北大の長谷川英祐準教授

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偶然チャンネルをまわしたBSフジのニュース番組、プライムニュース。司会のオッサンは下向いて恥ずかしそうに話すクセの人で、だいぶ前から馴染みです。(なんと報道局解説委員長だったらしい)

ま、フジにしては鋭く(というほどでもないか)多少は切り込んだ解説もする番組だと思っていますが、たまたまこの日はゲストが秀逸だった。北大の長谷川英祐という人。若くはないようですが肩書は準教授。長袖の上に半袖、ポニーテールの長髪。ただし発言は落ち着いていて、非常に論理的です。

えーと、後で調べたんですがこの日のテーマは『2050年に1億人割れか 生物学で考える人口減 少子化対策なぜ空転?』だった。なるほど。長谷川センセイは動物生態学が専門。勤勉と思われている働きアリに、実は一定の比率でサボっている連中がいるという研究です。なんかそれ、前に聞いたことがあります。

意外なことに、勤勉なアリだけ集めた集団にしてもやっぱりサボるアリが出てくる。逆になまけ連中だけにすると、一定の比率は急に勤勉になったりする。つまりどんなときでも、一定の割合の集団はなまけているんだということ。こうした仕組みの社会が実は効率がいいのかもしれない。全員が熱烈作業では続かない。もちろん全員がなまけたら滅亡する。実に面白いです。

で、話はそれではなくて、このセンセイの考える人口減の将来、少子化対策ですね。実に明確なんです。理系ふうで非常に冷徹。このまま進めていったら日本は消える。ま、人口グラフを見たら誰だってそういう結論になるんですが。なぜか政府とか自民、マスコミも国民もあんまり真剣に考えない。辛い現実を見ないように目をそむけ続けてきた。

ふだんは落ち着いたふうの司会者、今回はけっこう焦ったように見えました。なんせライブ放送の番組なのに、たぶん予想とは違う展開になったんでしょうね。甘かった。長谷川センセイの主張を認めると、将来にまったく救いがないことになる。いや、本当はまだあるんですが、そのためには非常に大きな方向転換、政治的決断をしないといけない。微修正程度ではまったく不可能。政府の責任。マスコミの責任。国民の責任。できるもんか。

個人的な感想としては、もうここから人口増への転換は無理でしょう。本当は秋の暮れのような、穏やかで暮らしやすい中級国家を目指すというのが賢明な気もするんですが。はて、そういう「決断」ができるかどうか。

センセイ、自分の言っていることがキツイのは承知のようでした。「これを言うと叩かれるんですが・・」と前置きして発言することが多かった。でもこのままボーッとして過ごしていたら日本が消えるのは当然。
では昔の女性はなぜたくさん子供を産めた? はい、社会がそういう作りで、専業主婦だったからです。若くから産みはじめることを要請され、産んでからも家族ぐるみ、爺さん婆さんも総動員で育てた。だからたくさん産めた。育てられた。

なるほど。就職しろ。働きながら子供を産め、ひとりで(あるいは夫と共同で、家族で)育てろ。たくさん産め。これは無理ですね。実態と乖離している。

一案として、経験のあるオトシヨリたちが保育にあたるという考え方もあるんだそうです。もちろんボランティアではなく、ある程度の収入を担保。母親は仕事が続けられる、オトシヨリも喜ぶ。昔なら爺さん婆さんが家族として担当したことを正規の「仕事」として担うわけです。とくに国民保険の年金受給者は助かるはず。この仕組みができれば婚外子が増えてもなんとかなるはず、若い母親が嬰児を殺すこともなくなる。安心してもう一人産める。

フランスの出産率が高いというけれど、実は移民がたくさん産んでいる。生粋フランス人の子供が増えているわけではない。それでいいんですか?と司会が聞いたのは、さすがフジテレビです。はい。政治的には問題かもしれないです。でも「それがなぜいけないんですか」と答えるのは理系「動物生態学」のセンセイです。これはこれで正しい。

最後に少子化対策がすすまないのは「もしかしてマスコミの責任もあるとお考えですか」と聞いたのはなぜだか。聞かれて、ちょっと遠慮がちながら「はい」とセンセイはお答えでした。はい。

蛇足ですが、実はもう一人、心身健康科学科の若いセンセイも呼ばれていましたが、可哀相に。隣のセンセイが容赦なく鋭く断言するので、なんかつまらない役回りになってしまった。すごく発言に苦労しているのがよくわかりました。ときどきはヤケ気味に「私には解決策がわかりません」とか。

たのしい番組でした。