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検索をかけてみたら、今年は★★★★が1冊。ハズレ年です。

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その希少価値の一冊も村松剛の「帝王後醍醐」ですからね。香港貧困ぶりは推して知るべし。

このころで面白いのは「神皇正統記」の北畠親房(近藤正臣似)という公家さん。ま、例の(ゴクミ似の)北畠顕家の父親ですが、なんせ東国転戦中、ほとんど記憶だけで書いたらしいプロパガンダ本()。それを後になって水戸光圀あたりが掘り返して皇国史観。迷惑な話でもあり、訳のわからない話でもある。

なにしろこれは基本的に南朝擁護のストーリーです。で、光圀の時代はとうぜん北朝の系譜であり、北朝史観に幕府も立っている。その幕府に楯突くような言説を「副将軍」がなした。

おまけに幕末は頭に血ののぼった志士たちが、現天皇の正当性に文句つけた南朝史観の英雄をたてまつる。児島高徳だとか楠木正成だとか。なんか奇妙な話なんです。で、明治昭和の御世になってもそれが続く。(戦後生まれの自分でさえ、メンコ絵の定番は新田義貞とか源義経だった記憶あり)


不思議だなあ。ほんと、訳わかめ

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あとは★★★で「日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか」(矢部宏治)でしょうか。要するに戦後日本が不可思議な外交というか対米服従を継続して、現在に至る。
やはりこのあたりの元凶はアベの祖父ですかね。戦時内閣の商工大臣が不死鳥のように復権して、総理にまでのぼりつめる。おまけに日本の進路を決定する。それだけでも凄いのに、その負傷の 不詳の 不肖の孫が更にその路線を押し進める。不思議な国です。


これも★★★。荒俣宏の「日本まんが 第壱巻 第弐巻」も読んでよかったです。なんとなく綺麗なエピソードばっかりのトキワ荘とか、苦労人のはずの水木しげる、繊細なイメージもある松本零士。思い込みがみーんなひっくり返される。

あははは、と笑ってしまいました。

言い過ぎですね。「プロパガンダ本」ではないというとらえ方もあるらしい。いずれにしても摩訶不思議な一冊。

集英社★★★

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図書館の棚に6冊並んでいたので、そのうち4冊を借り出し。一 火眼 二 鳴動 三 虹暈 四 遠雷。全部にしなかったのは、さすがに重いし、飽きるかもと用心したためです。

えーと、北方謙三ってのは今まで「破軍の星しか読んでないかな。破軍の‥は16歳で陸奥守になって東北へいった北畠顕家です。いま再放送やってる30年前の「太平記」では後藤久美子が顕家をやって評判をとった。あっ、評判です。「名演だった」という意味では必ずしもありませんが、でもよくやった。可愛いかった。関係ないですが近藤正臣はこの頃から渋い演技をしてたんですね。

でまあ「チンギス紀」ですが、チンギスカンの出世物語を一本銚子調子で描いたものではないようです。一本調子でも文句はないんですが、やたら枝葉を伸ばしていろいろ書き込む。ジャンダラン(ジャダランのほうが一般的?)族のジャムカとか、トオリル・カンとか。メルキトのトクトアなんて孤独癖の族長も登場して、かなり魅力的に描かれています。

そうやっていろいろ書き込んで、それで膨大なページ数になるんでしょうね。この「チンギス紀」もたぶん「九」くらいは刊行してるようですが、はてどこまで進行しているのか。下手するとまだモンゴル統一もできないなかったりして。(

面白かったけど4巻読んだので、もうこのへんでオシマイにします。少し飽きた。ちなみに、まだテムジンは数千の兵を擁しているだけです。モンゴル族はまだバラバラ

「巻九」はどうもナイマン攻撃らしい。自信ないけどジャムカがまだ生きている。

顕家の奥州十七万騎についてはこちらでも書いてました。
チンギスカンについてワタシが知ってることはすべて井上靖の「蒼き狼がモトですね。名著と思います。

文芸社★★
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最後の瞽女については何冊かの本があるようです。たぶん、そのうちの一冊。

1900年の生まれと書かれていました。明治33年。きつい時代ですね。障害者への差別は半端じゃない。豊かな家なら離れとか土蔵で育てられたり。貧しければ、言うにはおよばず。外に出ればののしられる。石を投げられる。とくに田舎の子供は残酷です。

