Book.05の最近のブログ記事

アーティストハウス ★★★

獄中記―地獄篇の続編。

gokuchuki2.jpgジェフリー・アーチャーが次の刑務所へ移ってからの日々です。前回同様、なかなかに誇り高く(なんせ一代貴族)暮らしているようで、囚人仲間といろいろ取引してみたり、名画を安く入手するため画策してみたり、こすっからく元気です。

前回の地獄篇もそうでしたが、彼の日記を読んでいると、囚人はみんな根は善良でいい奴ばっかりかと錯覚しますね。今回もだいたいはそうしたトーンで書かれているのですが、時折ギョッとするような記述もある。仲間うちのリンチの話だったり、凄惨な報復だったり。

そうした暗い部分はどんどん省略して、いかにも売れそうな、面白そうなエピソードを集めて本に仕立て上げている。囚人として収監されていても、発想はあくまでベストセラー作家。獄内のテーブルに向かい、せっせとメモバッドにソフトペンを走らせているアーチャーの姿を想像すると、それはそれでけっこう暗いものがあります。

結局、2年くらい収監されていたらしいですね。

朝日新聞社 ★★★

 

shishibun.jpgまとめて古書店で購入した 獅子文六全集、全16巻の一冊。手始めに読んだのは大番でした。

なるほど。大昔に読んだ記憶とは多少違っていましたね。もっと長編だったような気がしますが、意外に短い。短いといっても600ページ余りはあるんで、十分長いんですが、印象としては2~3巻くらいはあったような。

最後の方、こんなふうに結末がついていたのか。なんとなくゴルフ場建設でゴチャゴチャして、可奈子さんには手ひどくふられて、かなり悲惨な感じで終焉だったように思い込んでいたのですが、読んでみるとそれなりにサッパリしています。

再読する機会があってよかった、よかった。こういう本が、今は古本屋でしか手に入らないというのは、日本の貧しさですね。

 

角川書店 ★★

 

avenger.jpgフォーサイスの比較的新しい作のようです。なんせビン・ラディンが出てくる。

今回の舞台は旧ユーゴスラビアです。ややこしいですね。セルビアやらクロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナがどう絡んでいるか・・新聞や本の解説を読んだときは理解しているのですが、すぐ忘れてしまう。要するに、ゴタゴタしている悲しい地域。

ま、その地域でNGOのアメリカ人青年が殺される。で、彼の祖父は犯人をつきとめようとする。そのためには動いてくれるゴルゴ13が必要で、そのゴルゴ13がアヴェンジャー。

物語の背景なんてどうでもいいんです。超厳重警備の南国の要塞に、主人公(一応は)がどう忍び込み、どう計略をめぐらすか。その一点だけがテーマですね。

途中までは、なんかなー・・・という感じで読み進んでいたのですが、最後だけは驚いた。なるほど、そういう仕掛けだったのか。ま、達者なフォーサイスです。読んで損はしません。たぶん。

アーティストハウス ★★★

 

gokuchuki.jpg「百万ドルをとり返せ!」のジェフリー・アーチャーが偽証罪で実刑判決を受けたということは知っていました。その後どうしたのか知らなかったのですが、刑務所に入るやいなやこんな本を書いていたとは。

要するに、刑務所体験記です。なかなか興味深いです。保守党の元副幹事長でもあり一代貴族でもあるアーチャーが、殺人犯や強姦犯といっしょに刑務所。なるほど。で、最初に入った数週間の監獄での体験記です。

年齢もあるでしょうが、いちばん苦労したのは食事のようですね。あまりに不味くて支給食が食べられない。1週間12ポンドくらいが自由に使えるらしいですが、そのお金でやりくりして、なんとか喉を通りそうな食べ物を買い食いしている。なんせ12ポンドですから、すぐ底をつく。ボトルの水も残り少なくなる。原稿用紙代わりのクリップペーパーも買わなければならない。

なかなか面白かったです。

東京創元社 ★★★

 

reservationb.jpgシャーマン・アレクシーという人は数少ないネイティブアメリカン作家のようです。昔ふうにいうとインディアンですわな。

なんといいますか、こういうハードな代物は久しぶりなんで、最初は戸惑いました。あ、ハードといっても文体は超やわらかいです。やわらかい・・というよりシュールと表現すべきかな。土俗的でシュールなロックンロール・ストーリー。何いってんだか不明ですね。

シャーマン・アレクシーという人、そもそもは詩人のようです。そう考えると納得。古いブルースの歌い手ロバート・ジョンスン(有名な人なのかな?)の魂がギターかかえて西海岸の居留地へあらわれる。意志あるギターが火花を散らして勝手に演奏する。

どうしようもないネイティブ3人組がバンドを組み、他の部族の姉妹も参加し、見すぼらしい居留地で大騒ぎをする。現実と精霊と現在と過去。すべてが混在しているのがこうした見捨てられたリザベーションなんでしょうね。悲しいおとぎ話でもあり、詩でもあります。読後感はよかったです。

ハヤカワ文庫 ★★

yorukitaru.jpgアイザック・アシモフの超有名な短編をシルヴァーバーグとの共著という形にしたリメイク。

リメイクというのはたいてい面白くもないものですが、いかにシルヴァーバーグといえども成功はしていません。ひたすらダラダラと長くなっただけ。そもそも原作そのものが設定に少し無理があったわけですから、その無理がいっそう拡大されただけという印象です。

ただし、読むんじゃなかった!というレベルではないと思います。

文芸春秋 ★★

 

hibinoshoku.jpg達者な文章だなーと思ったら、大昔に読んでなかなか良かった「もしも宮中晩餐会に招かれたら」の著者でした。皇室の大膳(料理人)をやっていた方です。

皇室の料理って、民間とは発想がまったく違うんですね。もったいないとか、惜しいとかいうことを考えない。大根切るにもニンジン切るにも、大きさや厚さなどなどアホみたいにきっちりやる。1ミリ違ってもいけない。不公平のないようにという意図なのか、それとも煮え方が完全に均一になるようにという考えなのか・・・。なぜかジャガイモなんかは完全な球形に切る。ゴロゴロと転がして転がりが曲がるとゴミバコに全部ポイ!になる。

また高貴な御方は原則として「出されたものはそのまま食べる」のだそうです。カシワ餅を葉に包んだまま出したら、そのまま食べてしまったそうで、これは不味かったらしい。こういう場合は葉を開いて、その上に餅を乗せておくべきだったんでしょうね。

給仕の女官も「聞かれない限りは助言はしない」のが基本で、アレレ!と思っても黙っている。「知っていて、あえてやっているかも知れないから」という発想のようです。

面白い本でした。

河出書房新社 ★★

 

somurieno.jpg田崎真也という人、知らないながら何故か好きではなかったのですが、実際にはけっこう良かったです。

要するに、考え方がプロですね。ワイングラスはテーブルの右か左か、食べ終わったらナイフとフォークを揃えるのがマナーなのか、ボジョレーヌーボーは寝かせるといけないのか・・・。

ぜーんぶ、お好きなように!というのが田崎ソムリエの考え。ウェイターに気を使う必要なんでまったくないし、自分で美味いと思うワインを好きなように飲めばいい。ルールなんてない! ただ基本は「楽しく、美味しく。他の客に迷惑さえかけなければ可」

私、個人的には最近の地酒ブームに迷惑しておりまして、ちょっとした酒に燗を付けてくれと頼むとやたら怒られるのに困っています。燗というと安酒しかおいてない。名前のあるような地酒はぜーんぶ冷や専用。学生時代にアルバイトした飲み屋では、越の寒梅に燗つけて、さんざん板さんと飲んでたんですけどね。

アスコム

nichibeiit.jpg知りませんでした。アスキー出版は「アスコム」になってたんですね。この会社、好きだったんですがどんどん変化してきている。

ま、田原が1980年代ごろからあちこちにインタビューしてきたものの集大成です。知ってる話もあるし、初耳のものもある。大部ですが、飽きませんでした。

そうじゃないかと思ってましたが、やはり日本の通産省というのは凄い。賢い人たちが日本のためを思って、賢く必死に動いている。もちろん民間も民間で凄い人たちが必死に動いている。そこに米国巨大企業や米国政府の意図が絡んだりして、文字通りの経済戦争。

電力、原子力、コンビュータ、通信、特許、鯨、環境。壮大な格闘絵巻です

草思社 ★★

 

「全史」というのがすごいですね。

seimei40.jpgよほど上手な書き手じゃないと、こういう通史は難しいです。本音を言うと、例のパンゲアとかなんとかとか、大陸分裂移動のあたりを詳しく書いてあるかな・・というだけの期待で読みました。このあたりの推移を分かりやすく書いたものを知らないので。

うーん、やはり読みにくかったです。そう下手でもないし、いろいろ新鮮な話もあったり(たとえばカンブリア爆発の件(バージェス頁岩)ではスティーブン・グールドがかなり勇み足だったとか少し批判)で、それなりだったのですが。

