「朱鳥の陵」 坂東眞砂子

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akamidori.jpg★★★ 集英社

「あかみどりのみささぎ」と読みます。

非常にフリガナの多い文章です。たとえば「太上天皇」は「おおきすめらみこと」。音読みの固有名詞はほとんどありません。みんなヤマトコトバで読みます。だから最初のうちは読みにくくて往生します。

もちろん意図的に書いてるわけで、結果として成功したんじゃないでしょうか。なんだか知らないけどアヤフヤで、霧の中のような雰囲気。舌をかむように柔らかいというか、あいまいというか。音読みの合理性や歯切れの良さがありません。

内容は持統天皇(うののささら)の生き方というか、女の業。持統は天武天皇(大海人皇子)の妻ですね。ただし「持統」とか「うののささら」という名前はなかなか出てこなくて、暫くの間は「太上天皇」(おおきすめらみこと)として登場します。つまり現天皇の上に立つ天皇。後代の上皇のような印象ですか。これって誰のことだろう?と疑問に思いながら読者は読み進む。

そうそう。持統が作った藤原京もこの本では「新益京」(あらましのみやこ)という名称です。そんな都は知らんぞ?と疑問を抱きつつ読むしかありません。なぜ藤原京になったかの謎解きもありますが、本の最後の最後のあたりです。

で、常陸から呼び出された「夢解き」の才のある女(白妙)が、なぜか過去の「ささらのみこ」の心に入り込む(あるいは呼び込まれる)ことによって、登場人物の名前や事件が少しずつ解明されていきます。解明されるといっても、この時代の知識がある程度ないと厳しいですね。そもそも「白妙」という名前も、なんか怪しい。

草壁皇子、大津皇子、高市皇子がどういう立場で、何をしたんだったか。たしか大津皇子は殺されるんだったな・・程度の知識がないとなかなか霧が晴れない。私は例の「家にあれば笥に盛る飯を草枕」の有間皇子がこの中にいないので、変だなあなどと思ったくらいで、このへんの知識はかなりあやうい。珂瑠なんて皇子も出てきます。「軽皇子」のことでした。

ちなみに有間皇子は中大兄皇子に殺されたんでした。この本の時代よりちょっと前でした。

ま、なんやかんや。「夢解き」のスーパーヒロイン白妙だからといって持統といっしょに大活躍なんて爽快なストーリーにはなりません。しょせんは身分の低い地方の女です。なーんもできない。怯えながら命じられた夢解きをします。そして最後は・・・それは秘密。

なかか面白い本でした。ただし、すぐに再読する意欲はおきません。かなり疲れました。