Book.18の最近のブログ記事

勉誠出版 ★★★
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面白そうと思って借り出したんですが、あははは、2年前に読んでましたこちらです。

それでもせっかく借りたので、また読み直しています。いい本です。

チンギス・カン(この本ではこう表記)は決して単細胞の武将ではなく、ケースバイケースで金の庇護に入ったりウイグル商人を利用したり、かなり頭脳派。

けっこう目からウロコがポロポロ落ちます。すごーく読みややすい・・という本ではないですが。


柏書房 ★★★
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ないないと言っていた自衛隊「イラク日報」ですが、なんやかんやゴタゴタの末、のり弁で公開。みっともない話です。

「存在しない!」「聞いてない!」は脊髄反射なんでしょうね。何か聞かれたら、とりあえず否定する。否定できなくなったら「怪文書」とけなす。それも通用しなくなったら「私はまだ読んでいない」と逃げる。それでもダメなら「丁寧に」「検討中」でひきのばす。プロジェクトチーム(PT)なんて手もある。

で、せっかく公開されたんなら・・と、日報を収録した本が数冊でています。これはその一つ。日報の黒海苔の部分はそのままページでも黒塗りです。

なかなか面白いんですが、みんな文章が達者ですね。というより、なんか同じような文体に見える。まさか変造ではないでしょうから、ひょっとして「こういうスタイルで書くのが推奨」みたいなモデルがあったんだろうか。軽妙で、ちょっとユーモアを交えて、人間臭くする。

半分ほど読んだところで返却期限がきてしまいました。最近、読むのに時間がかかります。

草思社 ★★★
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副題は「写真で読み解く晩年の慶喜」。ちなみに慶喜の名誉回復は明治中期からのようです。明治30年に静岡から東京に居を移し、31年には天皇に拝謁(ただし内々)。35年に公爵に叙せられ、これで公式に復権。それから没するまで(大正2年)の間の写真が多く掲載されています。

感じたこと。

昔の生活は大変なんですよね。家と家の付き合いは面倒で、家族の中でも序列があり、そうした秩序をきちっと守っていかないと暮らしていけない。生活できない。

たとえば何かでお祝いしてもらったら、その返礼訪問だけでも1日がつぶれる。馬車で数十軒とか。仮に玄関先で挨拶だけして、名刺を置いてすぐ次に回るだけでも大変。考えただけでも面倒です。

35年の名誉回復のあとはもう遠慮することなく、徳川一門や一族、家臣なんかが集まってはお祝いをしました。公式のものもあるし、もっと私的なものもある。宴のあとは庭に集まって集合写真。この写真がなんというか、味があるんですね。親戚たち、息子たち、娘たち、またそれぞれの正室とか女中とか側妾とか。みんな自分の地位と立場を考えて適当な場所に並んでいる。一人々々の顔を眺めてみるだけでも、いろいろ関係が読み取れます。実に面白い。

そうそう。重要なことではありませんが、慶喜ってのはあまり背が高くなかった。均整はとれているけど、どちらかというと小柄。よく見る抑制的な表情の写真だけではなく、ごく稀には微笑んでいるスナップ写真もある。ま、それがこの本のタイトルになっているんですが。

写真が貴重なだけでなく、当時の人間関係や動き、よく調べられている本です。


河出書房新社 ★★★★
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図書館に予約をいれたのが、たしか今年の2月頃。それから9カ月を経て、ようやく順番がきました。話題になって面白そうではあったけど買うのはちょっと躊躇・・・という本だったので。

ホモサピエンスってのは、ネアンデルタールなんかに比べると、とくに強くもないし賢くもない。雑多な「人類」仲間の中でも平凡な一派であったんだけど、ひとつだけ奇跡をおこしたんだそうです。たぶんDNAかなんかの突然変移でしょう、7万年前あたりに、いきなり「嘘」がいえるようになった。嘘というか、要するに「虚構」です。

つまり「結束」とか「計画」「将来」「展望」などなど、具体的な実態のないことについて話す能力。チンパンジーだって「ライオンが来たぞぉー」という程度の警報言語を持ってはいます。しかし「この前、ライオンがオレに話したことだけど・・・」と嘘をいう能力はない。

それが発展すると「オレたちみんなライオン一族だ。だから仲良くしなきゃいけないんだぜ」と誰かを説得したり、シンボルとしてライオンのトーテムを立てたりする。いわばライオン教団の誕生。結束した社会ができる。

これが「認知革命」です。非常に画期的。これによって、その日暮らしでバラバラな家族単位から、まとまりのある集団になることができた。複雑で難しい内容の会話をする能力が発達し、みんなで協力して、計画をたてて特定の何かをする。この点で、単純なネアンデルタールなんかとは決定的に違いができたんですね。肉体的にはひよわなホモサピエンスだけど、協力すれば頑丈なネアンデルタールにも勝てるし、凶暴な剣歯虎とも戦える。みんなで力をあわせてマンモスも狩れる。

で、その次にはたぶん「農業革命」ですか。最近の学説では常識ですが、農業を覚えたからといって狩猟採集生活より楽になったかというと違う。たぶん正反対。定住して、人口がやたら増えて、病気が蔓延して、大多数にとっては辛い生活になって、だから必死に仕事をする。悪循環。やがて富のへだだりが生まれる。食料の貯蓄が可能になって支配階級の誕生です。支配する者と支配される者の分離。

やがて「貨幣」も誕生。貨幣とか貴金属とか、もちろん完全な虚構ですね。たとえばゴールド。特に価値があるわけではなくて、単に黄色くてフニャフニャした金属でしかない。ゴールドに特別な価値があるのはあくまで「約束事」です。みんなが「金がいい」というから金に値打ちがうまれた。貨幣の次には手形とかカードとか、ま、延長です。

こんな具合にホモサピエンスは進化し・・・ん? 進化という言葉にもまやかしの価値観があります。正しくは「ホモサピエンスは変化した」でしょう。

ごく最近は大変革である「科学革命」とかもあって、なんか人類は急に幸せになったような錯覚がありますが、厳密にいえば別に幸せになったともいえない。厳寒の中世の冬に一本の薪を得た市民の喜びと、1Kのアパートから3LDKに引越しした喜び、どっちが幸福かと問われると返事は非常に難しい。

