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新潮文庫★★★
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何気なく棚から抜き出し。かなり前に買った本です。

読み始めたらけっこう面白くて、すんなり読み切ってしまった。酒見賢一のデビュー作です。これでファンタジーノベル大賞。才能というものでしょうね。

中身はなんというか、ま、中国史伝ふうの匂いのあるファンタジーです。荒唐無稽。後宮に入った少女が好き勝手やって好き勝手に生きる話です。あまりにアホくさくて、つい笑ってしまう。しかし格調というか品はあります。すごーく褒めると脳の柔らかくなった中島敦。実際、作者は他の本ですが中島敦記念賞をとっています。

この作者では「陋巷に在り」の前半4分の1くらいもいいですね。主役は孔子の弟子である顔回です。ただし後半はだんだんアホらしくなる。「泣き虫弱虫諸葛孔明」も悪くはないけど、くどくて疲れます。そういう意味でデビュー作の「後宮小説」は長すぎずスッキリあっけらかんとして素晴らしいです。


講談社★★
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桐野夏生はたいてい面白いですね。えーと、東電OL事件にヒントを得たみたいな「グロテスク」、ユートピア共同体の「ポリティコン」、沖縄の汗と暑さが臭う「メタボラ」。ちょっと重いけど、飽きずに読める。

「猿の見る夢」は困ったオヤジの身勝手というか、思い切って卑小化した中年サラリーマンのお話。欲張りでスケベーでケチで。男だけでなく、ついでに周囲のオバサンもオネーサンもみーんなグイグイとえぐる。情け容赦なく晒す。うん、そうだよなー・・とは思うけど、別に読んで楽しくはないです。だから感想は「★★」。

こんなにオンナの正体を晒せるのは、やはり女性作家ですね。男だとどうしてもこれほどきつくは書ききれません。ちょっと甘くなります。(逆に主人公の中年男、身勝手な奴だけど、なんとなく甘い部分があって、書き手はそんなに嫌ってはいないのかな・・という感じもしします)


中公文庫 ★★★
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ちょっと前に映画化されましたね。妻夫木がバラエティに顔を出してやたら番宣していた。そのせいか本の表紙も映画バージョン。こういうの、あまり良くないと思うのですが。小説の人物イメージが現実の俳優に汚染される。かりに汚染でなくても、影響を受ける。

ま、ともかく。吉田修一はけっこう読めるという記憶だったので本棚から抜き出し。夕食前の時間を利用して何日かセコセコ読みました。面白かったです。

なるほど。殺人犯が整形して逃亡中。いかにも怪しい・・という人物が房総と東京と沖縄にいる。はて、犯人は誰だ。信じるのは誰で信じないのは誰か(テーマはたぶん「信じる」ということでしょう)。そして振り回されるのは房総の漁師(と娘)、東京のゲイ、沖縄の少女。

誰が演じたんだろうと当時の映画を調べたら妻夫木聡と綾野剛、渡辺謙と宮崎あおいと松山ケンイチ、広瀬すずと森山未来。よく揃えた。なるほどねぇ。


新潮文庫★★★
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重松清という作家、もちろん名前は知っていたけど、読むのはたぶん初めてじゃないかな。この作品で山本周五郎賞。それから何かで直木賞だったか。気になって調べてみたら「山本周五郎賞」受賞者には吉本ばなな、熊谷達也、荻原浩‥けっこう面白い名前が並んでいます。へんに直木賞とるより確率が高いのかもしれない。

で、この本。えーと、中学生の話です。いろいろあるけど、要するに中学生が何を考え、なにに鋭敏になり、なにを嫌がっているのか。自分のことを思い出してもそうですが、中学生ってのは「人類」に入れないほうがいいですね。幼児 → 子供 → (中学生) → 少年 → 大人 。幼児や子供でひとくくり、少年・大人でひとくくり。その中間の特殊な位置です。あくまで「中学生」という生き物と考えたほうが正しい。

というわけで、ストーリーはあまり重要ではありません。触ったら傷つきそうな肌を持っていて、しかし概観はあくまで鈍感そうな存在。信じられない大飯食らい。何を聞いても答えない。何を言っても反応しない。心の深いところでイジイジと役に立たないことを考え続けている。


草思社 ★★★    
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多くの資料を調べて書いたものなんだと思います。たぶん、労作。ただし内容はとくに面白いとか、興味をひくというものではない。

昭和天皇、あるいは今上天皇が欧州へ行くとなるとどれほど大がかりなことになるのか。周囲がどれだけ苦労するのか。ま、そういうことがわかります。たぶん担当の侍従とか外交官とか、このイベントを無事にこなしただけでも一生の仕事として誇れるんでしょうね。

いちばん面白かったのは、当時19歳だった皇太子、この時点で「握ったばかりの鮨」は生涯2コしか食べたことがなかったらしい。「握ったばかり」の意味がいまいち不明ですが、いずれにしても皇太子、握りを食べる機会なんてなかったんだろうな。

