「アンダー・ザ・ドーム」上下 スティーヴン・キング

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★★★ 文藝春秋
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たまたま上下巻がそろっていたので借出し。うんざりするくらいの長編です。ただしスティーヴン・キングなので、冗長な部分は多少飛ばし読みしても問題なし。良く言えば詳細、悪く言えばどうでもいいジョークの言い合いの多いのがキングの特徴です。それにしても、登場キャラクターたち、切迫した場面でも忘れずに冗談を言う。

で、舞台は例によってメイン州の片田舎、ある日とつぜん巨大な透明ドームが出現する。高さ1万メートル以上、小さな町がすっぽり覆われてしまいます。

完全に透明なので、飛行機も鳥も車も衝突してしまいます。銃弾もミサイルもこの壁に穴を開けることは不可能。たまたま境界にいた人間も犬も鹿も、バッサリ切断。川の流れも止まります。このドームを通すのはほんの少しの空気と水という設定です。声や電波は通過します。したがってドームの内と外で情報の伝達はいちおう可能。

こうした閉鎖空間の中で人間はどう振る舞い、どう考えるか。それが作者の狙いですね。閉鎖空間なので、外界から食料も医薬品も運べない。風がほとんど通らないので気温は上昇。それどころか権力も司法も無力。そもそもこのドームはなぜ置かれたのか、最後の方でいちおう種明かしはありますが、多分あんまり重要な部分ではありません。

同じ作者の「ミスト」も同じような設定でした。「ミスト」は片田舎のスーパーマーケットが舞台でしたね。外は深い霧。魑魅魍魎が徘徊していて、ドアから出ることはできない。そんな環境で、閉じ込められた町民たちがどうなるか。何をするか。その拡大版が「アンダー・ザ・ドーム」です。

これも定番の悪役は町の町政委員で、ナンバー2。中古車販売会社の社長です。こすっからい悪人だけど敬虔な信徒。No1は気の弱い薬屋の店主。町民から選ばれたこうした代表が実質的な町長、助役を勤めている。で、まともそうな警察署長は早々に死んでしまって、副署長は無能。警官もほとんどが役立たずで、新しい補助警官たちはみんな頭のカラッポな筋肉マッチョで粗暴な若者連中。なにかというと発砲したり殴ったり強姦したり。こういう連中を描くとキングは筆が冴える。

はい。最初から最後までひたすら暴力の連続。どんどん死にます。面白いですが、かなり疲れます。