この小林ハルさんは豊かな農家の生まれらしく、目を悪くしてからは生母がきつく躾けた。理不尽に感じられるくらい厳しかったらしい。ただ、そのおかげで一人で生きる術を身につけた。自分を主張しない、口答えしない。ひたすら耐える。

瞽女になってからも周囲の大人、養女、係累、ひどい連中がいっぱいいた。その代わり、親切にしてくれる人もいた。唄をうたって三味線ひいて門付けして歩けば、盲目の女でもなんとか飢えをしのげた。たぶん、多少の貯えもつくれた。

ま、そうやって生きてきた。年取って廃業してから入った養老院でも、最初は必ずしも安穏ではなかったようです。意地悪な人間はどこにでもいる。でもそのうち周囲がだんだん暖かくなってくる。そしてふとしたことから「最後の瞽女」なんて呼ばれ、本を出版させられたりレコーディングされたり表彰されたり。最後は人間国宝

そういう人がいたんですね。晩年は105歳まで生きた。芸に感動して後継者も出現した。瞽女ではないけど瞽女唄をうたい継ぐ。

悲惨な内容でもあります。頻出する新潟弁もあって、決して読みやすい本ではなかったです。


実業之日本社 ★★

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うーん、先日の「将軍家康の女影武者」と同様、読み通すのがかなりつらい。最近の傾向なのかな。とりあげるべき武将がいなくなったとか。

主人公は鍋島直茂。龍造寺の重臣であり忠実な知恵袋。でも主人の隆信が戦死すると実質的なトップになってしまう。力もあったし要領もよく、秀吉、家康に気に入られ、結果として乗っ取った。ま、そういう人です。肥前佐賀藩の実質的な開祖。

ひたすら小さな戦闘の描写が続きます。なんせ気の荒い連中が多い九州です。やたら戦う。やたら裏切る。やたら殺す。戦闘がずーーーーっと続いて、最後のほうで急に惣無事令になって、朝鮮出兵があって、関ヶ原。

なんかなあ。あんまり傑作とはいえません。基本的には「慶長・元和大津波奥州相馬戦記」と同じような内容なんだけど、味が薄れた。コクがない。ようするに単調

岩波書店★★★
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前に読んだ「選集 1 2」の続きです。どうしてもというほどではないけれど、ま、読んで損するような本ではないし。

内容はわりあい最近分のエッセーですね。最近といっても、どれくらい前になるのか。再婚して、子供が生まれたせいか、家事とか育児に関してが多いです。

記憶に残ったのが下の子の夜泣きの話。恨みがあるかのように、泣く。わが子とはいえ、殺意が沸く。うんうん。そうだよな。時折問題になっている幼児相手の首ガクガクゆさぶり、もちろんしないけど、やりたい気になるのは理解できる。

その夜泣き、夫婦で話しあった結果、コミュニケーション不足が原因ではないかと推測。次男ということでつい話しかけをサボってしまっていた。

要するに嬰児は何か要求があるから泣くわけです。意思を伝えるのに、泣く以外の方法があることはこの子はまだ知らない。だからひたすら泣く。もっと親が話かける時間を増やしてみようか。 世の中にはコトバというものがあるんだよ。

そこで就寝前の1時間、たっぷり話しかける時間をとってみたそうです。その結果は・・・大成功。夜泣きがガクンと減った。ただ反比例して、独占から外された上の子の目つきが嫉妬で・・・というのがオチ。

ちなみに伊丹さんは非常に熱心に教育にあたった。何によらず熱中する人なんですね。たとえば家にあったプーさんの本、漢字にすべてルビをふったとか。すごい。

余計なことですが、自然食もこころがけた。前述の夜泣き嬰児にも豆乳をせっせと飲ませた。成人したその子の話では、ハンバークは納豆製だったし米は玄米だった。学校いくようになっても、弁当ご飯は茶色なのが当然と思っていた。玄米弁当は同級生に「腐ってる!」とからかわれた。ぐうぜん友達の家で食べた白いご飯はとても美味しかった。

そのうち伊丹が歯を悪くして、硬い玄米が噛めなくなった。やむなく白米専用の炊飯器も購入。子供はもちろん白いのを食べたし(おいしい)、抵抗してた「宮本さん」も、そのうち降参して白米ご飯になったそうです。

