「不思議のひと触れ」 シオドア・スタージョン(大森望 編集)

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河出書房新社 ★★★

 

fushigino.jpgなんで今どきスタージョンなんだ?と借りてしまった。要するに大森望がアンソロジーしたのね、たぶん。

昔はよく読んだ作家です。今でも読んでみると、もちろん気が利いていて上手。上手だけど、なんというか・・・・。まるでレイ・ブラッドベリでも読み直すような感じで、なんか気恥ずかしい。

収録短編の中では「もうひとりのシーリア」が印象に残りました。なんだか知らないけど異星人がいて、人間の女性のふりをして堅気に生活している。毎日、人間の皮を洗濯して着替えないと命にかかわる。それなのに大切な替えの皮を変質男にイタズラで取られてしまった。異星(シーリアと言う名前でどこかの事務所に通勤している)は、抗議することもできず、ただ黙って死を迎えるしかない。そりゃ警察に届けるわけにもいきませんわな。理不尽な話です。

その理不尽さがスタージョンです。異星はただ黙って絶望して横たわって死にます。皮泥棒した男は、そんなことはすぐ忘れて、また部屋のぞきの趣味生活をはじめる。世の中、何も変化なし。どこかの小さな会社に勤めていたシーリアという地味な女が消えた、というだけの事件です。誰も気にしません。