チラホラと、拾い読みでした。

中央公論新社 ★★

udagawa.jpg小林恭二というと確か「猫鮫」という俳号をもってた人ですわな。ん、短歌だったかな。ま、そのようなものでした。非常に多才な人です。

で、読売新聞に連載されていたものの加筆本のようです。

うーん、なんといいますか。こういう本って感想が言いにくい。テーマは「愛」です。今の東京渋谷、宇田川町のあたりを舞台として鎌倉時代から江戸末期、ついでに現代。時代を超えた真摯な男女の愛の糸筋を描く・・・これじゃなんだかわからないなあ。

どっちみち小林恭二ですから、まっとうな筋じゃありません。でも若い読者なんかだと中には「まっとうな恋愛小説じゃないの。なんて美しい。感動!」とか勘違いするかもしれない。そういう、人を食った小説です。

やっぱり何も説明になっていなかった・・。

東京創元社 ★★

americashoku.jpg東 理夫という人、名前は大昔から知っていましたが、実際に読んだのは初めて。なかなか面白い本でした。

アメリカというと「まともな食べ物は皆無。比較的いいのがマックとフライドチキン」が定説です。私も個人的にはこの見解を強く支持します。

ところが東氏は反論します。アメリカにもまともな食事はたくさんある。ただ、食の目指す方向がフランスや日本のような「おいしいもの」ではなく、もっと違った方向へ進んでしまったのだ・・と。

ま、それはともかく、私はインディアンが何を本当は食べていたのか(ビーフジャーキーとペミカンというのが従来の固定観念ですなわ)、あるいはカウボーイたちがどんな食事をしたのか、西部への幌馬車に乗った連中は毎日どんな食事をしていたのか・・というふうな部分が面白かったです。

結論としてはやはり、どうやらインディアン(いろんな部族がいますが)も、けっこう文化的な食事をしていたらしい。バッファローの固い肉だけ齧っていたというのは、案の定、偏見だったようです。よかったよかった。長年の疑問が氷解しました。

小学館 ★★

kisekino6.jpgこれもタイトルが長いなー。アーロン・ラルストンといったって、ほとんどの日本人は知らない名前だと思うのですが。

アウトドア派の青年で、アメリカでは超有名らしいです。なんで有名かというと、ユタ州あたりの人里離れた谷で落石にあい、右手を挟まれてしまった。で、そのまま6日間放置。小便を飲んで渇きをいやし、7日目に自らの手首を切りとって生還をはかった。

文章そのものはつまらないです。かなり下手なゴーストが書いた気配。というより、こういうドラマチックな内容って、当の本人はあまり重大にとらえていないんじゃないかな。よくあるパターンですが、地震とか台風で東京のアナウンサーが「そちらの状況を教えてくださ」と意気込んで呼びかけると、助役さんあたりが「いや、大きな災害は発生していません」と落ち着きはらっている。でもよくよく聞くと家が何軒か倒れたり、車が水に浸かっていたりする。でも助役さんとしては人が死んだわけじゃなし、たいして重要視していない。震度6強なんだから家くらい倒れて当然だろ、という感覚。

それはともかく。自分で自分の手を切れるかどうか。そこに私は関心がありました。しかも挟まれたのが右手。使ったのは切れない十徳ナイフ(のようなもの、たぶん)。斧でもあって、思い切って「えい!」とヤケっぱちなら何かとかなるかもしれない。でも左手に握ったナマクラのナイフで自分の手首をギコギコと切れるか。肉は切れても骨はどうか。

興味のある方は読んでみてください。ちなみにバラしてしまうと、彼は手首の骨を折ってしまいました。切るよりは楽だったんでしょうね。うーん、想像しただけで怖いです。

講談社 ★★★

 

ishibumi.jpg「講談」と副題にあるように、講談です。いわゆる天保六花撰(例の悪坊主・河内山宗俊とかです)のSF仕立て、舞台盗用仕立てとでもいいましょうか。ただしSFはあくまで便宜であって、真意は天保六花撰をネタにして江戸情緒+ストレス解消本を書いてみたかった、ということと理解しています。主人公が国士館出身で、なぜか剣道の達人で、超いい男で、なぜか天保の時代に飛ばされて、そこにはキップのいい美女がいる。そんなこと、ま、どうだっていいです。

半村さんという人、昔から会話が上手な人でした。しっとりした情感を、短い言葉のやりとりの中に込めていく名人。特に詳しく描写もしていないのに、たとえば夜十郎とおきぬの絡みは実にエロティックにもうつります。交合の際におきぬの「腹がへこむ」という表現のあたり、笑ってしまいましたが、考えてみると実に新鮮な言葉ですね。こんなドライな言葉で表現された男女の交情シーン、読んだ記憶がない。

惜しい人をなくしたなぁと、あらためて思います。もう少し長く書いてほしかった。遺作(でしょう、きっと)の江戸打入りなぞ、この年にして新境地かな・・というものでしたが。

ハヤカワ文庫 ★

 

 ジェラシック・パーク2です。

lostworld.jpg○○○2にろくなものがないのは常識ですが、これも例外ではなく、最初から映画化を想定して書かれた本のようですね。筋書き、登場人物などは基本的に「ジェラシック・パーク」と同パターンです。というより、ちょっと恥ずかしいくらいに同じ筋書きを流用している。

強いていえばやけに元気な動物行動学者(もちろん女性)が新キャラかな。あとはすべて類型的です。

読んで損をしたというほどではないものの、ま、読まなくても損はしません。そうそう、ティラノサウルスの夫婦ががけっこう可愛いです。

 

ハヤカワ文庫 ★★

 

sunsnadmoon.jpgネビュラ賞受賞作。太陽王ルイ14世のヴェルサイユ宮殿を舞台にした空想歴史小説とでもいいましょうか。考証のけっこうしっかりしたファンタジーではあります。妖獣うんぬんのストーリーそのものは、はっきりいってどうでもいい感じ。

老王の不老不死の食材として使われそうになった「妖獣」が、海に沈んだ財宝船の所在を教えてくれる。ファンタスティックでいいですねー。最後の最後でも海の妖獣たちがルビーやエメラルドやダイヤや黄金細工をどっさりプレゼントしてくれます。いいですねー。

女主人公は王弟(オルレアン公かな)の娘の侍女。自然科学が大好きという設定にはなっていますが、それでも当時の娘ですから、基本的には当時の価値観で行動しています。平安朝の「虫愛づる姫」みたいな存在ですね。そのへんの設定がちょっと面白い。

ま、ヴェルサイユが好きな人にとってはなかなかの一冊でしょう。

集英社 ★

 

alex2.jpg正式なタイトルは「アレクサンドロス大王 その戦略と戦術」かな。アレクサンドロスがなぜ強かったのかに興味があったため借り出し。

ちょっと失敗でした。どっちかというと「徳川家康に学ぶ経営戦略」みたいな性質の本であり、アレクサンドロス戦略戦術をテーマにしたものじゃなかった。著者はインド系の経営コンサルタントみたいな人です。インド(インダス周辺)の少年たちは大昔のアレクサンドロス侵攻とそれを撃破したインドの王侯(名前は忘れた)のお話をわくわくしながら聞いて育ったもののようです。

それはともかく。詳しくは書いていませんが、どうもアレクサンドロスというのは、歴史上初めて「戦略」とか「戦術」を持って戦ったと将軍(王)だったようですね。とにかく人数を集めて堂々と力押しする・・という単純な戦法ではなかった。近代の参謀本部が考えるような精密なプランとタイミングで戦ったらしい。

上記が真実かどうかは不明。でもなんとなく本当っぽい雰囲気はあります。

何かの小説で、織田信長の軍勢は「脱中世」の戦い方をした、と読んだ記憶があります。たとえば1000人と1000人が戦って、片方の軍勢の10人が死んで100人が怪我をした。負けた負けた!と片方は逃げて和睦を請う。で、その結果は領地の4分の1くらいを割譲。そろそろ農繁期にもなるので、勝利側は満足して引き上げる・・・・。

そういうスタイルが中世だったというのです。相手を徹底的に撃破はしない。徹底的にやるためには、勝利側にも多大な犠牲が必要です。計算すると割にあわない。少し痛めつけて、相手から譲歩を引き出すほうが賢いです。

常識的な戦いの手法を覆し、近代戦を確立したのが信長だった。非常識なスピードで戦う。非常識に相手を殺す。逆らった相手は根絶する。義理も人情も談合も容赦もない。ちょうど小泉総理ですね。いままでの自民党の融和的「常識」が通用しない。まさかそこまでは・・と楽観していたら、本当に、やる。だから古いタイプの戦争しか知らない武将たちは困惑し、うろたえ、あっというまに押しつぶされてしまった。その信長の近代合理方針を受け継いだのが秀吉ということになります。