よかったよかった。


中央公論新社 ★★★
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図書館の本棚、習慣的に新作をチェックする奥田英朗のすぐ隣に、この奥泉光の著作が並んでいて、間違わないよう気をつけているうちに名前を覚えてしまった。

で、いつだったか、新聞にその奥泉光のエッセー掲載。パン作りの話だったかな。けっこうセンスが良かった気がして、それで再認識して借り出しました。なるべく厚めの本を選んだわけです。

えーと、最初のうちはなかなか良かったです。戦前の伯爵かなんかの娘。一般的な美人じゃないけど、ま、変わった魅力がある。怪しいというべきかな。しかも理系で、碁とか数学とか。そんなふうがわりな華族のお嬢様が、実はしたたかというか、怖いというか。おもしろいキャラクターでした。

で、小説の中身は、ま、人死にもあり謎だらけでもあり推理小説でしょうか。そういう仕立てです。ただほんとうに推理ものかというと違って、半村良みたいなドロドロ伝奇小説の匂いもある。少し無理している感じもあるけど、ドイツでの優良人種論争とか、天皇機関説排斥問題とか、二・二六にむかって騒然とした(あるいは意気軒昂たる)当時の雰囲気はよくわかる。

そういう「雰囲気」を味わうのなら、けっこうお薦めです。場合によっては、簡便な昭和世相史としても読めるかな。


岩波書店 ★★★
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伊丹十三の著作というと、ちょっと鼻にかけた偉そうなエッセーという記憶。スパゲッティの食べ方とかサラダの作りかた云々。日本がまだ三流国だったころ、西欧の洒落たアレコレ作法をスマートに紹介してくれた。面白いことは面白いけど、あんまり好かん。あいつのせいで日本中、えせ通人、半可通ばかりはびこってしまった()。

今回、選集があったので借り出しました。ザッと読んでみると、思い込みとはかなり印象が違います。スパゲッティの茹で方、料理の仕方なんて、実にまっとうでした。水たっぷりの鍋で茹でて、熱々のうちにとかしたバターにからませる。パルメザンをたっぷり放り込む。すぐ食べる。うんうん。嘘も誇張もない。

そりゃ確かに日本中の喫茶店はケチャップ絡みの柔らかいナポリタンばっかり作ってました。前の日にしっかり茹でて、ゴシゴシ水であらって(表面の柔らか部分を落とす)、冷蔵庫で寝かせると美味くなると喫茶店のマスターは言うておった()。でも伊丹が「アルデンテ」なんて言いだしてから、こんどは逆にかっこぶった店で、硬くて芯のある不味いスパゲッティがはびこった。戦犯です。

一頃の硬くて硬くて食べきれないような「本格讃岐うどんチェーン」と同じですね。実際にイタリアで食べるパスタは適度に柔らかいし、というか硬さなんか感じない。高松で食べるうどんだって硬くなんかないです。なぜあんなヘンテコリンなまがい物が通用したんだろ。

ま、そうはいっても、やはり伊丹の伊丹たるゆえん、偉そうではあります。そりゃ三つ星レストランの流儀はそうだろーよ。ワインの飲み方もそうだろうよ。グッチ壊して下駄の爪皮かい。ふん。

新発見は1巻前半の「天皇」とか「古代史」「戦争」などの収録部分でした。伊丹、けっこう長くドキュメンタリー番組のプロデューサやってたのね。で、つくった映像とは別にその聞き語りというか取材録を書き残した。これが独特のローカルな文体で、とぼけていて実にいい。面白いです。語りが上質な小説みたいな感じになっていて、ちょっと方向は違うけど宮本常一みたい。

映画を別にして、こんな部門にも才能を発揮していたのか。挿入された鉛筆画の挿絵もすごいです。

伊丹じゃなく大藪春彦と思うけど、当時はクルマの紹介なんかもすごかった。まだ覚えてます。「身をかがめた猛獣のようなフォルクスワーゲン・ビートル」とか。空冷ナントカ馬力の咆哮を聞け!とか。タフガイが乗っていた。時代です。

testevin.jpg このスパゲッティ洗い。当時の喫茶店講習スクールがそう教えてたんじゃないだろうか。

ワインの飲み方のページで、フランスなんかの有名レストランで酒番が胸元に平ったい金属の皿みたいなのをぶらさげている、という記述がありました。
あっ、知ってる知ってる。ワインの試飲カップ。調べてみたら、なるほどなるほど「testevin」という名前なのか。安っぽいペラペラのブリキみたいな皿ですが、これがけっこう錆びない。形状がなんとなく愛嬌あります。昔はそれを酒番、つまりソムリエがブラブラさせていたのか。


