「グロテスク」 桐野夏生

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★★★ 文藝春秋

grotesq.jpg東電OL事件を下敷きにしているようですが、さして重要なテーマではない気がします。

スイス人の父(ケチな圧政者)と日本人の母(無意思で従順)をもった姉妹。姉は賢いが不細工で悪意の固まり。妹は人形のような完璧美人で中身はカラッポ。二人だけでなく登場するのはすべてバランスの狂った人間ばっかりです。父しかり、母しかり。学友しかり。

閉ざされた環境から脱出するために進学したのは小学校から大学まで一環の超有名私立。ここもバランスの狂ったゆがみの社会です。出会った学友、イジメから抜け出すために勉強する秀才と、ひたすら「努力は報われる」と信じむ偏狭な女子高生。どっちも危ない。

てな具合でなかなか面白かったのですが、だんだん劣化してくる雰囲気で、そうですね、長い小説の前半までは★★★★。語り手の根性悪女がよかったです。

そうそう。語り手は何人がいますが、みーんな嘘つきです。

残りはだんだん詰まらなくなってきて★★。最後のあたりは★。いちばん最後は「マイナス☆」。この結末はないだろう!