・・・という具合に、ホモサピエンスの歴史を容赦なく著者は解説していきます。筆致は非常にドライですね。スッキリしすぎて気分がいいくらい。遠慮とか躊躇がない

そうそう。枝葉ですが著者はブッダの教えにけっこう興味をもっているようです。ブッダが説いたのはシンプルに言うと「すべての欲望を捨てよう」ということだそうです。なるほど。欲望・渇望がある限り、貧乏人も金持ちも、貴族も乞食も、けっして完全に幸福にはなれない。だから欲を捨てよう。ちなみに幸せになろうという気持ちもやはり「欲」です。

比べると、キリスト教もイスラム教も、いろいろなにかすることで神様に気に入ってもらって、それで天国に行こうとしているような気がします。うん、この点でまったく違うわけですね、たぶん。

ま、いろいろ、面白い本でした。ベストセラーになったのも理解できた気がします。


筑摩書房★★★
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神保町のすずらん通と思うんだけど、なんとかというカレーの店がありましたね。黒潮とか南海とか、そんなふうな印象の名前。タールのように真っ黒なカレーで、カツなんか乗せるのが定番。やたら混んでいて、入り口から中を覗くとすぐ奥のオバはんに見つけられて、高圧的に相席を指示される。そのテーブルがまた狭い。今もあるか調べてみたけど、発見できませんでした。

ま、どうでもいい思い出です。私、神保町で古本を売ったことはありません。大学が地方だったんで、だいたい4割から5割が古本の買い取り相場と思いこんでいた。ところが東京はえらく安いんですね。それで懲りて、以後古本を持ちこんだことは皆無。たまに買うだけです。大通(靖国通かな?)をずーっと冷やかして歩いて、すずらん通りに回って、最後は三省堂というルート。

で、この本は神保町という古本街のなりたちです。幕末から今日まで。鹿島さん、実によく調べた。知らなかったけど、共立女子大にずーっといたらしいですね。それでいつも神保町を歩いていた。

いろいろ面白いことを知りました。明治初期の学制改革(というか場当たり)にふりまわされて、英語派、独語派、仏語派の戦いがあったこと。あっ、もちろんもっと前には洋学派と漢学派、国語派の対立です。正則と変則。そうした混乱の中で、東大、明治、日大、法政などなどの初期学校が誕生した。(訳のわからん話ですが、たとえば仏語学校はみんな理系ということになり、それが理科大学につながったとか。ん、違ったかな。とにかく大混乱です)

そもそもを言うなら、お役所の役人たちがアルバイトで教えていた都合で、地理的に近い神田のあたりに学校がたくさんでき、学校がたくさんできたので本屋街もできた。漱石もこのへんをウロウロしていたし、時代が下れば魯迅や周恩来も勉強したり酒を飲んだりしていた。

面白い本でしたが、ずっしり中身がつまっているので返却期限までに読みきれず。途中で返してしまいました。


集英社★★★
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この作家は初めて。新聞に連載をしていることは知っていますが、だいたい連載の新聞小説ってのは読んだことがない。毎日少しずつ・・というのが性分にあわないです。

で、将軍で最悪といったら、ま、数人しか候補にあがりません。義満とか義政とかもそうなんでしょうけど、ちょっと認知度がない。やはりふつうは徳川でしょう。犬公方か、でなかったらオットセイ公方。場合によっては家定も入るか。それくらい。


なるほど、なかなか達者な人です。通説をうまくひっくり返している。下馬将軍といわれるほど権勢を振るった酒井忠清をちょっと下げて、そのかわり次の堀田正俊を持ち上げる。ついでに母の桂昌院(お玉の方)を憎めない陽性の女性に設定し、正室の鷹司信子は好奇心あふれる賢い女性。

そして、みんながいちばん興味のある柳沢吉保は、ま、ごく普通の気の利く能吏でした。とくに悪賢くもなく、とくに善良というわけでもなし。ごく善意で発した犬猫保護策が誤解されて騒動になる。心得違いの逆上大名に切腹させたら、なぜか大騒ぎの討ち入り事件になる。なんかうまくいかない。

実際、飢饉やら噴火、地震、大火などなど、次から次へと災難があった。みーんな将軍の責任と言われれば、ま、仕方ないですね。平成の御世だって天皇は引退するし、上に立つ総理に徳がないんで次から次へと台風やら地震やら天変地異。後の世に「悪政もりかけ時代」なんて言われるかもしれません。

そうそう。この小説は中山義秀文学賞をもらったそうです。前にNHKの(ときどき作る)良質ドラマ「眩~北斎の娘~」も、この人のが原作らしいですね。あのドラマは宮﨑あおい、長塚京三、松田龍平、みーんな最高で素晴らしかった。


文藝春秋 ★★
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えーと、まあ、執事の目からみた天皇の日常とでもいうんでしょうか。とくに何かを意図した本でもなく「天皇ってのはこんな日常を送ってるんだよ」「陛下はこんなに考えて配慮して暮らしいるんですよ」という叙述。

坦々と書かれています。天皇という『仕事』、頼まれても承諾しないほうがいいですね。とにかく忙しくて気が張ってしんどい、辛い。

陛下、真面目なお人柄のようです。昭和天皇も生真面目だった気配がありますが、今上も同じ性格らしい。

そうそう。天皇にはやたら仕事があるけど、その中で祭祀絡みが実はかなり多い。なんせ日本の神道の総元締めなんで、たいへんです。もっとサボればいいと思うんですが、気がすまない。

意外だったこと。お手植えの田んぼで稲を育てるのは、明治になってから。民百姓の仕事を知ってもらいたいという趣旨で元勲が薦めた。カイコを飼うのも同様。こっちは昭憲皇太后(明治天皇の奥さん) が始めた。それぞれ時節柄の理由があってのことだったんだから、都合によっては中止してもいいはずなんですが、どうも今上は更に真面目にやって仕事をどんどん増やしているらしい。体に悪いです。

朝日新聞出版★★★
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半藤一利・加藤陽子の「昭和史裁判」を借り出したんだけど、前に読んだものだったことが判明。アホだなあ。ついでですがこの「会えてよかった」もなぜか表紙画像がフォルダーに入っていた。タイムスタンプを見ると去年の初夏ごろに借り出したらしい。読みやすい種類の本なのに、なぜ読了しなかったんだろう。不審。

