「遅咲きの男」莫言

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 中央公論新社★★★
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去年の6月刊行らしいです。短編集。ほとんどがノーベル賞受賞後の作品ですね。

受賞は2012年ですか。もう10年もたった。当座は文芸家協会の副会長とか、権威に媚びた作家だとか、いろいろ言われていました。これは正確には「中国作家協会」「14名の副主席の一人」ということです。

14分の1なら、敢えて断ってカドたてるようなもんじゃなし。黙って出された饅頭をいただきましょう。そういう姿勢が莫言のスタイルなんだと思います。

ま、いずれにしても、当時は中国内でもかなりいろいろ言われたらしい。改革開放後に特有のそうした風潮を訳者の吉田富夫さんは「眼紅病」と紹介しています。目が血走って赤い。要するにヤッカミ。

そのためか掲載の短編、村の嫌われ者とか、厭味な男とか、疫病神みたいな女とかの話が多いです。みーんな思いっきりゆがんでいる。改革開放前の農民が正直でまっすぐだったとは死んでも言わないでしょうが、少なくとも良くなったともいいがたい。

表紙の絵は、たぶん大きなスッポンです。かみついたら雷が鳴るまで放さない。