「フランスの歴史をつくった女たち 巻1、巻5」 ギー・ブルトン

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中央公論社 ★★

 

franceshi.jpg歴史の陰に女あり、という視点はかなり陳腐ではありますが、でもその俗っぽさがたまらない。偶然このシリーズをみかけて、最初に借り出したのが巻5。巻5は美男といわれたルイ15世が縦筋です。

あははは。かなり笑えました。なにしろ初っぱなが「女性に関心を持たない少年王」に、いかにして目覚めてもらうかと周囲が苦心惨憺するというお話です。うまくいけば玉の輿、若い女官連中はもちろん、町娘や娼婦まで総動員して、あの手この手の誘惑です。でも、うまくいかない。

もちろん、そのうち春情勃発ですけどね。火が付くともう止められない。次から次へと手をつけるんですが、いちばん有名なのはポンパドゥール夫人でしょうか。そうそう、王の晩年には新婚早々のマリー・アントワネットにいじめられるデュバリー夫人というのもいます。著者によるとデュ・バリーとは「小さな樽」という意味なんだそうです。

私、個人的にはもう少し古いあたりが読みたかったのですが、人気のシリーズらしく、なかなか図書館には残っていません。そのうち、ようやく巻1が返却されていたのでパクッとこれも借り出し。

巻1はクローヴィスから始まっていました。5世紀、メロヴィング朝フランク王国の始祖ですね。ここから始まって100年戦争あたりまでカバーしています。馴染みのない王や王妃が多いのですが、ま、いろいろ面白かったです。

戦争も条約も政争も十字軍遠征も、すべての原因は女性にあった。こういう考え方に気分を悪くする真面目な読者も多そうな気がしますが、でも案外真実だったりするんじゃないかなーという気もします。続きを発見したら、また読んでみようっと。

蛇足。
そうそう。有名なベルサイユの鹿の苑(鹿苑)も著者に言わせるとたいしたものではなく、次から次へと手をつけた町娘連中をちょっと住まわせておく小住宅だったそうです。ただ惜しむらく名称が妙にエロチックだった。そのため過大に噂され、まるで隠微なハーレムのように見られてしまった・・。もちろん、本当のところは不明です。

蛇足2。
中世の一時期、ローマ法王庁では王族の婚姻について「七親等」以内は不可という規定を設けていたそうです。あまり深く考えない坊さんが決めたんでしょうね。その結果としてヨーロッパの王族たちは対象とすべき相手を見つけるのが非常に困難になった。なんせこの頃は子供の数も多かったし、それをあちこちに片づけているとヨローッパ中の主要な家はほとんどが複雑に入り組んだ姻戚関係になってしまう。

えーと、例を上げてみると、たとえばスペインから嫁いできた祖母(=2親等)の腹違いの妹(スコットランドに嫁いだ=4親等)の産んだ娘(5親等)がザクセンに後妻に入って産んだ娘(6親等)のまた娘(7親等)。特別の許可がない限りこの人とは結婚できません。曾祖父あるいは曾祖母が共通の一族とは基本的にダメということかな。だから遠いデンマークとか、ロシアとかからはるばる嫁さんを迎えるケースが往々にして発生したんだしょうね。