白水社★★★

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閻連科(エンレンカ /イエン リエンコー )は中国では(たぶんノーベル賞の莫言の次くらいに)著名な作家です。莫言と同じように、地にはいつくばって生きる農民を描いた作家です。政府にはかなり睨まれているけど、魯迅賞やらカフカ賞やら、いいろ受賞しています。

この人、ま、たいていは破天荒なヤブレカブレ小説で「愉楽」「炸裂志」などなど。そこにちょっと哀愁が加わった短編集が「黒い豚の毛、白い豚の毛」など。

そしていっそう静謐の度合いが増したのが、私小説ふうの「父を想う」。で、今回の「年月日」はこの延長線でしょうね。農民+飛躍のバイオレンス+過酷な静かさ。

太陽が数珠つなぎにのぼる千年に一度の日照り。村民はみんな避難。しかし村には一人残った老人と盲いた犬がいた。乾ききった大地にはオオカミが群をなし、無数の飢えたネズミが走り、とうもろこしの緑の小さな苗がある。

シンプルで短い小説です。

新潮社 ★

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近衛龍春はいちばん最初に「上杉三郎景虎」を読んでびっくり。こんな作家がいたんだ。

たしか次は「毛利は残った」、そして「南部は沈まず」だったかな。意外や意外という地味な部分を調べていて、面白い書き手だなあと記憶に残りました。ちなみに片方は関ケ原でボーッ傍観してしまった毛利輝元のその後。もうひとつは中央のことなど知ったことか・・と北の果てで周辺と争い続けた南部信直という田舎大名です。

あっ、そうそう「慶長・元和大津波奥州相馬戦記」も非常に良かった。伊達のノドに刺さったトゲみたいな存在であり続けた小領主・相馬のお話。大局を見る目はゼロだったけど、なぜか不思議に戦国を生き延びた。(ちなみに「大津波」はまったく本筋と無関係。売らんかな出版社の下手な宣伝戦略ですね)

という作家なんですが、この本はいけない。ま、影武者もつとめたという家康の側妾の一生なんですが、なんせほとんど家康年代記そのものをなぞっている。何も新しいものがない。よんで損した印象。だいだい著作リストをみると、やたら本を書きまくっているような気も。

東海大学出版部 ★★★
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戦後のブームを支えたマンガ家たちを、年代別にインタビュー。第壱巻は「先駆者たちの挑戦」。やなせたかし、ちばてつや、水野英子、水木しげる などなど。第弐巻は「男が燃えた!泣いた!笑った! 」で、さいとうたかお、松本零士などなど。

まさにマンガ史一覧です。面白かったし、知らないエピソードが非常に多かったんですが、それよりインタビューを受けたマンガ家たちがみーんなトシヨリになってること。

トシヨリというのは、たんにトシをとってるだけでなく、グチが多くなったり、我を張ったり、自慢コキになったりということです。それが面白い。

たとえばトキワ荘の女性1号として知られる水野英子なんかは、自分のマンガを本にしてくれる版元がなくなって苦労している。書きためているのに発表できない。ブツブツ。()

水木しげるなんてのも、ひたすらお金のことしか考えてないみたいな雰囲気。当然でしょうね。貸本時代はひたすら苦しかった。連載始まってからは苦労がなくなった。オレはうまく転換できた。うまくいった。ほんと、喜んでいる。夫婦そろって喜んでいる

松本零士はイメージと違って、スーパー野蛮人()。関門海峡を泳いで横断しようとしたり、ライフル持ってライオン追っかけたり、やりたい放題。
ライオン、本当は撃っちゃいけないけど、さすがに危険を感じた緊急事態なら発射できるルール。それを逆手にとってライオンを徴発、迫った。危険な雰囲気感じて賢いライオンは逃げた

そうそう。荒俣宏がマンガ家になろうとしていたとは知らなかった。ちなみに第参巻は里中満智子なんかの少女マンガらしいです。

水野って、予想外にマンガ開拓の功労者だったんですね。意外。彼女が敷いた道を、以後の女流がするすると通過していった感がある。
ちばてつやと正反対。ちばは描くのが遅くてほんと苦労したらしい。売れたけど、大変だった。苦労だった。野球を知らないから自由に魔球を創作できた。