ま、そういうことのようです。

講談社文庫 ★★★

 

daiseido.jpgニューヨークは5番街に面して、聖パトリック大聖堂というカテドラルがあるそうですね。ビルの谷間なので小さそうに見えるけど、実はかなり大きい。塔の高さも100メートルくらいあるようです。

で、3月17日が「聖パトリックの日」。この日はアイルランド系市民の大パレードがあるんだそうです。かなりの大騒ぎになるらしい。そんな日を選んでIRA過激分派が大聖堂で人質立てこもり作戦を実行したらどうなるか。ま、そういうお話です。

北アイルランド紛争の詳細はわからないです。単純な宗教対立なんかではないようで、実にややこしい。それはともかくとして、血の気が多くて詩人気質のアイルランド野郎とアイルランド女たちが武器を持って籠城し、聖堂を爆破すると恐喝。対するニューヨーク市警も、ま、普通はアイルランド系ですわな。最初から最後までアイルランド尽くし。

別件。読み終えて考えたのですが、ニューヨークの聖パトリック大聖堂の位置づけを持つ建築物って、東京だったら何でしょう。うーん、これが思い当たらない。たとえば東京駅が爆破されるからって、多くの市民は痛痒を感じるでしょうか。お茶の水のニコライ堂? 知らない人のほうが多いか。浅草寺? なくなったら悲しいでしょうが、だからといって国際的な事件になるとも思えない。

東京に限らず全国区でも、国民の多くが強いシンパシーを持つ建物って思い当たらないです。東照宮? 金閣寺? 伊勢神宮? 富士山だったらさすがにみんな関心を持つかな。富士山を爆破するぞ!とテロリストが脅かしてくる。この程度までいかないと現実味がないですね。

ハヤカワ文庫 ★★

 

e_shadow.jpgエンダーのゲームの続編というか、姉妹編というか、同じ出来事を違う視点で描いたという苦し紛れ的な一冊。主人公はエンダーの副官役(そんな奴、いたっけか?)のビーン。「ちびマメ」ですわな。

発育不良でひ弱で、しかし悪魔的に賢い幼児がストリートチルドレンの中で生き抜き、やがて徴兵され、 頭角をあらわし、エンダーに出会い、補佐役となり、教官たちの策謀を見抜き・・・。カードの大好きな「可愛げのない天才少年」ですね。ただ同じ時系列を違うヒーローが追う形式のため、どうしても独立峰エンダーの魅力は薄れてしまっています。エンダーがどう苦しみ、どう乗り越えていったかという一作目の新鮮な感動がないばかりか、むしろエンダーが単なる操り人形にも見えてくる。楽屋ネタがすべてあかされてしまうとでもいいますか・・。

ビーンという少年像はよく作られたような気がします。でも結局のところ二番煎じ。カードがすすめるようにこの作品を読んでから一作目を読んだりしたらかなり悲惨でしょう(絶対にやってはいけません)。そういう微妙な部分に欠けているのがカードという人です、たぶん。

「エンダーのゲーム」に感動した読者なら、ま、読んでもいいとは思います。でも、読まないほうが良かった!と思う読者も少なからずいるんじゃないかな。

中央公論新社  ★★

 

kokuhaku.jpgあーくたびれた。

河内音頭のスタンダードナンバー「河内十人斬り」に「男持つなら熊太郎弥五郎、十人殺して名を残す」とうたわれた明治の殺人鬼のお話です。

これだけの紹介では何も言ったことになりませんね。でも、どう言ったらいいのか。そもそも町田康の本を読んだことのない人に、パンクロック歌手・詩人・小説家という町田康の本を説明するのは非常に難しい・・・。

冒頭、私は太宰の「ロマネスク」をなんとなく思い出しました。タイトルは忘れましたがナントカ次郎兵衛という主人公のお話。ケンカに強くなりたいと願って修行して、見事にケンカ名人になる。ただし町田康の描く主人公・熊太郎は見かけ倒しだけでちっとも強くはなれません。強くはないのに、でもヤクザものになってしまう。おまけに無教養な河内男の内部にはねじくれた自我と内省と臆病が巣くっているので、なんともやっかいなことになる。

アホである。役立たずである。頭でっかちである。しかも思念を実際の言葉にする術を持たない。口を聞けばいっそうアホにしか見えない。そういう男がさしたる自覚もなく、崩壊します。崩壊のついでに老若の村人10人を惨殺。山狩りの末、金剛山で自決。

で、なぜか彼らは一種のヒーローとして河内音頭に歌われることになってしまう。作者・町田康が騒ぎまくって饒舌に書きたてる河内弁の氾濫で読み手の頭の中までグチャグチャになる。へんてこりんな長編です。疲れます。ファンにとってはたまらん本なのかも知れません。

新潮文庫 ★★

 

daisan.jpgもし同じ顔、同じ体型、同じ遺伝子の男たちが2人、3人、いやオソマツ兄弟のようにもっと多人数いたらどうなるだろうか、という小説です。同じように優等生になるだろうか、同じように犯罪者になるだろうか。DNAが重要なのか、それとも環境が鍵なのか。

こういう仕掛けを実現させるために、ま、クローン兵士計画の陰謀がどうとか一応の説明はつけています。でも、それは単なる舞台設定に過ぎないでしょう。もっともらしい設定の上で、ラブストーリーがあったり、陰謀暴きがあったり、取り違えがあったり。そうした面白さを追求した本というべきでしょうね。

ケン・フォレットですから、当然そつなく書きすすめています。それなりに面白い。どんどんページが進みます。でも読み終えてみると、なんかアホくさい・・。小道具としてPCやインターネットも活躍してはいますが、これもなんか嘘っぽい。あんまりPC使ったことのない人が書いてることが、たぶんバレバレです。(フォレットってのは、えーと・・・1949年生まれか。トシってほどでもない。するとPC関係の文章がぎこちないのは訳者の関係かな。訳者は・・・1947年生まれ。うーん、はて、どっちの責任なのか)

角川文庫 ★★

 

yorunokodomo.jpg最初の数ページを読んで、あ、既読だった・・と後悔。それにしては展開に記憶がない。この本、以前読んだことがあるのか、なかったのか。不思議。

ドラキュラ伝説の新解釈です。要するにトランシルヴァニアのこの一族、一種の免疫不全体質で、そのため血を定期的に摂取する必要がある。でも、こういう解釈、他でも読んだことがあるような気がするなー。

ま、それはともかく。このドラキュラ話と現実のチャウシェスク独裁体制終焉を絡めて、独特の雰囲気をかもしだしているのは巧者シモンズです。過去と現在、中世の吸血鬼と現代の独裁体制。繋がるような繋がらないような、不思議な相似形。独裁打破後のルーマニアの陰惨さがなんとも言えません。

そんなふうに舞台設定はなかなかいいのに、ただ登場人物がなんと言いますか、類型的。あるいはハリウッド的。美人医師は大立ち回りをするし、片足の司祭も大活躍。味方なのか敵なのかわけのわからない青年は結局のところ、■(伏せ字)だし。終盤はかなりご都合主義な感もあります。このへんのドタバタ加減はダン・シモンズの特質なのかも知れません。この種がけっこう多いような気がする。

そうそう。本筋とあまり関わりはありませんが、串刺し公ヴラド・ツェペシュ(ドラキュラ公)の回想部分はけっこう味があります。この串刺し公、超残忍ではあったものの歴史的には対トルコ防御戦争の英雄であったことも事実のようです。

中央公論社 ★★

 

franceshi.jpg歴史の陰に女あり、という視点はかなり陳腐ではありますが、でもその俗っぽさがたまらない。偶然このシリーズをみかけて、最初に借り出したのが巻5。巻5は美男といわれたルイ15世が縦筋です。

あははは。かなり笑えました。なにしろ初っぱなが「女性に関心を持たない少年王」に、いかにして目覚めてもらうかと周囲が苦心惨憺するというお話です。うまくいけば玉の輿、若い女官連中はもちろん、町娘や娼婦まで総動員して、あの手この手の誘惑です。でも、うまくいかない。

もちろん、そのうち春情勃発ですけどね。火が付くともう止められない。次から次へと手をつけるんですが、いちばん有名なのはポンパドゥール夫人でしょうか。そうそう、王の晩年には新婚早々のマリー・アントワネットにいじめられるデュバリー夫人というのもいます。著者によるとデュ・バリーとは「小さな樽」という意味なんだそうです。

私、個人的にはもう少し古いあたりが読みたかったのですが、人気のシリーズらしく、なかなか図書館には残っていません。そのうち、ようやく巻1が返却されていたのでパクッとこれも借り出し。

巻1はクローヴィスから始まっていました。5世紀、メロヴィング朝フランク王国の始祖ですね。ここから始まって100年戦争あたりまでカバーしています。馴染みのない王や王妃が多いのですが、ま、いろいろ面白かったです。

