「司馬遼太郎対話選集5 アジアの中の日本」司馬遼太郎

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★★★ 文藝春秋
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陳舜臣とか開高健とか金達寿とか、とにかく偉い人、賢い人たちとの対談集です。みんな凄い知識量だなあ。もちろん広いだけでなく、はてしなく深い。内容が深遠すぎでモウロク頭には理解できないこともしばし。

だいたい1970年代の終わりから80年代頃の集録のようです。日中平和友好条約が1978年、天安門事件が1989年。だいたいこの間という感じかな。韓国も急発展していたし、中国はまだ貧しいけれども大変貌していた頃です。日本はアメリカを追い越すとか騒いでいたバブル期へ突進中。

最近のマスコミとかネットを賑わす海外ニュースとかアジア分析とかの生々しさとかからは離れて、グイッと身を引いた地点から日本やアジアを眺めている。その立ち位置がなんかホッとします。冷静にアジアを眺めてみよう。

誰との対談の折りの話か覚えていませんが、日本人には原理原則がない。よく言えば柔軟。悪くいえば無節操。その対局がお隣の国ですね。あっちはたぶん原理原則がんじがらめで、柔軟性がない。よく言えば節を守る。悪く言えば頭が固すぎて周囲が見えない。なるほどなあと感心しました。

そうそう。たいした挿話ではありませんが、後半に出てくる言語学者(かな。井筒俊彦という人)が、若いころタタールの大学者からアラビア語を習った話は面白かった。師とした碩学はイスラムの教典から何から、本という本をすべてを丸暗記している。原典だけでなく注解書まで暗記し、もちろん評価批評もできる。新しい本に接すると数週間(だったかな)のうちに、それも暗記してしまう。だから身の回りに本をおく必要がない。頭のなかにすべての本が入っている。

本に頼っていたら、もし火事にあったらどうする。旅に出るとき、いつも大量の本を持ち歩くのか。自分の頭の中に収納しておけば、すべては解決する。

なるほどね。世の中には凄い人がいる。想像レベルをはるかに越えるような人間が存在する。稗田阿礼が10人くらい一緒になったような才能。