Book.18の最近のブログ記事

集英社 ★★★
byakuyako.jpg
売れてる作家らしいことは知っていますが、読むのは初めて。「とうの」か「ひがしの」かがずーっと疑問でしたが、ようやく解決。ひがしのけいご。ズシッと厚みのある文庫です。

えーと、大阪の下町(かな)で、いきなり殺人事件がおきて、迷宮入り。被害者には暗い目をした男の子がいて、加害者と疑われた女には、綺麗だけど冷たい表情の女の子がいる。で、まもなく少女の母親は死ぬ。

この子供たちは何者???という仕立てですね。それぞれ高校生になり、少女は大学生になり、少年は家を出る。どっちも怪しい雰囲気です。女の子の周辺ではなぜか人が襲われたり死んだりする。闇の世界で生きることを選んだらしい青年は、危険な金儲けに走る。

この小説のいいところは、この二人の少年少女が連絡をとりあわないところです。いかにも共謀している雰囲気なんだけど、でも一緒にいるところを見られることはない。話をすることもない。したかもしれないけど、誰も知らない。

でも、たぶん、二人は子供のころから知り合っている。ひょっとしたら好き合っていたかもしれない。「かもしれない」だらけの小説です。それが、余韻。


河出書房新社(森谷公俊訳) ★★★
arexdaioden.jpg
実は吉川浩満の「理不尽な進化」を読み始めたんですが、なんか違和感というか既視感がある。でも再読にしては内容が新鮮だしまさか・・・と思っていたら、なんと去年に読んだ本だった。ひどいなあ。なんにも覚えていなかった。

それで改めてこのプルタルコスにとりかかりました。大部です。500ページ以上ある。ずっしり重いです。まだ読んでいる最中。

いわゆる「プルターク英雄伝」、つまりは「対比列伝」。ぜんぶで何人の英雄をあつかったか知りませんが、それぞれそんなに長いものではなかったような気がします。しかしアレクサンドロス大王だけで530ページですか。どういう本なのかと疑問に思ったわけですが、要するに注釈が多いんですね。プルタルコスの書いた本文が1ページあると、次に注釈が4ページくらい続く。

注釈といっても本文と同レベルのフォントサイズです。つまりは「本文」は「注釈」の導入目次のような役目を果たしており、要するにじっくり「注釈」を読んでいただくのが目的という本です。

ただしこの注釈、意外に面白いです。人名、地名、当時の政治情勢、人間関係、いろいろ。非常に詳しい。あんまり知られていない当時のマケドニアとかアジア、アレクサンドロスという人の行動、人間関係。けっこう新鮮です。

蛇足ですが、アレクサンドロスを扱った小説や伝記で、これまで面白いものを読んだことがない。データが錯綜しすぎているのか、嘘八百が多すぎるのか(プルタルコスだって嘘だらけです)、時代が古すぎるのか。あるいは逆手にとってやたら愛と情熱のストーリーになってしまうとか。

ただ、面白くもないフィクションを読むくらいなら、こうした「たぶん真実」「おそらく事実」「蓋然性としてはありそう」をたどるほうがまだしもマシですね。少なくともそこには想像の余地がある。


日刊工業新聞社 ★★
chichitowatashi.jpg
地味な版元名からも想像できますが、いかにも本人が自分で書いたような内容です。あちこちに書いたものを集めたのかな。したがって(達者なゴーストライターが上手に構成したものじゃないので)読みやすい話ばかりではない。被害妄想的な印象の悪口もたくさんあるし、手放しでファザーコンプレックスも発露。心から父親を好きだったんだろうな。

ただ、悪い本ではなかったです。ある政治家の娘が書いた「父」と「自分」ですか。父を愛し、父を尊敬し、その父に愛され、ついでに亭主とも仲良く。家族はハリネズミのように丸まって外界と戦う。

この田中真紀子という人、あんまり身近にいると閉口かもしれませんが、離れて見るぶんにはわりあい好きです。いかにも豪腕、口八丁手八丁の印象ですが、あくまで本人の気分は「田中さんちのお嬢さん」のままなんでしょうね。あんがい、しおらしい。


原書房★★★
q-victoria.jpg
副題は「英国の近代化をなしとげた女帝」。女王が「なしとげた」のか、たまたま「なしとげられた」時の女王だったのか。そのへんは諸説ありそうですが、ま、どうでもいい。あのエリザベス一世だって、積極的になにをした人なのか。むしろ「なにもしなかった」のが功績かもしれないし。