朝日新聞出版★★★
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今年刊行したばかりの本。表紙がきれいで新しいのを借り出すと気分がいいですね。

アメリカは州ごとに見ると細かすぎてアヤフヤになるけど、それを大胆に10地域に分割してみる。そしてそれぞれの地域の地形、気候、人々、歴史、産業などなどを解説。面白い本でした。

たとえば東北部分。メイフラワー地域ですね。こまかく小さな州ばっかりだけど、存在価値はかなりあるらしい。WASP。そもそも後発で到着した(1620年頃?)ピルグリム・ファーザーズの末裔がなんであんなに威張っているのか。実はかなり不思議でした。

その答えは、どうやら連中が教育と出版を重視したかららしい。みんな聖書を読まないといけない。つまり文字を読めないといけない。牧師も育てないといけない。ようするに他の地域にくらべて「発信力=声が大きかった」ということでしょうか。先行した他の州の連中は儲けることに必死で、宣伝とか高邁な教育には関心なかった。

というわけでニューヨークとは別あつかいです。ニューヨークは商業・貿易の中心地。北の州とは性格が違う。とくにエリー湖とハドソン川をつなぐ運河ができて大発展した。

あとは何だったっけ。わりあい常識で理解できる分け方ですが、ロサンゼルスはサンフランシスコとは別扱いで、南の州の仲間になっている。このへんは意外でした。また、ハワイもけっして楽園ではなく、いろいろ大変らしい。

印象として、どこの州もあんまり芳しくないです。みーんな問題をかかえている。それでも総体としては、世界でいちばん豊か。

北米大陸に初めて上陸したのがメイフラワー号のピルグリム・ファーザーズ。日本ではそう信じている人、かなり多いと思います。


東京図書出版 ★
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ふと興味をもって借り出し。

うーん・・・難儀な本でした。事実がズラズラズラ・・・と書き出してある。まるで年表です。ヤマがないので、楽しくない。

たとえば山田長政のあたり。今のタイであるシャムで活躍した武将という知識はあり()、どんな人物、経緯だったのかと興味はありましたが、どうも詳細はわからなかった。当時のどこそこに日本人町があり、何年後には消えたとかは細かく書いてあるけど、はてはて。ま、そういう本のようです。勘違いした自分がアホだった。

だいたい、ビルマとかベトナムとかアユタヤとか、多くはカタカナで表記。せいぜい漢字も「交趾支那」ぐらいなのに、なぜか一国だけ「暹羅」のまま続く。著者の好みか。たぶん「シャム」だろうな、とは察しがついたけど、浅学にして「暹羅」という国名に自信はなかった。そのうち記述はいつのまにか「シャム」に変化していたけど。

ま、失敗でしたね。

山田長政
   けっこうな規模のサムライ傭兵隊の隊長。子供のころは「王になりそうだった」と読んだ記憶もあり。たしか毒殺されたんじゃなかったっけ。

新潮社 ★★★

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著者の「ろ」は王偏に各。「革命いまだ成らず」では勝手に「譚路美」と表記してしまいました。ごめんなさい。

で、表題の本。「愛した日本」というのは少し違うかな。でも魯迅も蒋介石も日本で学び、なにかにつけて何度も何度も本土と日本を往復しています。日本はすぐ近くにある先進国。遠い欧米へいくより日本の方が手軽で文化も近い。一時は数千人が留学していたらしい。そりゃ日清戦争で負けたのは悔しかったでしょうが、でも負けたのは「清」だともいえます。中国は負けていないぞ。

魯迅の場合は「藤野先生」という短編があるので、日本に留学したことは知っていました。また孫文と日本との関係もあるていどは知識がありました。でも蒋介石については、ほとんど皆無。

なるほど。蒋介石は長岡外史の下で二等兵として勤務していたことがある。もちろん近代的な軍事行動、軍運営について学ぶためです。しかし途中で故国から「革命成功!」の知らせを受けて(もう少し待てといわれていたのに)焦って脱走、帰国してしまった。せっかち