とにかくボケが始まっていますね。「不審」じゃなくて、そういうものだと思うしかない。

で、読み始めましたが、うん、たぶん未読。「たぶん」といか言えないところが悔しいけど、記憶が明確でないんだから仕方ない。

そうそう。肝心の内容ですが、ま、安野さんが記憶に残る数十人について(おそらく)思いつくまま自由に脈絡なく書き綴ったもの。トシのせいか、記述の自由奔放さは達人の域です。あの足の長かった俳優、名前が出てこないけどえーと・・・・ そう、池辺良。あの人の随筆も晩年はあっちに飛びこっちを語り、もう神の領域でした。

そうそう。面白かったのは高峰秀子について。「高峰秀子には2パターンいて、片方はみんなが憧れる楚々たる美女。もう一人はとにかく口うるさい女」という趣旨で、これは笑ってしまった。確かにねぇ。


角川選書★★
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長男はもちろん昭和天皇で、下は高松宮三笠宮、あとは内親王で清宮(すがのみや)。紀宮(清子)とは違うよ。たしかオスガとかオスタさんとか言われていたような。当時の婦人誌では人気があった。自分が記憶しているのはこのくらいです。

で、昭和天皇のすぐ下の弟が誰だったか。これがいつも迷ってしまう。あれやこれや呻吟して、ようやく最後に出てくるのが秩父宮です。なんせ新聞でもニュース映画でも見たことがない。(昭和28年に没。知らないわけです)

この本、要するにどんな弟宮がいて、天皇との関係がどうだったかを記しているだけ。ま、それだけという感じでした。秩父宮が兄に対して批判的だったらしいことは知っていましたが、実は高松宮もそうだった

図書館でみかける分厚い「高松宮日記」、格調ありそうで、興味を持ちつつも敬遠してきました。たしか細川護貞(細川元首相の父)がこの人の秘書かなんかをつとめていたはずですね。高松宮妃は徳川慶喜の孫娘(喜久子)。そのまた妹(喜佐子)は榊原に嫁いで、後年書いた本では、亭主が高松宮絡みで憲兵に睨まれて云々という記述がある。高松宮一派は和平策謀していると思われていたらしい。

そうそう。明治の頃やたら多かった皇族がバッサリ整理されたのは、大正天皇(というより貞明皇后)がボコボコ男の子を産んだからだそうです。初の一夫一妻制で4人の男宮。こんなにいるんなら、跡継ぎは万全。万一に備えての予備皇族は不要だ・・・ということらしい。当時でさえ皇族が多すぎていろいろ問題だった。中には困った皇族もいるし、弊害が目立ったんでしょう。

だいたい皇族の存在意義は何か。これを真面目に考えると非常に憂鬱なことになる。直系以外の皇族ってのは、要するに「保険」です。ただ起床して飯を喰って元気に過ごして寝るだけでいい。その他に何をする必要もない。「オレもお役にたつぞ」なんてなまじ動くとみんなが迷惑する。なにもしないのがイチバン。

昭和天皇の場合も最初は女の子ばっかり(4人)続いて心配だったけど、その後で男が2人。周囲はホッとしたらしい。ただその後、まさか一族に男が絶えるだろうとは、夢にだに想像できなかった。

実情に合わなくなったのなら、典範を変更すればいいだけなんですけどね。後継ルールが皇祖皇宗のころから不変というわけでもなし。男系がどうとか血筋がどうとか、不思議なことを言い張る連中がいるのが不思議です。

秩父宮は海軍へ行きたかった。でも「順番がある」ってんで陸軍。ちょっと可哀相です。ちなみに海軍へ行かされた高松宮は、実は馬が好きだった。


早川書房 ★★★

道東の旅で読了。なんせ空港でたっぷり時間があったので、ひたすら読んでました。

読み初めてすぐ出てくる「介護人」とか「提供者」という言葉に違和感を持ちます。ん? SF仕立てなのかな。ヘールシャムという施設か学校かが重要な意味を持つらしい。

解説にもありましたが、主人公たちがどういう存在なのか、けっこう早い時点で見当がつきます。でも秘密探しがテーマの小説ではないので、それはどうでもいいようです。作者のカズオ・イシグロでさえ、この本を人に紹介するとき、秘密をバラしてしまってもいっこうに差しつかえないと言明しているようだし。

カズオ・イシグロは他に「日の名残り」しか読んでいませんが、土屋政雄という訳者が丁寧な仕事をしていますね。穏やかな雰囲気の半分以上をつくっている。はい。グロテスクともいえるような題材ですが、とくに事件らしい事件は起きません。些細な出来事の連続である遠い日々。ただしその記憶のミルクの中に、ちょっと消化しきれない粒々のような感覚だけが残ります。どんな粒かは、たぶん人それぞれで違う。

集英社 ★★
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阿刀田さんの書くものは、正直、あまり面白くない。面白くないけど、ときどき借り出してしまう。

今回のこれも旧約をいろいろ説明していて、ま、平凡な内容です。ただところどころに手塚治のマンガが挿入されているのがミソ。これもどうという内容ではないけど、手塚の絵は雰囲気があるんですよね。火の鳥の黎明編あたりの印象です。

ザッと読んでひっかかった点。

旧約の「神殿」の大きさです。単位はキュビト。肘から中指の先までの長さで、だいたい44センチ強。で、たとえばノアの方舟は長さが300キュビトだそうです。換算するとだいたい140メートル。ま、納得かな。

ところが栄華をほこったというソロモンの神殿は長さ60キュビドで幅が20キュビド。だいたい27メートル9メートル弱。神殿なのでそんなものかもしれませんが、作るのに7年もかけた。そして問題は宮殿です。これが長さ100キュビド、幅50キュビド。えーと、45メートルの22メートル。990平米くらいですか。300坪弱。

300坪の建坪って、そう驚くほどではないです。宿屋や個人住宅としてならべらぼうな広さですが、なんせ宮殿です。しかも名にし負うソロモンの宮殿。

このスペースに大広間があり控えの間があり、シバの女王が休憩した部屋があり、もちろん衛兵の控室もあり、台所もあり・・・と考えると、どうみても手狭すぎる。間口12間ということになりますが、ひょっとしたら幕末の越後屋のほうが広いかもしれない()。ちなみに皇居と比較すると、宴会なんかでよくテレビにうつる豊明殿が915平米らしいです