ずいぶん前に連続ドラマの「ダウントンアビー」にはまって(なかなか良かった。BBC制作だったかな)、その流れで次の「女王ヴィクトリア」も見たんですが、こっちはかなり質が落ちた。なにしろ女王がいつも胸を半分だしているようなドレスです。正装だったらそれに近い露出もあったでしょうが、普段着では無理でしょう。なんせヴィクトリア時代。おまけにサービスのつもりか、すぐ亭主のアルバートといちゃいちゃする。

ま、それやこれやでヴィクトリア女王に少し興味を持ったわけです。なーんにも知らないんですよね。小柄だった。太っていた。やたら子供を産んだ。長生きだった。喪服だった。ヨーロッパ中の王室と婚姻をむすんだ。で、大英帝国は近代化して大繁栄し、世界中の何割かを占有してしまった。パックスブリタニカ。

「図説」というコンセプトは良かったです。写真や絵が豊富な本で、著者はそもそもカメラマンらしい。グダグダ書かれるより、画像イメージは直截に当時の情報を伝えてくれる。

で、あらたにわかったこと。ヴィクトリアはパーマーストン(アヘン戦争。クリミア戦争)は大っ嫌いだった。ディズレーリー(スエズ運河買収、インド帝国成立)を気に入っていた。どうして嫌いだったり好きだったりしたのかというと、単に言葉づかいが無礼だったとか、女王のいうことを聞かないからとか。ま、そんな雰囲気です。ヴィクトリアはかなりワガママな人だった。おまけに短気だった。

幸いなことに亭主のアルバートというのが冷静沈着、いかにもドイツ人ふうに理詰め。よくしたもんです。おまけにこの夫婦は仲がよかった。一説によると、女王に口出しさせないためにせっせと妊娠させ続けたとも言われている。お腹がふくらむと人前には出ないのが礼儀でしたから邪魔されない。そのへんは保守的な人だったらしい。だから晩年、若い孫娘なんかが妊娠しているのに平気で体の線の出るドレスを着るのを嫌った。

良くも悪しくも英国のおばあちゃんだったんでしょうね。1901年没。その葬送の鐘と同時に輝かしい大英帝国の落日もまた始まった。あるいは陰りをおびた。そんなふうに記した本を読んだことがあります。あっ、ちなみにですが、写真に残った実際のヴィクトリアは表紙の絵とはかなり雰囲気が違います。どこにでもいそうな、あまり美人ではないふつうのオバはんです。そう。はじめて写真に撮られた君主でもあったわけです。


新潮文庫★★★
tengokuhamada.jpg
人見知りで不器用で気弱・・と自分で思い込んでいる女が、もう死んでしまおうと(必死に)決心して、やみくもに北行きの列車にのり、更に嫌がるタクシーつかまえて「とにかく北へ行って!」と強要。山の中(かつ海のそば)のさびれた民宿にたどりつく。裏日本の海です。

で、汚い民宿の数年ぶりの客となって、勇気をふりしぼって計画通りに睡眠薬。湿気た布団の中でぐっすり眠って快適に目覚める。この落差が楽しいです。

民宿の主ってのはまだ若いけど汚い大男で、でもあんがい有能でもあり(というより女がべらぼうに無能でズレている)そのまま1泊1000円の客として長逗留。きれいな空気を吸ったり、うまい米を食ったり、星を眺めたり、飲み会では近所のオヤジたちに大モテだったり。

薄い文庫ですが、非常に楽しい一冊でした。文体にリズムがあって軽やか。民宿の主との交流はありそうでなさそうで、はて、どうなるのか。


新潮文庫★★★
kokyushosetsu.jpg
何気なく棚から抜き出し。かなり前に買った本です。

読み始めたらけっこう面白くて、すんなり読み切ってしまった。酒見賢一のデビュー作です。これでファンタジーノベル大賞。才能というものでしょうね。

中身はなんというか、ま、中国史伝ふうの匂いのあるファンタジーです。荒唐無稽。後宮に入った少女が好き勝手やって好き勝手に生きる話です。あまりにアホくさくて、つい笑ってしまう。しかし格調というか品はあります。すごーく褒めると脳の柔らかくなった中島敦。実際、作者は他の本ですが中島敦記念賞をとっています。

この作者では「陋巷に在り」の前半4分の1くらいもいいですね。主役は孔子の弟子である顔回です。ただし後半はだんだんアホらしくなる。「泣き虫弱虫諸葛孔明」も悪くはないけど、くどくて疲れます。そういう意味でデビュー作の「後宮小説」は長すぎずスッキリあっけらかんとして素晴らしいです。


