「東京裁判を読む」 半藤一利 保坂正康 井上亮

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★★ 日本経済新聞出版社

tokyosaiban.jpg出版社は違うものの、先月読んだ「占領下日本」と同じようなメンバーですね。

信じられないくらい膨大な東京裁判の資料のごくごく一部を紹介し、その後で三人が座談の形でしゃべる。そういう構成です。

裁判資料、正直言って読みにくいです。ぐだぐだだらだら文章なので、これを真面目に読める人は偉い。かなり飛ばし飛ばしにしか目を通せませんでした。

A級(Aカテゴリーと訳すのが正しい)の被告たち、誰がどうというより、みーんな酷い。アホと無能と能天気と責任逃れとその場凌ぎと(ついでに仲間割れ。ご機嫌取りと保身)。こういう指導者しか日本にはいなかったのか。それとも指導者なんて、たいていそんなものなのか。

被告だけではなく証人たちも弁護団も、もちろん検察団もなんかなー・・という印象ですね。壮大な茶番。

もう内容を忘れかけてますが、意外だったのは
・裁判長のウェッブ、強硬派で判決をリードという印象を持っていましたが、判決段階では少数派だったらしい。裁判長が少数派という不思議。

・ソ連は終始一貫、死刑を支持しなかった。ソ連には「死刑」という制度がないからです。いきなり逮捕してシベリアへひっぱって行って結果的に死ぬのはまた話が違う。

・インドのパール判事。別に日本が好きだったわけではなく、本人なりの裁判理念・信念でいろいろ文句をつけていた。日本にとってはありがたい人だったけど、だからといっても日本で「パール様々」と持ち上げるのはかなり勘違い。

・日本の弁護方針、分裂していた。弁護方針の混迷。役にたったのは米国人弁護士。

・敗戦時、軍や政府が膨大な量の書類を焼き捨てたのが痛かった。検察側にとっても困るけど、弁護するための証拠もなーんにもなくて、主観的部分も多い要人の日記に頼るしかなくなった。ようするに「事実」が不明になった。

パールハーバーの騙し討ちの件は立証が難しくて(ほじくると米国側の問題が浮き彫りになる)立ち消えになった。

・誰が死刑になり、誰が助かったか。数あわせ、各国のメンツ。各戦線の一人くらいは責任とらせないと格好がつかない。ついでに「文官」も一人くらいは死刑にしないとニュルンベルグと整合性がなくなる。

・A級の追求はまだまだ続くはずだったが、最初のメンバーだけであまりに時間がかかったので、検察側もやる気を失った。それで助かった戦犯候補も多い。(もちろん国際情勢の変化も影響)

・明確な「釈放」ではなく、巣鴨からこっそり出所させていたのに、自宅でマスコミ相手におおっぴらな怪気炎をあげるアホもいた。関係者が困惑。

などなど。なんとか読み終えましたが、どんどん暗い気持になる本です。

いまのA級合祀問題も、是にしろ非にしろ、要するに敗戦をきちんと総括していないところに根っこがあるんだと思います。なんにしろ「きちんと総括」って、日本人にとっていちばん苦手なことなのかもしれない。