その当時の蒋介石、かなり平凡な男だったらしいです。勉強は嫌いだし、さして熱心でもない。とくに勇敢でも切れ者でもない。後年「あの男がねえ・・・」とみんなが意外に思ったらしい。孫文に仕えてからもとにかく功を焦っていた雰囲気がある。おまけに怒りっぽい。

というように、いろいろ面白いエピソードがいっぱいなんですが、個人的に興味をもったのは蒋介石の結婚遍歴。少なくとも3回、あるいはそれ以上。で、最後の宋美齢、なんとなく孫文との縁で再婚かと思っていたらこれが大間違い。(宋三姉妹。次女の慶齢は孫文夫人。三女の美齢は蒋介石と結婚)

譚ろ美に言わせると、宋美齢はそろそろ行き遅れの年齢にさしかかり、父親が焦っていた。おけにあんまり美人でもなかったし(たぶん気は強かった)。おまけに蒋介石には惚れて結婚した(何回目かの)妻がいたんだけど「別れてうちの美齢を妻にしてくれればたっぷり資金援助するぞ」と申し出があった。うーんと迷ったあげく、ついに決断したわけです。

で、無理やり離縁された古女房、後日、涙で腫れ上がった目で新聞を読むと「実はあれは妻ではなかったのです・・・」と蒋介石が談話を発表していた記事があったらしい。悪い男です。でもそのお蔭でお金がたっぷり入った。革命は成功。蒋介石は大出世。

本筋と関係ないですが、魯迅も女と肉親絡みではいろいろ苦労したみたいです。ちなみに弟の奥さんは日本人だった。いずれにせよ、男が勝手気ままにふるまっていた古い時代です。

集英社インターナショナル ★★★

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日本はなぜ基地と原発を止められないのか」の矢部宏治の本です。内容は、表題そのまま。

ま、想像した通りですが、要するに日本政府は(伝統的かつ致命的に)外交が下手というか、できないのね。島国だからでしょうか。
そもそもを考えれば天智の白村江の戦いからしてそうです。元寇もそう。問答無用で元の使者を切るってのは、外交でもなんでもない。頼山陽は「相模太郎、胆カメの如し」なんてオベンチャラいってますが。もっと後になると秀吉の能天気な朝鮮遠征ですか。


時間が足りなくて、実は最後まで読み通していません。したがって勝手な推測も入っていますが、理想憲法を作らせたものの朝鮮戦争で事情がガラリと変わり、マッカーサーはたぶん焦った。困ったことをしちゃった・・・と後悔。そこで登場したのがやり手のダレスで、日米安全保障条約の「生みの親」とか言われてるみたいですが海千山千。日本政府はみごとに騙された。いや、騙されたふりをしたのかな。

結果として、米国は日本を(いざとなれば)好きなようにできることになった。基地権の密約、指揮権の密約。指揮権ってのは、いざ戦争になると日本軍は米軍の指揮下に入るという意味です。で、日米お互いバレては困る都合のわるい部分は秘密会として覆ってしまい、まずまずお互い満足の形で終了した。そして与党自民党であっても、ほとんどの政治家はこのへんの深い事情を知らない。(だから鳩山の「知らなかった・・」という奇妙なコメントがでてくる)

ま、そういうことのようですね。そして問題は、以後数十年、政府も外務省も、誰もこの取り決めを根本解決しようとはしていないことでしょう。いや、岸の孫のアベがもっともっと悪い方向に動かしたのかな。ほんとになに考えてんだか。実に気分の悪い本でした。
 

文藝春秋 ★★★

12ninnoshinitai.jpgタイトルからはあまり期待していなかったのですが、予想外に面白かった。冲方丁という作家、ときどき外して悲惨なのもあるけど、おおむね読ませますね。

えーと、要するに事情をかかえた12人の子供(年齢も家庭環境もいろいろ)がとあるビルに集まって、みんなで自殺しようと計画する。一人じゃ寂しいし、なかなか決心がつかないわけです。みんなでやるんなら、いいか。

ところが予想外の事件がおきたり、意見の不一致がおきたり、なかなかスムーズに運ばない。ま、そういうお話です。

笑える部分も多く、そんなに深刻な内容でもないし、推理小説のような味もあり()、ま、良作なんでしょうね。そこそこ楽しめました。

読了後、めずらしくザーッと再読。ぱらぱらと詳細部分を確認したり。推理小説でもこんなことするのは珍しい。

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