もっと不思議なのは、旧約関係のいろんな解説本、「あんがい狭い!」と書かれたのを目にしたことがない。どれもこれも「さすが豪華な神殿、宮殿」と讃えるだけ。どっかで固定観念に目が曇っているような気がします。

駿河町越後屋は間口35間あったそうです。60m以上。

作品社 ★★★
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図書館で見かけたので借出し。デュマだから面白いとはいえません。けっこうダラダラしたのもある。で、デュマがメアリー・スチュアートをどう思っていたのか、ちょっと興味。少なくとも美人だったらしいですから。

書中でもイングランドのエリザベスとメアリー・スチュアートのさや当てが頻出します。この二人、また従姉妹になるのか大叔母と姪とかになるのか。よく知りませんが、とにかく親戚ですね。

で、たとえばスコットランド大使にエリザベスが何度も確認する。メアリは私より美人なのか。色白なのか。背が高いのか、どうなのか。大使もこうした質問に答えるのは難しいでしょうね。「イングランドでは女王陛下にかなうような美女はおらぬかと存じます

こんな返事じゃエリザベスは不満。ついに「はい。女王陛下より少し背はお高いかと存じます」という返答をひきだしてエリザベスが喜ぶ。「私より高いのなら、それはスタイルがいいとは言えないわね。背が高すぎよ」

めんどうだなあ

デュマに言わせると「エリザベスは女である前に女王であった。メアリは女王である前に女であった」 うん、いかにもデュマが好きそうなセリフです。

で、とにかくエリザベスは大嫌いなメアリを幽閉して、最後は無理やり死刑。生かしておくには怖すぎたんだろうなあ。なんせエリザベスには子供がいないという弱点がある。大嫌いな女に「イングランドの王位を求めるわよ!」なんて言われたら死んでもしにきれない。

ま、結局はメアリの息子がイングランド王になったわけですけど。

そうそう。死刑命令への署名をさんざん迷ったあげく、いざ処刑のあとは「誰が執行したのよ。まだやるとは思っていなかったのに。責任者、出てこい!」とか大騒ぎして責任回避。まるでトランプです。困った女王だなあ。


文藝春秋 ★★★
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昭和天皇実録」というのは、宮内庁が24年かけて編纂、全60巻を平成26年から刊行開始して天皇皇后に奉呈というものらしい。いわば前天皇に関する公式史ですね。

で、半藤一利、御厨貴、磯田道史、保阪正康らが対談鼎談の形で、この出たばかりの「昭和天皇実録」について語る。今回の中身は昭和天皇の幼少期から開戦、終戦のあたりまで。

「実録」だからといって書かれたことをそのまま真っ正直に受け取るわけにはいかない。たぶん嘘は書いてないんだろうけど、問題は「書かれなかったこと」にある。あるいは「妙にページを使って」詳細を語っている部分。意図がある。

推測によると、非常に賢くセンスのいい書き手が、渾身の配慮の記述をしているもよう。嘘は書かない。でも真実も書かない。ただ他の多くの資料を参照し、行間を必死に読んでいくと、真実らしいものの断片が見えてくる。そういう性質のものらしいです。

ザーッと読み流しただけですが、天皇ってストレスの固まりだったんだなあ。母親には期待されず、弟からは突き上げられ、重臣も軍部もちっとも言うことを聞いてくれない

ただし「平和を祈念しながらも抵抗できず流されていって・・」という悲劇の人ともまた違う雰囲気。平和主義の天皇であり、同時に大日本帝国陸海軍の大元帥でもあり、そして皇祖皇宗の末の大神官としての立場もある。ややこしいんです、たぶん。

少なくとも「天皇になりたい・・」とは絶対に思わなくなる。


扶桑社 ★★★★
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アマゾンで購入。副題は「安倍政権が不信任に足る7つの理由」。税込みで745円です。

いそいで単行本化したため8月9日の初版には正誤表がついてるという話でしたが、1週間たたないうちにニ刷。修正されていました。けっこう売れているらしい。

手にとってみると、うーん、さすがに薄いですね。128ページじゃ仕方ないか。本というより、小冊子という言い方が正しい。380円くらいなら妥当という印象。でもそもそも「エダノ応援」と「シンゾー行状録・備忘録」として注文したような部分もあるし、文句いう気はなし。

中身は非常に優れています。民主主義や多数決の原理、議員内閣制とは何か。論理的かつ明快に説明しています。平易だけど格調がある。原稿なしの演説でそれができるのはすごいですね。

中3の社会か高校の公民あたりで副教材に使ったらぴったりというような本です。子供たちはぜひとも読んでほしい。そして保守の人にもぜひ読んでほしい。エダノという人は、ある意味では正統な保守です。

扶桑社によると、印税分は7月豪雨義援金として赤十字に寄付するそうです。それにしても、なんでフジサンケイ系列の「扶桑社」なんだろ。


筑摩書房 ★★
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なんか面白そうな気がして借出し。うーん、悪い本ではないですが、どう感想したらいいのか・・・。

要するに、徳川時代ってのは閉鎖的な暗い時代なんかではなくて、それなりに文化が花開いた時代だっだのだ。たとえばコレとかアレかと・・・・という事例集。そりゃそうだろ、という感じで、あまり驚きがなかった。

あ、驚きというか新事実。あの「折たく柴の記」の新井白石。彼がイタリア人宣教師から聞き書きした「西洋紀聞」の話が紹介されているんだけど、そこで白石がかなり小柄であることが判明。要するに背が低かった。小さい白石がでっかいイタリア人を尋問している。

だからどうということでもないですが、知らんかった。私、背が低いとか高いとか、牛肉が好きだったとか嫌いだったとか、瑣末なようでいてその人間を知るためにはけっこう重要と思っています。だから森鴎外が飯に餡を乗せて食べるのが好きだったなんて話、すごく面白いと思います。


朝日出版社 ★★★★
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たぶん「大草原の小さな家」は読んだことがあるような気がします。その前作がこの「大きな森の小さな家」。これは読んでないんじゃないかなあ。もうひとつ、「プラム・クリークの土手で」は土手に家をつくるようなストーリーのようで、たぶん読んでいない。「Little House books」シリーズです。

で、安野光雅のイラストがたっぷり(ほんとにたっぷり)入った本を発見。新訳で、いちおう安野が監訳したらしい。読みやすいように、わかりやすいように。

いい本でした。「こんなに挿絵をいれる本、もう無理」と安野が言ったようで、そりゃそうだ。ほとんど「絵本」ですね。シリーズの他の本も新訳で刊行する予定だったけど、作業が大変すぎたしあまり売れないのでやめた。