戦争も条約も政争も十字軍遠征も、すべての原因は女性にあった。こういう考え方に気分を悪くする真面目な読者も多そうな気がしますが、でも案外真実だったりするんじゃないかなーという気もします。続きを発見したら、また読んでみようっと。

蛇足。
そうそう。有名なベルサイユの鹿の苑(鹿苑)も著者に言わせるとたいしたものではなく、次から次へと手をつけた町娘連中をちょっと住まわせておく小住宅だったそうです。ただ惜しむらく名称が妙にエロチックだった。そのため過大に噂され、まるで隠微なハーレムのように見られてしまった・・。もちろん、本当のところは不明です。

蛇足2。
中世の一時期、ローマ法王庁では王族の婚姻について「七親等」以内は不可という規定を設けていたそうです。あまり深く考えない坊さんが決めたんでしょうね。その結果としてヨーロッパの王族たちは対象とすべき相手を見つけるのが非常に困難になった。なんせこの頃は子供の数も多かったし、それをあちこちに片づけているとヨローッパ中の主要な家はほとんどが複雑に入り組んだ姻戚関係になってしまう。

えーと、例を上げてみると、たとえばスペインから嫁いできた祖母(=2親等)の腹違いの妹(スコットランドに嫁いだ=4親等)の産んだ娘(5親等)がザクセンに後妻に入って産んだ娘(6親等)のまた娘(7親等)。特別の許可がない限りこの人とは結婚できません。曾祖父あるいは曾祖母が共通の一族とは基本的にダメということかな。だから遠いデンマークとか、ロシアとかからはるばる嫁さんを迎えるケースが往々にして発生したんだしょうね。

徳間書店 ★★

 

alex.jpg全3巻。このテの本は箸にも棒にもかからない駄作か、あるいは意外な掘り出し物か、たいていは両極です。で、今回は・・・うーん、完全な駄作とも言い切れない微妙なところですね。飽きずに読了しました。

案外良かったのは当時のマケドニア人(ギリシャ人)の発想、考え方、生活が(一応は)ビビッドに描かれていた点でしょうね。真実かどうかは不明ながら、それらしくは書いてある。女性向け歴史小説なんぞにありがちなパターンですが、たとえばアレクサンドロスが妙に現代的な正義感だったり、女性に潔癖だったり、さすがにそういう素人臭い書き方はしていない。当時の武将らしく酒も女も、たぶん男も大好きな若者として描写される。宴会ともなるとみんなすぐ裸になるし、最後は乱交もなるし。やたら登場する美女がすぐ大王に惚れてしまうのは、ま、ご愛嬌です。

読み終えて、なぜマケドニア・ギリシャ軍がそんなに強かったのか、知りたくなりました。重装歩兵や軽装歩兵、騎兵などの連携がよかったという趣旨の説明が従来は多いのですが、ほんとうにそれだけなのか。また、同じような戦法でなぜダレイオスの大軍を(少なくも二度の会戦で)破ることができたのか。

ファランクスはについてはこの本で多少は知識を得ています。マケドニア式の改良型ファランクスを軸とした戦い方が結局は全アジアに通用してしまったということなんでしょうか。

そうそう。それとは別に大王死後の後継(ディアドコイ)戦争。このへんの詳細を記した本はないかと少し探してみたけど、簡単には見つかりませんね。武将たちがいろいろ衝突したあげく、結局セレウコス朝とかプトレマイオス朝とか、あと何でしたたかができたという程度は高校の歴史で学んだ記憶があるのでずが。

早川書房 ★

 

timeline.jpg確か駄作だったという記憶があったものの、読む本もないので借り出し。で、やっぱり駄作でした。

クライトン、つまらない本の比率がだんだん増えてる気がします。才能の枯渇。あるいは細部を詰めて叙述するエネルギーの消耗。この前読んだプレイもそうでしたが、仕掛けに走ってしまって細部をおそろかにしている。キャラクターが(クライトンだからもちろん一応はA級ではあるものの)ちょっと浅い。物足りない。登場人物が動き過ぎるというか、類型的なスリルとサスペンスの連続!というパターン。

それはともかく。内容はタイムトラベル+中世バタバタ活劇。学生たちが14世紀に飛んでナントカカントカという点ではコニー・ウィリスのドゥームズデイ・ブックとかぶるところがありますね。ただし出来上がりは、うーん、月とスッポンですか。この本の場合、特に舞台を中世にする必要なんてないじゃないか・・という疑問が残る。

本筋ストーリーとは別ですが、クライトンの解釈で面白かったのは
(1) 騎士たちの筋力体力。重い剣を振り回すスピードもすごいし、重量鎧をものともしないこと
(2) 軍馬が巨大であったということ
(3) 金満修道院に対する批判として開設されたはずのシトー派がすでに堕落し始めていたこと
(4) テニスの原型が人気を得ていたこと
(5) 水車(粉引き)という施設の持つ重要性

このへん、中世専門の歴史家にとっては常識なのかな? 。そうそう、政治的立ち回りの上手な城主未亡人が出てくるのですが、扱いがもったいない感じ。賢くて狡くて合理的で、この小説の中では唯一面白いキャラなんですが。

文藝春秋 ★★

 

it.jpg新聞か何かで「キングの最高傑作」と読んで気になっていたのですが、なぜか単行本を見かけることがなく、で、とうとう文庫4冊を発見。長い長いストーリーです。

なるほど。内容は「スタンドバイミー」と「呪われた町」の合体ですね。とある夏、7人の少年少女(あれ? 女の子が主人公の小説って、他にあったっけ)がお馴染みメイン州の町外れで出会い、冒険し、友情を確かめあい、悪に挑戦し・・・そして27年後、中年となった7人がまた小さな町に引き寄せられて行く。

私、おそらく最初に読んだキングものが「呪われた町」です。実に新鮮でした。美人のヒロイン(というような設定だったはず)があっけなく吸血鬼の仲間に入れられてしまう。飲んだくれの神父がふと自信をもって聖水を振りかけると教会の扉がはじける。でも吸血鬼に不信心を問い詰められると、聖水はたちまちただの水に変貌してしまう。

「聖水」は教会で祝福されたが故に聖なる力を持っているわけではなく、神父が信念と誇りを持って振りまくが故に悪への攻撃力を持っている。パワーの源は「想像力」と「信頼」「信念」です。

というわけで、この長編でも子供たちが悪と戦う武器は想像力。ちっぽけな吸入器に入ったカフェイン入りの水でも「これは強力な酸なんだ!」と少年が想像力を働かせたとき、悪を破滅させる必殺武器となります。

たぶん綿密に計算された大長編です。最後まで飽きさせないのですが、惜しむらく最後の方で出てくる暴力オヤジ(元少女=服飾デザイナー の亭主)、美人妻(元少年=作家 の妻)が破綻。もっといろいろ活躍するはずだったと思うのですが、たぶん書き手のキングが疲れてしまった。暴力オヤジなんて、けっこう「悪」という雰囲気だったのに、結局何もしないで死んでしまいます。美人妻も特に何も行動しないうちに魂をなくして蜘蛛の巣につり下げられてしまいます。

ま、多少の瑕瑾はありますが、読み終えると暫くボーッとする。なんといっても圧倒的ボリュームだし、お馴染みのキャラクターやら小道具も満載。あのシルバーという重量自転車、何の本で登場した代物だったっけか。この本の中でも大活躍します。

文藝春秋 ★★★

 

nightbird.jpgマキャモンというと「少年時代」あるいは「遥か南へ」ですか。一般的には「少年時代」が有名みたいですね。どちらも独特の叙情のようなものがあって、けっこう好きな作家です。

で、今回の「魔女は夜ささやく」。原題はSPEAKS THE NIGHTBIRD。Night Birdってのは辞書をひいたらフクロウでした。マキャモンにしては珍しく(ひょっとして初?)時代もので、セーラム魔女事件から7年後、新世紀を眼前にした1699年という設定です。場所もだいぶ南に下ったカロライナの新開拓地です。

初老の判事と若い書記が陰惨な雨の中、魔女事件でつぶれかかった開拓村へ馬車を走らせるところからストーリーは始まります。道はドロドロ、体は冷え、日も暮れかかり、痩せ馬はいまにも倒れそう。ふと見ると街道沿いに新しくできたらしい粗末な家がある。旅籠です。

という導入部、味がありますね。煙が目に染みる、暗く惨めな旅籠にいるのは粗暴そうな親父と頭のボケかかった老人、老婆。そして妙に魅力のある若い娘。ついでに大ネズミの群れ。娘に名前はありません。ただ「娘」と呼ばれています。娘の汚いスカートが書記の体に触れたとき、「陰部の匂いを嗅いだような」フェロモンが漂います。フェロモンですから、若い書記は敏感に反応してしまいます。

