのシリーズ「食の起源」。題目が「塩」。これは面白かったです。マサイ族に塩をなめさせると、みんな毒でも食わされたように口をゆがめて吐き出す。なんだ、これは、毒か。

関係なくまた思い出したけど、大昔に本多勝一がニューギニアの原始的な山地住民に食塩をなめさせたら、連中もゲッと吐き出した。ふだんは塩分のついた草を焼いてつくる製法で、もっとマイルドな(雑味の多い)グレー塩(藻塩)をつかっているらしい。だから急に純な塩化ナトリウムなんか口にすると、刺激が強すぎて舌が痛い。

しかし塩を拒否するマサイ族、どうやって塩分を体内にとりいれているのか。実は朝晩、乳をしぼってのんでいるんだそうです。だいたい2リットルとかいうておりました。で、乳をしぼられる羊とか牛とかは、時々塩味の土をなめて塩分補給して、だからその乳にも微量の塩分がある。2リットルで平均2グラムといっていたかな。少ない。でも、でもこれで十分。

とすると1日8グラムとか10グラムの塩なんて、かなり多すぎるわけです。しかし「塩」は一種の麻薬なんですね。ひとつまみの塩をふりかけると、たちまち美味しくなる。美味しいからどんどん使う。使うから量が増えてくる。

その仕組み。なかなか面白かったんですが、そもそもン億年前、生物は海中で暮らしたわけですから、周囲の塩分を最大限に利用するような体の仕組みをつくっていた。何をするにも(いちばんありふれた)ナトリウムを活用する。それはよかったんですが、次に生物が地上に上がるという大革命をなしとげたとき、この便利な塩分が手にはいらなくなった。

要するに急に塩分がすごい貴重品になった。で、陸棲動物は必死に体内センサー大改造。ほんの微量の塩分でも捜し当てて、逃さず取り入れるような仕組みを作り上げた。「塩=貴重品」です。チャンスがあったら逃さず摂取する。

こう考えると「塩はおいしい」という感覚は正常なわけですね。間違ってはいない。

ここでもう一段。人間は果物、野菜、穀物も食べるようになった。食料の選択肢が一気にふえるわけで、すごい大変革。ところがその代償として、カリウムの摂取量が増えた。よく知りませんが、バナナとか、里芋とか、カリウムが多いとかなり有害らしいです。

で、このカリウムとナトリウムの関係がややこしい。人体はナトリウムが欲しい。カリウムは排出したい。で、カリウムとナトリウムがくっつくと、いっしょに体外へ出ていってくれる。で、カリウムをどんどん捨てると、ナトリウムが足りなくなる。だからナトリウムをもっともっと欲しい。

なるほど。理に適っている。ナトリウムを「良いもの」と感じ、もっとナトリウムを」と思うのは正しいんですね。で、つい度をすごしてしまう。血中塩分が増え、水分がナントカして血圧がどうとかで血管を損傷する・・(といわれています)

だから、つい油断するとナトリウムのとりすぎ。なるほど・・と感心しました。NHKのこのての科学もの、非常に良質な番組をつくります。番組の舞台まわし補助で出ていたトキオの連中もあんまり出しゃばらず、わりあい好感度アップ。これも珍しいです。(肺魚とかイグアナみたいな役で顔演技をしていた松岡、よかったです)