内容は大きな森でのインガルスー家の一年をていねいに描いたものです。鉄砲の手入れの仕方、保存食の作り方、キツネやクマの様子。雪が溶けて春になって、夏が過ぎ、秋。そしてまた冬。ウィスコンシン州あたりの森の生活がなんか楽しいような(もちろん実際は過酷)錯覚に陥る。

ウィスコンシンってのは北がスペリオル湖に面した州です。冬はそりゃ冷えるでしょう。まだ人が少なくて、森の中は動物たちが主役だった頃の話です。アメリカにはそういう森と草原の時代があった。


早川書房
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またやってしまった。なんか面白そうだな・・と借り出して、4分の1くらいまで来てから「あれれ」と気がついた。はい、既読でした

そんなに大昔でもないのになあ。それでもせっかく借りたので再読。ま、そこそこ悪くなかったです。

文藝春秋 ★★★
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わりあい新しい本のようです。去年の刊行。このキングはまだ生きてるほうで、えーと、最近亡くなったのはルグィンじゃなくて、もう少し前のSF系で、えーと、ほら、脳が豆腐になってる。うん「アンドロメダ病原体」のマイクル・クライトンか。もう死んで16年にもなる。最近とはいえないなあ。

ま、ようするに私はキングとクライトンを混同する癖があるようです。まったく作風も違うのにね。クライトンは亡くなってからも原稿発掘みたいな感じで、ときどき誰かとの共同執筆ふうにして刊行のケースがあるけど、たいていは悲惨です。達者な作家が参加しても、こういう無理な「共著」は失敗します。本来のテーストが違うからなんでしょうね。

ということで本書。えーと、「ミスター・メルセデス」の続編らしいです。「ミスター・メルセデス」ってのはキングがふつうのミステリーに挑戦の新境地という代物で、そこそこ人気はあったのかな。

で、結論。この本はキングとしてもBクラスでした。上下2冊で、舞台をつくる出だしの上巻はそこそこなんだけど、それを収束するはずの下巻がひどい。都合のいいドタバタ活劇で、手に汗にぎってメデタシメデタシ。それでも★3つは、ま、キングの腕でしょうね。少年と少女が登場して、いかにもの雰囲気を作っている。そこへ「ミスター・メルセデス」で登場したらしいデブの引退警官が都合よく出てきてハラハラドキドキ、都合よく事件を解決。いかにもB級、三流の幕引きでした。

ん、そもそもキングって、こういうパターンがけっこう多くないか? ズルズルズルッと盛り上げて、一気に怒濤のカタルシス。なんか釈然としないけど解決してしまう。

「抑えた筆致のキング」「多作で悪いか!のキング」の2人がいるような気もします。今回は書きなぐりの多作キング。


sekaitizu.jpg前から欲しかった「新詳高等地図」を注文。届きました。中学高校でおなじみ、帝国書院の地図帳です。それを教科書ではなく「ムック」という体裁で一般にも売っている。

地図、大昔に買った平凡社の世界地図帳(大枚はたいた記憶あり)がどうも気に食わなくて、ずっーと違うのが欲しかった。合う合わないってあるんです。たとえばシリアのあたりを調べたくてページをめくると(実際にそうだというんじゃなく、タトエバの話)、なぜかページの境目になるとか。関心のない部分はやけに詳細なのに、欲しい国は概略しかないとか。

要するに、自分の欲する情報が得にくい。関心の方向が違うんでしょうね。川とか掲載都市とかもどうも、違う感じかする。その点、慣れのせいかもしれないですが、帝国書院はいちばん見やすい気がする。それでいまだに子供が中高で使っていた古いのを引っ張りだして活用している。

で、その帝国書院の地図帳、Amazonにあることが判明。しかも去年から判型が変わって横幅が少し大判になったらしい。うん。買うなら、チャンスかな。 1728円。

ま、そういうことです。

届いてから嬉しくてザッと眺めましたが、ずいぶん中身が変わってしまったなあ。その方面に興味のある人なら垂涎の資料も満載です。地質とか、地形とか、産業とか。タモリも一冊もっているかもしれません。

さくら舎 ★★
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テーマは面白そうなんだけどなあ。惜しい本です。著者は英国のジャーナリスト兼ブロードキャスターらしく、日本でいったら誰に相当するんだろ。いま売れっ子の池上さんみたいな立ち位置だろうか。ま、広範な知識を持つすごい人なんでしょうけど、それぞれの分野の専門家ではない。広いけど、そんなに深くはない

地政学から代表的な国家の成り立ちや方向性を見る。たまたま指導者がどうのという問題ではなく、国家には宿命みたいな部分があるんですね。だからたとえば中国の場合、西の入り口である新疆ウイグル、南西の玄関チベット。ウイグルを失うと広大な中央アジアと素通しになるし、チベットという緩衝材がないと直接インドとぶつかる。

したがって、中国のどんな政権であろうと、こうした「危ない部分」を手当てしたいと思うのは当然の成り行き。この二方向をふさいでおくと、ようや安心できる。北にロシアはあるけどモンゴルの沙漠をへだてているし、北東は山。東と南は海。ベトナムとの国境だけは空いてるけど、ま、そんなに怖くはないだろう。たいてい大丈夫です

同じように、たとえば寒いロシアの場合だったら不凍港確保の問題がある。ソ連崩壊のゴタゴタでついウクライナを失ってしまったけど、これじゃ困る。それで必死でクリミアを確保した。プーチンの考えというより、ロシアという国家の希求なんでしょうね。他の誰かが大統領であっても、たぶんいつかクリミアを回復した。

という具合に、なかなか面白いんですが、ちょっと内容が浅い。「へぇー!」という驚嘆が少ない。目からウロコ部分もあるにはあるけど、どうでもいい(どこにでも書かれているような)常識的な記述が多いなあ・・・。

そうそう。翻訳はあまりよくないです。「東から西へ流れる黄河と長江」という一文に出会ったときは腰が抜けた()。校正が足りないのかな。ついでにですが、地図もひどい。原本のマップをてきとうに日本語化したのか、見にくくって仕方ない。資料としての価値がない。ぜんたいに「丁寧さ」が足りない印象でした。また奥付に「翻訳協力 トランネット」とあったけど、そういう専門の会社があるんでしょうね、きっと。ついでですが版元の「さくら舎」というのは新しい出版社のようです。コミックとか新感覚のハウツウ本が得意みたい。