ひたすら汚い。ひたすら猥雑で野卑で暴力的。当然の成り行きとして、夜中になると怪しげな連中は金槌やら三叉やらを手にして襲いかかってきます。命からがら逃げ出した判事と書記はなんとか開拓村までたどり着き、そこで捕らわれている魔女を見る。この魔女を合法的に裁判にかけるのが、この二人に託された仕事というわけです。

なんといいますか、ミステリー仕立ての時代劇。あるいは青年の成長ストーリー。当時としては自立した魅力的な女(魔女はボルトガル系で浅黒い肌、目は怪しい琥珀色!)との恋愛もの。ここにスペイン人やアホなインディアン、謎の宝物などなどが絡んで、こんがらがった糸のような構図です。で、最後の数十ページで込みいった謎はサクッと解決する。

大団円はかなりご都合主義ですけどね。乱暴なくらいスンナリしてます。でもそのお蔭で、グチャグチャはスッキリして、一種のカタルシス効果は生まれている。そしてなんせマキャモンですから、男と女は一緒に暮らそうなどとは言わない。書記は女に別れを告げ、ニューヨークで法律家としての道を歩むために村を出て行く。さようなら琥珀の瞳のレイチェル。キミにはキミの人生があり、僕には僕の人生がある。

ま、よかったです。

河出書房新社 ★

 

provence3.jpg暇なときにだらだら読みました。このシリーズの第三作になるようです。

内容は、ま、特に書くようなものでもありません。それなりに楽しく、それなりに面白く、といった感じでしょうか。だんだん新鮮さが落ちている気配もあります。

そうそう、どこかの章に「トリュフ」について書かれていました。てっきりブタに探させると思い込んでいたのですが、さすがに今は(地方にもよる?)犬を使っているようです。フランスではこの種のキノコ類がけっこう使われており、この前食べたオムレツの中の黒いゴミみたいなもの、何だろうと気になっていましたが、その後調べたら「モリーユ」という茸でした。この他にもセップ茸とか、いろいろあるようです。

誰かが「トリュフというのは、日本のマツタケと理解すればいい」と喝破しているとのことです。要するに好きな人は好き、珍重する人は珍重する。そういうものなんでしょうね。

話は違いますが、フランスの田舎で食べたフォアグラ、まともなレストランのものは意外なことに美味でした。テリーヌではなく、そのまま切ったような雰囲気でした。ついでに言えば、ブルゴーニュ風のカエルは、私は感心しませんでした。バターがきつすぎた。塩焼きとかあっさり醤油を垂らすとかならよかったのに。そうそう、カタツムリも細工しすぎの雰囲気で、ま、どうでもいい印象。殻に残ったオリーブ油はパンを浸してたべると美味でしたが。美味しいキャビアにはまだ当たったことがありません。以上、蛇足でした。

みすず書房 ★

 

turk-modern.jpgケマル・アタチュルクという人物に以前から関心があり、いったいどういう人でどういう功績の人だったのか知りたいと思っていました。筑摩あたりに本があるようなのですが、なかなか手に入らない。図書館にもない。

で、ふと思いついて総括的ながらトルコ史を拾い読み。

なるほどねー。EU諸国がトルコの加盟を嫌がっているのが、なんとなく理解できる。EU諸国にとってトルコという国は、あくまで非西欧、非キリスト教国、非民主的国家。ま、そういう印象なのでしょう。

強大なオスマン帝国が列強にボロボロ蚕食され、(オスマン側からすれば)無理難題を常に押しつけられ、自主的に(もちろん暴力的に)国内問題や民族問題を解決すれば「暴虐な専制国家」と非難される。やってられない!という感覚でしょう。でも民主国家の仲間入りをしないと生きていけない。で、NATOにも加盟し必死に西欧に目を向けていると周辺のアラブ諸国からは裏切り者あつかいされる。辛いことです。

同じような頃に近代化を目指した日本はなんとか成功したけど、オスマンの場合は非常に苦労した。やはり地勢的な要素がいちばん大きかったんでしょう。そういう超複雑な近代化の道を、超ワンマン、超豪腕で押し進めてしまったのがムスタファ・ケマルという人物。大久保利通とスターリンを一緒にしたような人だったのかな、という印象でした。

山川出版 ★★

 

france-his2.jpgほんの数週前、フランス中央部、旧ブルゴーニュ公国の首都だったディジョンという町に4泊しました。で、案内書の類を読むとやたら出てくるのが歴代のブルゴーニュ大公たちの名前。フィリップ善良公とか、フィリップ豪胆公、ジャン無畏公などなど。

この頃のブルゴーニュ大公というと、例のジャンヌ・ダルク映画に登場する悪役ですわな。よくわからんけど偉そうで、シャルル王太子を脅かしたり、すかしたり、イングランドと結託したり。この公国、フランドルのほうにも領地があったらしく、なんかの戦争の戦利品で仕掛け時計を持ち帰って、市街中心の教会の上に飾って誇示している。時刻になると人形が動きます。ジャックマールというらしいです。(私の泊まったのも・ホテル・ジャックマールでした)

france-his1.jpgそういわけで、私は何も知らない。あんまり無知なのも腹がたつのでフランス史を二冊、通読してみました。世界各国史のフランス編と、世界歴史大系のフランス第1巻です。

いやー、思った通り実にややこしい。100年戦争のころですね。フランス国王派とブルゴーニュ派とアルマニャック派とイングランドと、三つ巴、四つ巴になって離反したり取引したり勝ったり負けたり。それぞれが独立国でもあり、臣従の関係でもあり、縁戚でもあり。まったくグチャグチャしています。こんな状況で「フランスのために!」とか叫んで百合の花の旗をもってシンプル頭の田舎娘が乗り込んできたら、そりゃ周囲は困惑します。

ということは理解できました。でも詳細な部分はあいかわらず不明です。そうですね、たとえば日本の室町時代とか南北朝初期あたりの政治事情を詳細に解説した歴史書があったら、やっぱりこんな具合でしょう。単純に日野富子が悪いとか、大塔宮は可哀相だなどと単純なことは言っていられない。

少なくも映画や小説では頼りなくて小心でズルそうなシャルル七世(ジャンヌがランスで戴冠させた)、実はそんなにアホでもなかったというのが、大方の歴史家の評価のようです。

講談社 ★★

 

shitonihon.jpgこの人の本は初めて。火山大規模災害小説です。「日本沈没」と少し雰囲気が似ています。噴火するのは霧島。

実際には霧島だけでなく、阿蘇カルデラに匹敵する巨大な旧火口が一気に目覚めて大噴火を起こす。正確かどうか知りませんが、たとえば富士山がいっぺんに吹っ飛ぶような規模なのかな。

そんな大噴火が5年後に起きるか10年後に起きるか、それはわかりません。でも多分5000年とか1万年とかのタームで考えれば、起きても不思議ではない。いつかは崩壊する地盤の上に我々は暮らしているわけです。で、もしそんな噴火が発生したとき、九州はどうなり、日本はどうなり、世界はどうなるか。

爽快なくらい悲惨です。宮崎も鹿児島もあっというまに火砕流(あるいはそれに伴うジェット粉塵)で壊滅する。個人がどうこうできるレベルじゃありません。あっという間にまっ平らになる。火山灰は西日本を覆います。作物は全滅。そこに雨が降ると川筋や平野部も全滅(そもそも平野を作ったのは川ですから)。関東平野も悲惨な状況に陥ります。生き残るのは高地・山地、それに沖縄と北海道くらい。日本だけでなく北半球の各地は数年間の冷たい夏、暗い夏となるでしょう。作物は不作となり、餓死者が続出します。

というふうに、なかなかの迫力です。せいぜい半径10~20km程度の規模の噴火で、こんなに影響が出てしまう。

ニーヴン&パーネルの「悪魔のハンマー」、手法や描き方はまったく異なりますが、ちょっと思い出しました。こっちの場合は直径数km程度(たぶん)の彗星がバラバラになって地球に衝突する。たったこれだけのことで地球の文明はほぼ消滅してしまう。

どっちも決して絵空事ではなく、充分可能性のあるシナリオだというのがミソ。地表の生き物にとっては大問題ですが、でもそのうちまた復活して繁殖する。時々は主役交代になったりしますが。そして繁栄を謳歌しているとまた忘れたころにドガーンと来る。母なるガイアってのはしぶといです。

ハヤカワ文庫 ★★★

 

tuf1.jpgジョージ.R.R.マーティンのスペースオペラもので、やけに評判がいい。つい騙されて1巻、2巻を買ってしまった。

なるほど。巻1の「禍つ星」。デブで無毛で人嫌いで菜食主義社で猫好きの大男、宇宙商人ハヴィランド・タフがいかにして失われたテクノロジー満載の巨大胚種船を手にいれ、華麗なる環境エンジニアに転身したか。そして訪れる星々でいかなる冒険をするか・・・。

悪くはないけど、でもこの主人公、そんなに魅力的なキャラなのかなー。ま、デフ、ハゲといった通常のマイナス要因を寄せ集めて面白い人物を創造した点では、さすがR.R.マーティン。当然のことながら文章もそれなりに凝っているし味もある。