講談社★★
sarunomiru.jpg
桐野夏生はたいてい面白いですね。えーと、東電OL事件にヒントを得たみたいな「グロテスク」、ユートピア共同体の「ポリティコン」、沖縄の汗と暑さが臭う「メタボラ」。ちょっと重いけど、飽きずに読める。

「猿の見る夢」は困ったオヤジの身勝手というか、思い切って卑小化した中年サラリーマンのお話。欲張りでスケベーでケチで。男だけでなく、ついでに周囲のオバサンもオネーサンもみーんなグイグイとえぐる。情け容赦なく晒す。うん、そうだよなー・・とは思うけど、別に読んで楽しくはないです。だから感想は「★★」。

こんなにオンナの正体を晒せるのは、やはり女性作家ですね。男だとどうしてもこれほどきつくは書ききれません。ちょっと甘くなります。(逆に主人公の中年男、身勝手な奴だけど、なんとなく甘い部分があって、書き手はそんなに嫌ってはいないのかな・・という感じもしします)


中公文庫 ★★★
ikari.jpg
ちょっと前に映画化されましたね。妻夫木がバラエティに顔を出してやたら番宣していた。そのせいか本の表紙も映画バージョン。こういうの、あまり良くないと思うのですが。小説の人物イメージが現実の俳優に汚染される。かりに汚染でなくても、影響を受ける。

ま、ともかく。吉田修一はけっこう読めるという記憶だったので本棚から抜き出し。夕食前の時間を利用して何日かセコセコ読みました。面白かったです。

なるほど。殺人犯が整形して逃亡中。いかにも怪しい・・という人物が房総と東京と沖縄にいる。はて、犯人は誰だ。信じるのは誰で信じないのは誰か(テーマはたぶん「信じる」ということでしょう)。そして振り回されるのは房総の漁師(と娘)、東京のゲイ、沖縄の少女。

誰が演じたんだろうと当時の映画を調べたら妻夫木聡と綾野剛、渡辺謙と宮崎あおいと松山ケンイチ、広瀬すずと森山未来。よく揃えた。なるほどねぇ。


新潮文庫★★★
age.jpg
重松清という作家、もちろん名前は知っていたけど、読むのはたぶん初めてじゃないかな。この作品で山本周五郎賞。それから何かで直木賞だったか。気になって調べてみたら「山本周五郎賞」受賞者には吉本ばなな、熊谷達也、荻原浩‥けっこう面白い名前が並んでいます。へんに直木賞とるより確率が高いのかもしれない。

で、この本。えーと、中学生の話です。いろいろあるけど、要するに中学生が何を考え、なにに鋭敏になり、なにを嫌がっているのか。自分のことを思い出してもそうですが、中学生ってのは「人類」に入れないほうがいいですね。幼児 → 子供 → (中学生) → 少年 → 大人 。幼児や子供でひとくくり、少年・大人でひとくくり。その中間の特殊な位置です。あくまで「中学生」という生き物と考えたほうが正しい。

というわけで、ストーリーはあまり重要ではありません。触ったら傷つきそうな肌を持っていて、しかし概観はあくまで鈍感そうな存在。信じられない大飯食らい。何を聞いても答えない。何を言っても反応しない。心の深いところでイジイジと役に立たないことを考え続けている。


草思社 ★★★    
akihitotaikan.jpg
多くの資料を調べて書いたものなんだと思います。たぶん、労作。ただし内容はとくに面白いとか、興味をひくというものではない。

昭和天皇、あるいは今上天皇が欧州へ行くとなるとどれほど大がかりなことになるのか。周囲がどれだけ苦労するのか。ま、そういうことがわかります。たぶん担当の侍従とか外交官とか、このイベントを無事にこなしただけでも一生の仕事として誇れるんでしょうね。

いちばん面白かったのは、当時19歳だった皇太子、この時点で「握ったばかりの鮨」は生涯2コしか食べたことがなかったらしい。「握ったばかり」の意味がいまいち不明ですが、いずれにしても皇太子、握りを食べる機会なんてなかったんだろうな。

そうそう。ドラマにもなった「天皇の料理番」で、ナントカの宮の屋敷に鮨の屋台を設置して、みんなに握りをふるまったことがあると書いてあったような。自慢ふうに書かれていた記憶があります。関係ないけど主厨長アキヤマさんの作る料理、天皇はかなり飽きていたような雰囲気もある。ずーっと同じ人の料理じゃ、ま、そうでしょうね。だから地方巡幸なんかで違う味のものを食べる機会があると、お代わりして倍は食べた。