「ロシアはインド洋への出口が欲しくてアフガンへ侵攻・・」なんて一節もあった。もちろんアフガニスタンは海に面していません。著者がいけないのかも。

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よくもこんなに見にくい地図をつくる・・・



河出書房新社(森谷公俊訳) ★★★
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もちろん読了なんてできません。それでも3分の1くらいは読んだかな。えらい

部分的にかじっただけなんですが、やはりプルタルコスなんて読むもんじゃないです。書かれていることは著者の好き勝手。完全に主観的な逸話集。しかも短い。ま、それでも後世に残ったからすごいのかな。残ったことに意義がある。

時間と余裕のあるときに、じっくり読んだらあんがい楽しいかもしれない・・・という本でした。豊富な(というよりこっちが本文)注釈が面白いです。ただ時間と余裕、いつになっても、何歳になっても、あいかわらず、ない。

話は違うけど、デュマのモンテクリスト伯、ローマのカタコンベで山賊の首領が英雄伝を読んでいる・・という部分があった。たぶんローソクの灯の下で読んでいる。もともとが羊飼いですから、けっこう苦労して文字を読んでるんでしょうね。ま、この当時だったらプルタルコスは教養の固まりみたいな本です。ルイジ・ヴァンパだったかな。


集英社 ★★★
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売れてる作家らしいことは知っていますが、読むのは初めて。「とうの」か「ひがしの」かがずーっと疑問でしたが、ようやく解決。ひがしのけいご。ズシッと厚みのある文庫です。

えーと、大阪の下町(かな)で、いきなり殺人事件がおきて、迷宮入り。被害者には暗い目をした男の子がいて、加害者と疑われた女には、綺麗だけど冷たい表情の女の子がいる。で、まもなく少女の母親は死ぬ。

この子供たちは何者???という仕立てですね。それぞれ高校生になり、少女は大学生になり、少年は家を出る。どっちも怪しい雰囲気です。女の子の周辺ではなぜか人が襲われたり死んだりする。闇の世界で生きることを選んだらしい青年は、危険な金儲けに走る。

この小説のいいところは、この二人の少年少女が連絡をとりあわないところです。いかにも共謀している雰囲気なんだけど、でも一緒にいるところを見られることはない。話をすることもない。したかもしれないけど、誰も知らない。

でも、たぶん、二人は子供のころから知り合っている。ひょっとしたら好き合っていたかもしれない。「かもしれない」だらけの小説です。それが、余韻。


河出書房新社(森谷公俊訳) ★★★
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実は吉川浩満の「理不尽な進化」を読み始めたんですが、なんか違和感というか既視感がある。でも再読にしては内容が新鮮だしまさか・・・と思っていたら、なんと去年に読んだ本だった。ひどいなあ。なんにも覚えていなかった。

それで改めてこのプルタルコスにとりかかりました。大部です。500ページ以上ある。ずっしり重いです。まだ読んでいる最中。

いわゆる「プルターク英雄伝」、つまりは「対比列伝」。ぜんぶで何人の英雄をあつかったか知りませんが、それぞれそんなに長いものではなかったような気がします。しかしアレクサンドロス大王だけで530ページですか。どういう本なのかと疑問に思ったわけですが、要するに注釈が多いんですね。プルタルコスの書いた本文が1ページあると、次に注釈が4ページくらい続く。

注釈といっても本文と同レベルのフォントサイズです。つまりは「本文」は「注釈」の導入目次のような役目を果たしており、要するにじっくり「注釈」を読んでいただくのが目的という本です。

ただしこの注釈、意外に面白いです。人名、地名、当時の政治情勢、人間関係、いろいろ。非常に詳しい。あんまり知られていない当時のマケドニアとかアジア、アレクサンドロスという人の行動、人間関係。けっこう新鮮です。

蛇足ですが、アレクサンドロスを扱った小説や伝記で、これまで面白いものを読んだことがない。データが錯綜しすぎているのか、嘘八百が多すぎるのか(プルタルコスだって嘘だらけです)、時代が古すぎるのか。あるいは逆手にとってやたら愛と情熱のストーリーになってしまうとか。

ただ、面白くもないフィクションを読むくらいなら、こうした「たぶん真実」「おそらく事実」「蓋然性としてはありそう」をたどるほうがまだしもマシですね。少なくともそこには想像の余地がある。


日刊工業新聞社 ★★
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地味な版元名からも想像できますが、いかにも本人が自分で書いたような内容です。あちこちに書いたものを集めたのかな。したがって(達者なゴーストライターが上手に構成したものじゃないので)読みやすい話ばかりではない。被害妄想的な印象の悪口もたくさんあるし、手放しでファザーコンプレックスも発露。心から父親を好きだったんだろうな。

ただ、悪い本ではなかったです。ある政治家の娘が書いた「父」と「自分」ですか。父を愛し、父を尊敬し、その父に愛され、ついでに亭主とも仲良く。家族はハリネズミのように丸まって外界と戦う。

この田中真紀子という人、あんまり身近にいると閉口かもしれませんが、離れて見るぶんにはわりあい好きです。いかにも豪腕、口八丁手八丁の印象ですが、あくまで本人の気分は「田中さんちのお嬢さん」のままなんでしょうね。あんがい、しおらしい。


原書房★★★
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副題は「英国の近代化をなしとげた女帝」。女王が「なしとげた」のか、たまたま「なしとげられた」時の女王だったのか。そのへんは諸説ありそうですが、ま、どうでもいい。あのエリザベス一世だって、積極的になにをした人なのか。むしろ「なにもしなかった」のが功績かもしれないし。

ずいぶん前に連続ドラマの「ダウントンアビー」にはまって(なかなか良かった。BBC制作だったかな)、その流れで次の「女王ヴィクトリア」も見たんですが、こっちはかなり質が落ちた。なにしろ女王がいつも胸を半分だしているようなドレスです。正装だったらそれに近い露出もあったでしょうが、普段着では無理でしょう。なんせヴィクトリア時代。おまけにサービスのつもりか、すぐ亭主のアルバートといちゃいちゃする。