 続編の「タフの方舟2 天の果実」になるとタフの性格が更に曖昧になる。こすっからさが前面に出てくるわりには惚けた雰囲気がなくなってきて、可愛げがなくなる。だんだん偉そうになってくる。

tuf2.jpgなどなど、決して大傑作ではないと思うけど、でも佳品でしょうね。船首から船尾まで30キロ(だったかな)の巨大な船に、数匹の猫だけを友に暮らすという設定。同じようなケースではダン・シモンズの「ハイぺリオン」ですか、領事と称される人物が船内格納の人口知能だけを相手に孤独に暮らすというあたりと少し似た匂いもありますね。

脱線ですが、ダン・シモンズの場合は、この孤独な領事にスタインウェイかなんかをガンガン弾かせるといふうな臭い悪趣味があって、これは閉口でした。他にもいろいろあったなー。博物館ものの拳銃が好きとか、ライトの建築にこだわるとか、ジョン・キーツがどうとか。変な人です、シモンズというのは。

ま、関係ないシモンズの悪口(でもハイぺリオン・シリーズは傑作)はともかく。このR.R.マーティンの2冊は買って損するものではありませんでした。再読もたぶん、可能でしょう。

(意図したわけではないけど、これで3冊、猫がらみが並んでしまった)

東京創元社 ★★

 

nekohadaremo.jpgアン・マキャフリーといえば「歌う船」シリーズとか「パーンの竜騎士」シリーズなんかが有名なのかな。私は船シリーズはちょっと苦手(フェミニンすぎる・・)ですが「パーン」の最初の作品は非常に好きでした。確か復讐に燃えた感応能力のある少女が騎士に発見されて、女王竜のパートナーになる。汚い少女が岩穴の風呂で体を何度も何度も洗って、もつれた蜘蛛の巣のような髪が流れていくというシーン、不思議にまだ記憶しています。

ま、それはともかく。マキャフリーは猫が超好きだったらしく、こんな猫の童話を書いているんですね。亡くなった摂政の遺志を受けた飼い猫が、若い領主をそれとなくサポートして領国の危機を脱するというようなストーリーです。口をきかない「長靴を履いた猫」ですか。

童話ではありますが、そこそこ楽しめる一編でした。

小学館 ★★★

 

balonneko.jpg神坂次郎というと「元禄御畳奉行の日記」しか知りません。今回の「猫男爵」、内容がまったく見当もつかない本でしたが、なんとなく面白そうで借り出し。

実話のようです。上州の片隅を領する百二十石(百二十万石ではない)の大名・岩松満次郎俊純という人の話。大名という言い方が正しいかどうかは不明ですが、少なくも大名の格式は持っていた。何故かというとこの人、なんと八幡太郎義家の正嫡であり、おまけに新田源氏の由緒正しい血もひいている。ほぼ純血種の源氏ですな。

なんせ神君・徳川家康がこの系図を流用(盗用)している関係で粗略にはできない。通常なら万石くらいは貰っても不思議ではないんだけど、当時のご先祖が家康に系図を譲らなかったので不興を買い、その結果が二十石。その後いろいろあって百二十石にはなったんですが、こんな収入で暮らしていけるわけがないです。

したがって工夫します。主な収入は正月の年始回り。あちこちの上屋敷に年賀に行って頂き物をする。家紋をあちこちに貸し出す。たとえば飛脚に貸してやると、その飛脚は大名飛脚の扱いになるんで実にスムーズに通行できますわな。

その他、関八州ネズミの被害を防ぐために効験あらたかな猫の絵を描いて下げ渡す。代々この家の当主は子供の頃から猫の絵を練習したんだそうです。

というような不思議な家のお話に、神坂さん発掘(ばっかりでもいなと思うけど)の当時の面白エピソードをいろいろ取り混ぜてあります。

そうそう、明治の元勲・井上馨の奥さん「武子」はこの満次郎俊純の娘なんだとか。鹿鳴館の主役ですが、なんとなく・井上武子ってのは芸者あがりとばっかり思い込んでいました。

中央公論社 ★★

 

 なんでいまさら、という感はあるが、たまたま目についたので借り出し。もちろん再読。あるい再々々読。タイトルの通りの短編集です。

tutui.jpg
何年前か覚えていませんが最初に「ヤマザキ」を読んだときは、さすが天才ツツイと感動しました。平然と受話器をとり、電気ヒゲソリを使う秀吉がなんともいい。「こちら一の谷」なんかも同じ系列です。「村井長庵」も良かった記憶がある。

「ジャズ大名」は、昔は興味なかったけど、読みなおしてみると悪くない。「鳶八丈の権」という冒頭の淡々とした一編は、なんといいますか、こんな本も書けるんだぞとツツイが自慢しているような感じがします。

才能充溢の人であることは間違いないのですが、その才気が少し臭い。ほんと、見栄はって断筆宣言なんかしなければよかったのに。宣言したのならやせ我慢して、何十年でも完全に引退してしまえればよかったのに。

早川書房 ★★

 

prey.jpgプレイはPlayでもPrayでもなくて「Prey」ですね。英語は難しい。

今回のテーマは先端技術ナノテクノロジーです。ここに分散知能システムという訳のわからない代物を混ぜこんでサスペンス仕立てにすると、この上下本になる。

人体に注射された微細なゴミみたいなナノ・ロボットが血管内で大量に集まって、集団で一種の「目」を構成する。さすがにレンズはないので、これはピンホールの原理を使います。黒い紙に小さな穴をあけると、レンズみたいな働きをする、というやつです。

で、集約した情報を外部に伝えてくれれば、治療なんてカンタンカンタン。医師は神の目を持ったことになるでしょう。

というけっこう現実的な未来物語なんですが、小説ですからとうぜんナノ・ロボットは暴走します。あらかじめ組み込まれていた集団行動(アリとか鳥なんかの捕獲襲撃行動)プログラムが災いして、なぜか人間を襲っちゃう。それどころか、人間と共棲を選ぶ集団もいる。

バックグラウンドは興味深いのですが、ただストーリーはかなりご都合主義です。なんでナノ・ロボットが美人主任と仲よくなるのか、なんで人間の3次元コピーを作ろうとするのか等々、そのへんは不自然ですが、それを言ってはオシマイ。

人工知能とか集団行動理論の話が一見専門風なものの、それさえ我慢できれば楽しめる本でしょう。最後の方は少しあきれましたが、ま、面白かったです。

早川書房 ★★

 

airframe.jpgなんか読んでなかったような気がして借り出し。もちろん既読でしたが、でもストーリーを覚えてなかったから、ま、いいか。

ようするに「航空機製造」と「マスコミの本質的発想・手法」についての面白解説本ですね。このへんはアーサー・ヘイリーなんかとよく似ています。ただヘイリーと違うのは随所にコンピュータふうの略語データが羅列されることでしょうか。

最初に読んだクライトン本、えーと、アンドロメダ症候群かな。なんとなく雰囲気が同じ。あの本も謎の展開に解けそうで解けないもどかしさがあり、やたら報告書の形で無機質なデータが羅列されていたような気がします。それが全体のイメージを盛り上げて行く。あるいは、迷路の深みに落としこんでいく。

ま、一応は一気に読めました。

集英社 ★★★

 

imagins.jpgケン・グリムウッドの「リプレイ」ですね。リプレイから深刻ぶったところを抜いて、1980年代風俗を混ぜこんだ読み物とでもいいましょうか。

したがってストーリーなんて本当はどうでもいい。なぜタイムスリップしたのか、特にSFふう解説はありません。理由は不明だけどたまたま青年がタイムスリップしてしまった。で、もし2003年から1980年にタイムスリップしたら、どんなふうに感じるだろうか、どう映るだろうか・・という興味です。

ストーリーのバックグラウンドにビートルズ、ジョン・レノンを流したのが正解だったかどうか。あるいはいきなり共産圏のスパイらしき人物が登場したのも成功だったかどうか。いろいろ瑕瑾はあるみたいですが、でも単純に懐かしさだけでページをくりました。

楽しめる一冊でした。

光文社 ★★

 

ghostsol.jpg副題は「第二次大戦最大の捕虜救出作戦」です。大戦末期、ルソン島の捕虜収容所に米軍レンジャー部隊が突入し、バターン行進生き残りの兵士たちを救出、という内容です。そんなことがあったんですね

ただ、よくあるレンジャー映画みたいな展開を想像するとガッカリするかもしれません。もちろん日本軍はアホみたいに描かれていますが、米軍捕虜も決して勇者ではない。ヒーロー役のレンジャー部隊も実はほとんど実戦初舞台みたいな連中で、そんなに凛々しくはありません。