もう一つ。吉田茂の話術。自由に話すときはそれなりだったが、書かれた原稿を読むときになると、声は小さいしモゴモゴしていたらしい。「オレの力で日英の関係を修復・・」と意気込んでロンドン入りしたものの、うまくいかず、演説でも不評をかった。当時の日英関係はかなり険悪だった。皇太子がタマゴを投げられなかったのはラッキー。




幻冬舎  ★★
 
senshibanko.jpg黒鉄ヒロシの歴史マンガシリーズでは、大昔に読んだのが「新選組」。クセは強いけど、絵はよかった。新選組のアホ連中、好きなんだろうなきっと。面白い本でした。

で、図書館で発見したこの「千思万考」は淀殿とか秀頼とか、あるいは武田勝頼とかザビエルとか、おなじみの連中を適当に引っ張りだして勝手なことを書く。もちろん絵も掲載する。

悪くはないんですが、なんせ文体と切り口に「癖」が強いので、飽きます。あるいは疲れます。甘すぎる饅頭とか、辛すぎる味噌漬けみたいなもんですね。
 
そうそう。前に「乱乃巻」を読んでいたらしい。完全に忘れてた。

文藝春秋 ★★
kawaranaitame.jpg
大昔の「生物と無生物のあいだ」の続編のような形です。ただしあまり力は入っていなくて、サラサラと軽く書いたもの。どこかに連載していたのかな。

ま、要するにもう一度ニューヨークにいく。今度は経済的な余裕もあるし、行ってきてもいいよと正式に大学が派遣してくれた大名旅行の留学です。で、昔と同じロックフェラー大学の研究室。

えーと、何が書かれていたっけ・・・と考えてみたけどあまり思い出せません。ニューヨークの景色と日常をさーっと描いたスケッチですね。昆虫採集の話もあったかな。虫網もって、虫の少ない公園をうろうろしていると怖そうなオバサンに叱られる。まあ、可哀相なチョウチョを捕まえようというのね、警察に通報しなくっちゃ。

そうそう。フェルメールのお話もありました。福岡さん、かなり入れ込んでるんですね。


光文社 ★★
kamisamakara.jpg
しばらく放置していた「神様からひと言」も、だらだらページをめくっているうちに読了。

かなり初期の本なのかな。ちょっと短気な青年が「お客様相談室」に配属される話です。名称は立派だけど、ま、要するにクレーム処理係。「いやなら辞表を出せ」という部署です。ここに詰めていると胃が痛くなり、そのうち心が折れる。

この作者、かなりサラリーマン経験があるようです。いかにも「いるいる」という課長だったり、係長だったり、若社長だったり。完全な悪人はいないけど、根性の悪い奴はいる。もっと多いのはいいかげんな奴、卑怯な奴。もちろん本当に信頼できる奴なんていない。

そうした吹き溜まりの相談室で我慢の日々。ちょっと救いがないんですが、ちゃーんと最後はカタルシス。印籠もった黄門様が登場します。やれやれ。


双葉社 ★★★
bokutatinasenso.jpg
荻原浩はたいてい面白く読めるので、安心してとりかかり。うん、想定通りです。

えーと、設定はかなり陳腐です。平成の御世のグータラ青年(趣味はサーフィン)がなぜか時空を越え、太平洋戦争末期、海軍航空隊の練習生と入れ替わってしまう

海軍航空隊ったって、予科練の地上教習を終えたばかりの若者です。身分としては下士官のすぐ下に位置する練習生なんだけど操縦はまったく下手。叩き上げの下士官たちからは(すぐ自分たちを追い越すため)目の敵で毎晩々々制裁をくらっている。えーと、正式には「海軍精神注入棒」だったかな。通称バッター。

という設定はともかく、この平成の世に筋金入りの軍国少年がどう生きたらいいのか。はたして「便利で平和で幸せだなあ・・」と感じてくれるのか。あるいは無気力に暮らしていた平成の青年は昭和19年、戦争末期の航空隊の過酷な内務班(海軍だから教班かな)でどうやっていけるのか。ちなみに飛ばせる飛行機もなくなって、彼らは回天要員となります。特攻魚雷ですね。

こんなふうなストーリーになるんだろうな・・という想像を裏切らない展開ですが、それにしては意外に良い。面白い本でした。あっ、終盤はまるで浅田次郎みたいに泣かせが入ります。荻原浩も悪達者になった。


アーカイブ

最近のコメント

このアーカイブについて

このページには、過去に書かれたブログ記事のうちBook.18カテゴリに属しているものが含まれています。

前のカテゴリはBook.17です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

OpenID対応しています OpenIDについて