ま、それやこれやでヴィクトリア女王に少し興味を持ったわけです。なーんにも知らないんですよね。小柄だった。太っていた。やたら子供を産んだ。長生きだった。喪服だった。ヨーロッパ中の王室と婚姻をむすんだ。で、大英帝国は近代化して大繁栄し、世界中の何割かを占有してしまった。パックスブリタニカ。

「図説」というコンセプトは良かったです。写真や絵が豊富な本で、著者はそもそもカメラマンらしい。グダグダ書かれるより、画像イメージは直截に当時の情報を伝えてくれる。

で、あらたにわかったこと。ヴィクトリアはパーマーストン(アヘン戦争。クリミア戦争)は大っ嫌いだった。ディズレーリー(スエズ運河買収、インド帝国成立)を気に入っていた。どうして嫌いだったり好きだったりしたのかというと、単に言葉づかいが無礼だったとか、女王のいうことを聞かないからとか。ま、そんな雰囲気です。ヴィクトリアはかなりワガママな人だった。おまけに短気だった。

幸いなことに亭主のアルバートというのが冷静沈着、いかにもドイツ人ふうに理詰め。よくしたもんです。おまけにこの夫婦は仲がよかった。一説によると、女王に口出しさせないためにせっせと妊娠させ続けたとも言われている。お腹がふくらむと人前には出ないのが礼儀でしたから邪魔されない。そのへんは保守的な人だったらしい。だから晩年、若い孫娘なんかが妊娠しているのに平気で体の線の出るドレスを着るのを嫌った。

良くも悪しくも英国のおばあちゃんだったんでしょうね。1901年没。その葬送の鐘と同時に輝かしい大英帝国の落日もまた始まった。あるいは陰りをおびた。そんなふうに記した本を読んだことがあります。あっ、ちなみにですが、写真に残った実際のヴィクトリアは表紙の絵とはかなり雰囲気が違います。どこにでもいそうな、あまり美人ではないふつうのオバはんです。そう。はじめて写真に撮られた君主でもあったわけです。


新潮文庫★★★
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人見知りで不器用で気弱・・と自分で思い込んでいる女が、もう死んでしまおうと(必死に)決心して、やみくもに北行きの列車にのり、更に嫌がるタクシーつかまえて「とにかく北へ行って!」と強要。山の中(かつ海のそば)のさびれた民宿にたどりつく。裏日本の海です。

で、汚い民宿の数年ぶりの客となって、勇気をふりしぼって計画通りに睡眠薬。湿気た布団の中でぐっすり眠って快適に目覚める。この落差が楽しいです。

民宿の主ってのはまだ若いけど汚い大男で、でもあんがい有能でもあり(というより女がべらぼうに無能でズレている)そのまま1泊1000円の客として長逗留。きれいな空気を吸ったり、うまい米を食ったり、星を眺めたり、飲み会では近所のオヤジたちに大モテだったり。

薄い文庫ですが、非常に楽しい一冊でした。文体にリズムがあって軽やか。民宿の主との交流はありそうでなさそうで、はて、どうなるのか。


新潮文庫★★★
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何気なく棚から抜き出し。かなり前に買った本です。

読み始めたらけっこう面白くて、すんなり読み切ってしまった。酒見賢一のデビュー作です。これでファンタジーノベル大賞。才能というものでしょうね。

中身はなんというか、ま、中国史伝ふうの匂いのあるファンタジーです。荒唐無稽。後宮に入った少女が好き勝手やって好き勝手に生きる話です。あまりにアホくさくて、つい笑ってしまう。しかし格調というか品はあります。すごーく褒めると脳の柔らかくなった中島敦。実際、作者は他の本ですが中島敦記念賞をとっています。

この作者では「陋巷に在り」の前半4分の1くらいもいいですね。主役は孔子の弟子である顔回です。ただし後半はだんだんアホらしくなる。「泣き虫弱虫諸葛孔明」も悪くはないけど、くどくて疲れます。そういう意味でデビュー作の「後宮小説」は長すぎずスッキリあっけらかんとして素晴らしいです。


講談社★★
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桐野夏生はたいてい面白いですね。えーと、東電OL事件にヒントを得たみたいな「グロテスク」、ユートピア共同体の「ポリティコン」、沖縄の汗と暑さが臭う「メタボラ」。ちょっと重いけど、飽きずに読める。

「猿の見る夢」は困ったオヤジの身勝手というか、思い切って卑小化した中年サラリーマンのお話。欲張りでスケベーでケチで。男だけでなく、ついでに周囲のオバサンもオネーサンもみーんなグイグイとえぐる。情け容赦なく晒す。うん、そうだよなー・・とは思うけど、別に読んで楽しくはないです。だから感想は「★★」。

こんなにオンナの正体を晒せるのは、やはり女性作家ですね。男だとどうしてもこれほどきつくは書ききれません。ちょっと甘くなります。(逆に主人公の中年男、身勝手な奴だけど、なんとなく甘い部分があって、書き手はそんなに嫌ってはいないのかな・・という感じもしします)


中公文庫 ★★★
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ちょっと前に映画化されましたね。妻夫木がバラエティに顔を出してやたら番宣していた。そのせいか本の表紙も映画バージョン。こういうの、あまり良くないと思うのですが。小説の人物イメージが現実の俳優に汚染される。かりに汚染でなくても、影響を受ける。

ま、ともかく。吉田修一はけっこう読めるという記憶だったので本棚から抜き出し。夕食前の時間を利用して何日かセコセコ読みました。面白かったです。

なるほど。殺人犯が整形して逃亡中。いかにも怪しい・・という人物が房総と東京と沖縄にいる。はて、犯人は誰だ。信じるのは誰で信じないのは誰か(テーマはたぶん「信じる」ということでしょう)。そして振り回されるのは房総の漁師(と娘)、東京のゲイ、沖縄の少女。

誰が演じたんだろうと当時の映画を調べたら妻夫木聡と綾野剛、渡辺謙と宮崎あおいと松山ケンイチ、広瀬すずと森山未来。よく揃えた。なるほどねぇ。


新潮文庫★★★
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重松清という作家、もちろん名前は知っていたけど、読むのはたぶん初めてじゃないかな。この作品で山本周五郎賞。それから何かで直木賞だったか。気になって調べてみたら「山本周五郎賞」受賞者には吉本ばなな、熊谷達也、荻原浩‥けっこう面白い名前が並んでいます。へんに直木賞とるより確率が高いのかもしれない。