さほど計画性もなかったし、超ラッキーに恵まれたみたいですが、まぁ何であれ結果的に数百人のレンジャーが突入し、ボケーッとしていた駐屯兵士たちを簡単に蹴散らして数百人の捕虜を救出し、用意してあった数十台の牛車に病人をのっけてギッチラオッチラと逃走した。協力するフィリピンゲリラたちは、ほんの1キロ先にキャンプを張っていた1000人の日本正規軍をバッタバッタと壊滅させた。

アホらしいような展開です。でも現実ってのは、案外こんなものなんでしょうね。

著者は米軍に対しても日本軍に対しても、わりあい公平な視点を維持しようとしています。それだけに読み終えると虚しさが残ります。ヒロイックな戦争なんて、ない。ひたすら愚劣です。

文藝春秋  ★★

 

shingen.jpg多分、未読だったと思います。

新田さんが晩年、力を入れて書いた本という記憶があったので、けっこう楽しめるかなと期待。風林火山4巻を一気に借り出しました。

結果はというと、うーん・・微妙なところですね。もちろん悪くはないんですが、好著かというと違うような気がする。武田晴信という人物、欠点も感情もある人間として最初のうちは描かれているようなのですが、巻が進むにつれてだんだん知略縦横、完全無欠の神様になってきます。というか、今川にしても北条にしても、上杉にしても、信玄に比べると二段も三段も格の落ちる矮小な人物として描かれてしまう。

ごく荒っぽく表現すると、人間としての面白さが感じられない。山本勘助にしても諏訪御前にしても、他のキャクターに魅力がなく深みがないから、結果的に主人公の信玄だけが金無垢の仏様みたいになってしまう。ま、そういう印象でした。

全4巻のうち3巻半ばまで読んで、ページを閉じました。残念。

早川書房 ★

 

ouroutachi.jpgほんの数カ月まえに読んだ本ですが、このところ読書力が衰えているためか、つい魔が差してまた借り出し。ちょうど今、元本の「A Clash of Kings」を再読してるところなもんですから。

さすがに新鮮さはありません。読み進むに従い、翻訳が鼻についてくる。このへん、もっと雰囲気のあるシーンのはずだけど・・・というようなケースがけっこうある。訳し方も「違うなぁ」と感じたりする。

そんなら借り出したりしなけりゃいいのに。こういう読み方は邪道でしょうね。

それにしてもこの表紙、たぶんAryaだと思うんですが、何してるんだろ。えらく美少女だし。馬面でボコボコ頭の汚い10歳には見えませんね。ま、それでも前作「七王国の玉座」の表紙イラストに比べればはるかにマシですが。

暇だらけのはずなんですが、何故かやることが多くて、本がよめません。不思議な話です。

ここ数日、読んでいるのはカタログとか旅行ガイドばっかりです。これも「読書」といえるのかな。そうそう、篠沢秀夫の「もうひとつのフランス」(白水社)を紀行資料として借り出してはいます。パラパラ読んでみたけど、ま、歴史ウンチクは別として具体的に役立つ本ではありませんでした

関係ない話だけど、篠沢さんの本を読むのは初めて。老齢の大家が好き勝手に書き散らしたというような文章で、はて、なんというか・・・。

朝日新聞社 ★★★

 

otokoniumare.jpg
副題は「江戸鰹節商い始末」

アラマタにしては熱の入った本です。まるで小説を書こうとしたような気配。ん? アラマタってそもそもは小説家かな、一応。いろんなことをやってる人なんで、わからなくなる。私は「博覧強記・役に立たない分野の文書収集家」というふうにとらえていました。今風に言うとトリビアンですね。

幕末、幕府がバタバタして江戸が物騒になった頃、日本橋の老舗の旦那連中が商人としての生き残りをかけて画策する。あるいは江戸っ子の気概を示そうとする。鰹節の「にんべん」、菓子の「榮太楼」、海苔の「山本山」、商社両替の「三井」など、馴染みの店名がたくさん出てきます。甘納豆や味付け海苔がこの頃に作られたものとは知りませんでした。

そういう意外性を含めて、なかなか楽しめた一冊です。それにしてもアラマタゲノムで知ったことですが、アラマタと杉浦日向子が一時期夫婦だったとは知らなかった。ヘェー・・です。

新潮社 ★★

 

hanjiro.jpg
このところ、読める本にでくわさない。数週前に借り出した海外SF数冊も途中挫折。

妻にすすめられて「おしゃべりワイン」(大村未菜 ベストセラーズ刊)を読む。ワイン雑学本だけど達者な文章で楽しく読めた。

で、この3連休に借り出したのが池波さんの「人斬り半次郎」。どういうものかなと半信半疑だったのですが、まぁ及第点。池波臭がちょっと強いものの、なんとか読めます。私の固定観念における桐野は「豪放」「恬淡」「単純」という程度ですが、ま、そういう扱いですね。特に青年時代の桐野(まだ中村か)はずいぶん可愛い男として描かれています。

ふと思いついて調べてみたら、桐野も体は巨躯だったらしい。実は村松剛の「醒めた炎」で「幕末の剣客、剣豪はみんな体が大きかった」という一節、目からウロコが落ちた記憶があります。やはり強くなるためには体力と腕力が必要。柔道と同じです。なんとなく小柄イメージの桂小五郎も実は大柄だったし(なんせ力・斉藤と言われた斉藤弥九郎 練兵館の塾頭)、坂本龍馬もそうです。だから池波さんが「西郷がもし小柄だったり貧相だったらあの活躍はなかっただろう」と何回も力説するのも納得できます。容貌、体力、身長・・人生のかなりの部分を支配しますね。池波さんは小柄だったんだろうか。

ソニーマガジンズ

 

挫折。読めませんでした。大森望の訳だからたぶん大丈夫と思ったんだけどなー。

人類と共生してきたレトロウィルスが突然発症して、ネアンデルタール女性がポモサピエンスを生んで、ナントカカントカで世界の女たちが流産して、ナントカカントカで・・美人の遺伝子学者(かな)と衛生局(たぶん)の若手と困った学者が、なんだか不明のガタガタで・・・・。

あきまへん。上巻の半分弱まで我慢したけど、ダメでした。2冊も借りて損をした。あらためて版元をみたらソニーマガジンズ。決して決めつけるわけではないけど、確率的には非常にダメです。借りる前に確かめればよかった。だいたいグレッグ・ベアで面白い本ってあったっけか。どうも相性が悪いみたい。

扶桑社 ★★

 

あまりにも有名な大部です。

kokumin.jpg内容に関しては、ま、だいたい想像できるレベルのもので、感動する人もいるでしょうし唾棄すべきものとして投げ出す人もいるでしょう。私の場合はけっこう興味をもって読み進み、でも前半3分の1くらいで挫折しました。面白くないことはないけど、でも飽きてくる。

それはともかく、この本の巻頭の口絵はいいですね。主として奈良平安のころの木彫を掲載したもので、これはいい。有名であるかどうか、重要文化財であるかどうかという観点からではなく(もちろん多少はあるでしょうが)、西尾幹ニという人が「自分の好きなもの」を集めた。いわば西尾の趣味的なギャラリーです。

こういう観点から集められたコレクションというか、写真集は一本筋が通っていてパワーがあります。けっこう趣味がいいじゃないの、とすら感じる。確かに日本には誇るべき文化があった、という点では西尾の主張をちょっと支持したくもなります。

毎日新聞社 ★★

 

shinbo.jpg下野日光の在から出てきた二人の少年が丁稚奉公。ほどなく感性を生かして花のお江戸で次々と起業商売、しかし大富豪になることもなく、感動的な恋愛があるわけでもなく、ま、骨身を惜しまず働いて子供にも恵まれ、そこそこの生活をしていく。

そういうお話です。ストーリーらしいストーリーがあるわけじゃありません。すべて辛抱、すべて努力の人生。目立たぬよう、後ろ指をさされないよう、しかし貧乏はしないよう、平凡といえば平凡な江戸町人の一生です。小説といえるかどうか、ちょっと疑問でもあります。

たぶん、半村さんはこういう坦々としたものを書きたかったんでしょうね。人生、ドラマなんてそうあるものじゃない。あるいは言葉を変えると、どんな庶民だって毎日が小さなドラマの連続でもあり、とりたてて大騒ぎするような出来事なんてあるもんじゃない。

半村良、何歳になったんだろう。勝手な解釈ですが、老境というものなのかもしれない。ストーリーと人間ドラマ作りの名手が、ストーリーに飽きた。派手なドラマを書きたくなくなった。

大川の水が流れるような、起伏のない上下巻です。

筑摩書房 ★

 

apatch.jpg副題は「アパッチの若き勇者」。古い通俗冒険小説らしいことは承知で借りたのですが、それでも「モヒカン族の最後」とか「ファラオの呪い」とか、ま、 その程は度楽しめるだろうと予想。見事にハズレ。

