「騎士団長殺し」村上春樹

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kishidanchou12.jpg新潮社★★★

これ、いつの刊行だっけ。えーと、2017年ですか。第1部「顕れるイデア編」第2部「遷ろうメタファー編」。これまで何人が手にとったのか、少し綴じのゆるみかかった上下が図書館にあったので借り出し。

ストーリーそのものを紹介しちゃいけないし、じゃ、何を書けばいいんだということになりますね。でもハルキの小説って、そもそも粗筋に意味があるのか

ということで、この本。うーん、ハルキを読むのが久しぶりのせいか、よくまあ好き勝手・・・という印象です。はい。小説なんだから好き勝手で何が悪い。書きたいことを野放図に書きまくり。耳の印象的な少女に、完璧なセックス。長い小便。もちろん謎めいた井戸。ローストビーフのサンドイッチとサラダとブラックコーヒー。

そうそう。クルマの話って前からあったっけか。ジャガーにプリウスにボルボになんたらとか。ただし今回の音楽はジャズではなくクラシック。で、そもそも小説の重要テーマがモーツァルトのドン・ジョヴァンニです。つまり騎士団長ってのは、ドン・ジョヴァンニに夕食の招待をうけた石像ですわな。お礼にジョヴァンニを地獄に連れて行く。

しかし疑問。「騎士団長」といえば、ふつうはテンプル騎士団とかヨハネ騎士団なんかの団長でしょう()。いわば武闘派の修道会のトップ。では、なぜ貞節を誓った騎士に娘がいるんだろ。子供の頃に読んだウォルター・スコットのアイヴァンホー、その重要な筋のひとつが、騎士団の幹部の恋でした。よりによってユダヤの美女に恋してしまう。女を選ぶか、信仰を守るか。両方を適当に・・とはいかないらしい。真剣なんです。

ま、そんなことはともかく。今回の小説では独身暮らしの主人公が家でご飯をつくったりします。ブリの粕漬け、漬物、胡瓜とワカメの酢の物、大根と油揚げの味噌汁。和食って非常に珍しいですね。びっくりです。そもそも家に米の買い置きや漬物や炊飯器があったとは。炊飯器はタイガーだったのか象印だったのか。

 

モーツァルトのは一般に「騎士長」とかいう表記が多いですね。これなら俗世の騎士の感じが少しするし、娘がいて当然か。でもやっぱ小説としては「騎士団長」のほうが、響きがいいんでしょう。