で、この本。えーと、中学生の話です。いろいろあるけど、要するに中学生が何を考え、なにに鋭敏になり、なにを嫌がっているのか。自分のことを思い出してもそうですが、中学生ってのは「人類」に入れないほうがいいですね。幼児 → 子供 → (中学生) → 少年 → 大人 。幼児や子供でひとくくり、少年・大人でひとくくり。その中間の特殊な位置です。あくまで「中学生」という生き物と考えたほうが正しい。

というわけで、ストーリーはあまり重要ではありません。触ったら傷つきそうな肌を持っていて、しかし概観はあくまで鈍感そうな存在。信じられない大飯食らい。何を聞いても答えない。何を言っても反応しない。心の深いところでイジイジと役に立たないことを考え続けている。


草思社 ★★★    
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多くの資料を調べて書いたものなんだと思います。たぶん、労作。ただし内容はとくに面白いとか、興味をひくというものではない。

昭和天皇、あるいは今上天皇が欧州へ行くとなるとどれほど大がかりなことになるのか。周囲がどれだけ苦労するのか。ま、そういうことがわかります。たぶん担当の侍従とか外交官とか、このイベントを無事にこなしただけでも一生の仕事として誇れるんでしょうね。

いちばん面白かったのは、当時19歳だった皇太子、この時点で「握ったばかりの鮨」は生涯2コしか食べたことがなかったらしい。「握ったばかり」の意味がいまいち不明ですが、いずれにしても皇太子、握りを食べる機会なんてなかったんだろうな。

そうそう。ドラマにもなった「天皇の料理番」で、ナントカの宮の屋敷に鮨の屋台を設置して、みんなに握りをふるまったことがあると書いてあったような。自慢ふうに書かれていた記憶があります。関係ないけど主厨長アキヤマさんの作る料理、天皇はかなり飽きていたような雰囲気もある。ずーっと同じ人の料理じゃ、ま、そうでしょうね。だから地方巡幸なんかで違う味のものを食べる機会があると、お代わりして倍は食べた。

もう一つ。吉田茂の話術。自由に話すときはそれなりだったが、書かれた原稿を読むときになると、声は小さいしモゴモゴしていたらしい。「オレの力で日英の関係を修復・・」と意気込んでロンドン入りしたものの、うまくいかず、演説でも不評をかった。当時の日英関係はかなり険悪だった。皇太子がタマゴを投げられなかったのはラッキー。




幻冬舎  ★★
 
senshibanko.jpg黒鉄ヒロシの歴史マンガシリーズでは、大昔に読んだのが「新選組」。クセは強いけど、絵はよかった。新選組のアホ連中、好きなんだろうなきっと。面白い本でした。

で、図書館で発見したこの「千思万考」は淀殿とか秀頼とか、あるいは武田勝頼とかザビエルとか、おなじみの連中を適当に引っ張りだして勝手なことを書く。もちろん絵も掲載する。

悪くはないんですが、なんせ文体と切り口に「癖」が強いので、飽きます。あるいは疲れます。甘すぎる饅頭とか、辛すぎる味噌漬けみたいなもんですね。
 
そうそう。前に「乱乃巻」を読んでいたらしい。完全に忘れてた。

文藝春秋 ★★
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大昔の「生物と無生物のあいだ」の続編のような形です。ただしあまり力は入っていなくて、サラサラと軽く書いたもの。どこかに連載していたのかな。

ま、要するにもう一度ニューヨークにいく。今度は経済的な余裕もあるし、行ってきてもいいよと正式に大学が派遣してくれた大名旅行の留学です。で、昔と同じロックフェラー大学の研究室。

えーと、何が書かれていたっけ・・・と考えてみたけどあまり思い出せません。ニューヨークの景色と日常をさーっと描いたスケッチですね。昆虫採集の話もあったかな。虫網もって、虫の少ない公園をうろうろしていると怖そうなオバサンに叱られる。まあ、可哀相なチョウチョを捕まえようというのね、警察に通報しなくっちゃ。

そうそう。フェルメールのお話もありました。福岡さん、かなり入れ込んでるんですね。


光文社 ★★
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しばらく放置していた「神様からひと言」も、だらだらページをめくっているうちに読了。

かなり初期の本なのかな。ちょっと短気な青年が「お客様相談室」に配属される話です。名称は立派だけど、ま、要するにクレーム処理係。「いやなら辞表を出せ」という部署です。ここに詰めていると胃が痛くなり、そのうち心が折れる。

この作者、かなりサラリーマン経験があるようです。いかにも「いるいる」という課長だったり、係長だったり、若社長だったり。完全な悪人はいないけど、根性の悪い奴はいる。もっと多いのはいいかげんな奴、卑怯な奴。もちろん本当に信頼できる奴なんていない。

そうした吹き溜まりの相談室で我慢の日々。ちょっと救いがないんですが、ちゃーんと最後はカタルシス。印籠もった黄門様が登場します。やれやれ。


双葉社 ★★★
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荻原浩はたいてい面白く読めるので、安心してとりかかり。うん、想定通りです。

えーと、設定はかなり陳腐です。平成の御世のグータラ青年(趣味はサーフィン)がなぜか時空を越え、太平洋戦争末期、海軍航空隊の練習生と入れ替わってしまう

海軍航空隊ったって、予科練の地上教習を終えたばかりの若者です。身分としては下士官のすぐ下に位置する練習生なんだけど操縦はまったく下手。叩き上げの下士官たちからは(すぐ自分たちを追い越すため)目の敵で毎晩々々制裁をくらっている。えーと、正式には「海軍精神注入棒」だったかな。通称バッター。

という設定はともかく、この平成の世に筋金入りの軍国少年がどう生きたらいいのか。はたして「便利で平和で幸せだなあ・・」と感じてくれるのか。あるいは無気力に暮らしていた平成の青年は昭和19年、戦争末期の航空隊の過酷な内務班(海軍だから教班かな)でどうやっていけるのか。ちなみに飛ばせる飛行機もなくなって、彼らは回天要員となります。特攻魚雷ですね。

こんなふうなストーリーになるんだろうな・・という想像を裏切らない展開ですが、それにしては意外に良い。面白い本でした。あっ、終盤はまるで浅田次郎みたいに泣かせが入ります。荻原浩も悪達者になった。


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