そうそう。ドラマにもなった「天皇の料理番」で、ナントカの宮の屋敷に鮨の屋台を設置して、みんなに握りをふるまったことがあると書いてあったような。自慢ふうに書かれていた記憶があります。関係ないけど主厨長アキヤマさんの作る料理、天皇はかなり飽きていたような雰囲気もある。ずーっと同じ人の料理じゃ、ま、そうでしょうね。だから地方巡幸なんかで違う味のものを食べる機会があると、お代わりして倍は食べた。

もう一つ。吉田茂の話術。自由に話すときはそれなりだったが、書かれた原稿を読むときになると、声は小さいしモゴモゴしていたらしい。「オレの力で日英の関係を修復・・」と意気込んでロンドン入りしたものの、うまくいかず、演説でも不評をかった。当時の日英関係はかなり険悪だった。皇太子がタマゴを投げられなかったのはラッキー。




幻冬舎  ★★
 
senshibanko.jpg黒鉄ヒロシの歴史マンガシリーズでは、大昔に読んだのが「新選組」。クセは強いけど、絵はよかった。新選組のアホ連中、好きなんだろうなきっと。面白い本でした。

で、図書館で発見したこの「千思万考」は淀殿とか秀頼とか、あるいは武田勝頼とかザビエルとか、おなじみの連中を適当に引っ張りだして勝手なことを書く。もちろん絵も掲載する。

悪くはないんですが、なんせ文体と切り口に「癖」が強いので、飽きます。あるいは疲れます。甘すぎる饅頭とか、辛すぎる味噌漬けみたいなもんですね。
 
そうそう。前に「乱乃巻」を読んでいたらしい。完全に忘れてた。

文藝春秋 ★★
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大昔の「生物と無生物のあいだ」の続編のような形です。ただしあまり力は入っていなくて、サラサラと軽く書いたもの。どこかに連載していたのかな。

ま、要するにもう一度ニューヨークにいく。今度は経済的な余裕もあるし、行ってきてもいいよと正式に大学が派遣してくれた大名旅行の留学です。で、昔と同じロックフェラー大学の研究室。

えーと、何が書かれていたっけ・・・と考えてみたけどあまり思い出せません。ニューヨークの景色と日常をさーっと描いたスケッチですね。昆虫採集の話もあったかな。虫網もって、虫の少ない公園をうろうろしていると怖そうなオバサンに叱られる。まあ、可哀相なチョウチョを捕まえようというのね、警察に通報しなくっちゃ。

そうそう。フェルメールのお話もありました。福岡さん、かなり入れ込んでるんですね。


光文社 ★★
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しばらく放置していた「神様からひと言」も、だらだらページをめくっているうちに読了。

かなり初期の本なのかな。ちょっと短気な青年が「お客様相談室」に配属される話です。名称は立派だけど、ま、要するにクレーム処理係。「いやなら辞表を出せ」という部署です。ここに詰めていると胃が痛くなり、そのうち心が折れる。

この作者、かなりサラリーマン経験があるようです。いかにも「いるいる」という課長だったり、係長だったり、若社長だったり。完全な悪人はいないけど、根性の悪い奴はいる。もっと多いのはいいかげんな奴、卑怯な奴。もちろん本当に信頼できる奴なんていない。

そうした吹き溜まりの相談室で我慢の日々。ちょっと救いがないんですが、ちゃーんと最後はカタルシス。印籠もった黄門様が登場します。やれやれ。


双葉社 ★★★
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荻原浩はたいてい面白く読めるので、安心してとりかかり。うん、想定通りです。

えーと、設定はかなり陳腐です。平成の御世のグータラ青年(趣味はサーフィン)がなぜか時空を越え、太平洋戦争末期、海軍航空隊の練習生と入れ替わってしまう

海軍航空隊ったって、予科練の地上教習を終えたばかりの若者です。身分としては下士官のすぐ下に位置する練習生なんだけど操縦はまったく下手。叩き上げの下士官たちからは(すぐ自分たちを追い越すため)目の敵で毎晩々々制裁をくらっている。えーと、正式には「海軍精神注入棒」だったかな。通称バッター。

という設定はともかく、この平成の世に筋金入りの軍国少年がどう生きたらいいのか。はたして「便利で平和で幸せだなあ・・」と感じてくれるのか。あるいは無気力に暮らしていた平成の青年は昭和19年、戦争末期の航空隊の過酷な内務班(海軍だから教班かな)でどうやっていけるのか。ちなみに飛ばせる飛行機もなくなって、彼らは回天要員となります。特攻魚雷ですね。

こんなふうなストーリーになるんだろうな・・という想像を裏切らない展開ですが、それにしては意外に良い。面白い本でした。あっ、終盤はまるで浅田次郎みたいに泣かせが入ります。荻原浩も悪達者になった。


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