作者はドイツ人らしいです。したがって主人公はドイツから米国に渡った若き青年。正義感でめっぽう強くって、射撃の名手で馬も達者。バッファローは一発で倒すわ、グリズリーと格闘するわ。おまけに出会うアパッチの青年も美男で賢くて高貴でなんとかかんとかで・・。アホらしいながらも上巻の半分ほど読みました。で、ついに挫折。筑摩の本と思って信用したのが間違い。

いくら大衆小説とはいえ、こんな本がドイツで長期のベストセラーになっていたとは、不思議なものです。深く考えるべきではなく、真田十勇士とか鎮西八郎大活躍とか、そういうレベルでとらえるのが正しいのかな。

Bantam Book(たぶん) ★★★★


iceasndfire1-3.jpgこのところ取りついているA Song of Fire and Iceシリーズの第1巻「A Game of Thrones」をようやく読了。詳細はこちらの駄文コーナーに書きました。

早川書房 ★★★

 

ouroutachi.jpgこのところ取りついているA Song of Fire and Iceシリーズの第2巻「A Clash of Kings」の翻訳上下巻。早川からようやく出版されたのね。買う気は毛頭なかったけど、図書館に入っていたので借り出しました。

先に原文を読んで、それから翻訳を読むというのは不思議な感覚です。不明瞭だった部分がスッキリもするし、じっくり雰囲気を楽しんで数ページずつ味わった部分が、拍子抜けするほどあっさりになっていたりもする。

広い陰気な城内の厨房で一匹のネズミとして怯えながら生き延びていくAryaのあたり、陰々滅々とした情感、凄味が翻訳では妙に淡白になってしまう。というより、翻訳でも原文くらい一行一行じっくり読めばまた違うのかな。でも日本語だからついスイスイと読み飛ばしてしまって、まるっきり印象が薄くなる。

おまけに、これと同時進行で巻1の「A Game of Throne」を読んでるもんだから、頭の中が混乱している。AryaならAryaが、たとえば赤い城の中で放浪しているのか、それとも既に脱出して王の道をうろついているのか、それも錯綜してくる。

ま、それはともかく。面白く読み終えました。原文ではイマイチ理解していなかったBrave CompanionsとBloody Mummersの呼称の関係なんかも、ようやく解明。(実はいままでMummersの意味がよく分からなかった) そうだったのか・・がいっぱいです。

作品社 ★

 

shirato.jpg半分ほど読んで挫折。

つくづく考えてみると自分は特に白土の熱狂的ファンではなかった。そりゃ、読みましたけど。常に彼の階級論というか二極対比の世界に違和感を感じていたような気もする。

この四方田(名前ぐらいは知ってるけど、よくは知らん)という著者もたいして上手ではないのかな。本の最初の方では父親がどうとか、子供時代がどうとか、秋田、いや飽きた。

いずれにしても投げ出しました。失敗。

河出書房新社 ★★★

 

fushigino.jpgなんで今どきスタージョンなんだ?と借りてしまった。要するに大森望がアンソロジーしたのね、たぶん。

昔はよく読んだ作家です。今でも読んでみると、もちろん気が利いていて上手。上手だけど、なんというか・・・・。まるでレイ・ブラッドベリでも読み直すような感じで、なんか気恥ずかしい。

収録短編の中では「もうひとりのシーリア」が印象に残りました。なんだか知らないけど異星人がいて、人間の女性のふりをして堅気に生活している。毎日、人間の皮を洗濯して着替えないと命にかかわる。それなのに大切な替えの皮を変質男にイタズラで取られてしまった。異星(シーリアと言う名前でどこかの事務所に通勤している)は、抗議することもできず、ただ黙って死を迎えるしかない。そりゃ警察に届けるわけにもいきませんわな。理不尽な話です。

その理不尽さがスタージョンです。異星はただ黙って絶望して横たわって死にます。皮泥棒した男は、そんなことはすぐ忘れて、また部屋のぞきの趣味生活をはじめる。世の中、何も変化なし。どこかの小さな会社に勤めていたシーリアという地味な女が消えた、というだけの事件です。誰も気にしません。

集英社 ★★★

 

edouchiiri.jpg半村良なんて何年ぶり。少なくとも15年や20年は読んでいない。昔は大流行作家でしたが。

で、一読。さすがに達者、うまい人です。時代は秀吉の北条征伐から家康の江戸入りのあたり。三河の没落しかかった武家(豪族)のたった一人残った末弟・名前が鈴木金七郎ってんですから、上に6人はいた。で、父親ふくめて男はみーんな討ち死にしてしまって自分以外はすべて女家族、という設定。

その金七郎が仕方なく松平家忠(家康の分家筋)に人足奉公して、なぜかそれなりに取り立てられて、なぜか未開の江戸まで行くはめになった。彼らがしゃべってるのは三河弁、周囲にも英雄豪傑なんていません。ふつうの百姓、足軽、従軍坊主。庶民の感覚で歴史上の大事件を描いたらこうなる、というストーリーです。

庶民ですからね、自分たちがなぜあの城へ行かされるのか、なぜ重い碇を運ばされるのか、なぜ歩かされるのか、なーんにも知りません。なーんにも知らないで、江戸へたどりついてしまった。そして彼らが、江戸っ子の先祖になってしまう。そんな将来のことも、もちろん彼らはなーんもしりません。

朝日新聞社 ★★★

 

意外なことに、未読だった。

kaionjidate.jpgま、海音寺さんですから海音寺流の書き方。そんなに出来のいい方ではないような気もしますが、もちろんそれなりです。

伊達政宗を描くときというのは、常に鍵となるのが「美男子だったかどうか」「次男に期待する母親との関係」「父親見殺し事件」でしょうね。この本の場合は「色黒アバタ」「毒殺事件は政宗の演出=母親は冤罪」「傑物の父親。しかしあえて見殺し」と解釈しています。

要するに、実に食えない戦国大名です。悪知恵が働く。危ないな・・と思っても、つい美味しい話には手を伸ばしてしまう。それで何度も何度も危機にひんする。ライバルとなった蒲生なんて決して愚物ではなかったし用心もしていたんですが、それでも政宗のおかげでひどい目にあっています。でもこれぐらいワルのほうが、いかにも戦国の武将らしい。こういう男が晩年になって「馬上少年過ぐ・・」とか詠嘆する。

文春文庫 ★★★

 

honoonomon.jpgペルシャ侵攻にスパルタ軍の小部隊が全滅した、例のテルモピュレー(小説の表記ではテルモピュライ。どっちが正しいかは知らん)の戦いを描いたものです。

けっこう面白かったですね。超軍事大国スパルタの市民=戦士たちの生活、発想、戦い方などなど、非常に新鮮でした。強い戦士を育成するという点では、ある意味、完璧な合理性を追求したポリスなんだなーという印象。

寡聞にして知らなかったのですが、この地峡で全滅したのはスパルタ軍の先遣隊300人でしかない。世界史の授業では、なんでたったの300人なんだろうと疑問でしたが、要するにこの時点でスパルタは主力を投入する意志はなかったらしい。相手のクセルクセスは呼称200万!。ま、どう考えても勝てる戦いではなかった。ただし、あっけなく負けるわけにもいかない局所戦だった。

あと知らなかったのは、ギリシャ側はスパルタだけではなく、一応は連合軍だったということ。ただ、あくまで中核となるのはレオニダス王に率いられたスパルタの300人だったらしいですね。

細かい筋はどうでもいいんですが、ファランクス(重装歩兵密集陣形)の闘い方のイメージが非常に明確になりました。小説の中で登場人物が「戦闘は労働だ」と言う。確かにそんな雰囲気です。まるで大規模なスクラム押し合いのような雰囲気。最前列はもちろん槍を振るったり短剣で刺したりするんですが、ファランクス同士の衝突となるとその方陣の「圧力」が勝敗を決める。何重もの縦列が楯でグイグイと圧力をかけていく。相手を押し倒す。倒れた敵を踏みにじり、足元の敵を槍の石突き(釘のようになっている)で突き殺しながら前進する。

ですから押し切ったファランクスの後方は、地面がまるで畑のようにこねられてウネができている。浅くてもクルブシ。深い場合はふくらはぎので深さにもなる。当然、失禁もするし血も流れるんで、ドロドロです。泥田の中で牛が押し合ってるようなもんでしょう。

なるほどねー。こうした「労働力」では鍛え抜いたエリート戦士集団スパルタがピカイチだった。ただ、歴史的にはこのスパルタもテーバイのエパミノンダスが考案した斜方陣に破れ去る。その斜方陣も運用が非常にデリケートなんで、いつも成功するわけではなく、そのうちマケドニアの長槍方陣(破壊力抜群!)が主流となる。長槍も重くて扱いが難しそうですが、そのためマケドニアでは市民兵ではなく、熟練したプロの兵士を使っていたらしい。さらに鈍重なファランクスを核としながらも、軽装歩兵や騎兵などを加えて機動力を増したのがアレクサンドロス。

なかなか面白いものですね。

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